フォーバル Research Memo(1):2023年3月期は過去最高の売上高を更新
■要約
フォーバル<8275>は、「中小・小規模企業の利益に貢献する次世代経営コンサルタント集団」を旗印に事業展開を行っており、IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングを得意とし、総合コンサルティング、海外進出、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングなどを行う。
1. 事業概要
フォーバルビジネスグループとフォーバルテレコムビジネスグループを主力としている。フォーバルビジネスグループでは、中小・小規模企業向けに、IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングのほか、総合コンサルティング、海外進出支援、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングサービス、OA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次ぎなどを手掛ける。
2. 業績動向
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比15.5%増の59,538百万円、営業利益が同9.0%減の2,443百万円、経常利益が同4.8%減の2,717百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.6%減の1,679百万円となり、増収減益となった。売上面では、フォーバルビジネスグループにおいて、F-Japan戦略を積極的に推進したことなどによりアイコンサービスやセキュリティ関連が順調に増加したのに加え、新たに連結したグループ会社が増収に貢献した。利益面では、新電力サービスの仕入価格上昇の影響を料金に十分転嫁できなかったこと(影響は主に上期)を主因として減益となった。
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.1%増の62,000百万円、営業利益が同22.8%増の3,000百万円、経常利益が同10.4%増の3,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同13.1%増の1,900百万円と、売上高・各利益ともに堅調に推移する増収増益予想である。
3. 成長戦略・トピック
同社は、2023年3月期に新戦略として”F-Japan戦略”を掲げ取り組みを開始した。この戦略は、政府が推進する骨太方針2021における日本の未来を拓く4つの原動力((1) グリーン、(2) デジタル、(3) 活力ある地方創り、(4) 少子化対策)に沿った内容であるが、いざ中小企業においては課題が大きい。取り組む必要性の認識が不足していたり、情報・人材・資金力・時間なども不足しているのである。そこで、長年、中小企業の経営改善に取り組んできた同社では、新たに2031年を見据えたテーマとして「中小企業のGDX化の伴走型アドバイザーとして確固たる地位を確立」することを宣言し、全国的に、地域の自治体や関係企業、団体、個人を巻き込みながら推進することを決定した。これまでの同社のアイコンサービスは、首都圏や大都市圏が中心だったがF-Japan戦略では地方が主戦場となり、民間と民間の関係が主体だったものが産官学連携が基本となる点など、大きな戦略転換と言えるだろう。
GDXアドバイザーによる活動はDX人材の不足する地方から実践が始まり、実績が積み重なってきた。2022年10月以降のプレスリリース事例だけでも、岩手県花巻市、長野県飯山市、富山県滑川市、北海道網走市、群馬県沼田市、札幌市、函館市など多数の自治体との協業実績が挙げられる。同社の役割は様々だが、なかでも注目されるのがデジタル専門人材の派遣である。マスタークラスの精鋭人材を同社から派遣するスキームであり、自治体のDX推進計画の立案から実施、効果測定までの管理を深く、幅広く実施することが可能となる。より密接に伴走できるGDXアドバイザーとして、さらなる活躍が期待できる。
4. 株主還元策
同社は、配当による株主への利益還元を重要な経営課題の1つとして認識している。実績では、安定的な利益成長を背景に継続的な増配を続けており、過去10期の配当金は増配または維持、配当性向は30%前後からそれ以上を実施してきた。2023年3月期は、配当金27.00円(1円増配、配当性向41.3%)を実施した。2024年3月期は、堅調な増益予想を背景に、配当金28.00円(1円増配、配当性向37.9%)を予想する。
■Key Points
・2023年3月期は過去最高の売上高を更新。DX推進の機運の高まりを背景にF-Japan戦略推進に伴う各種サービスが拡大、上期の新電力サービスの仕入価格高騰が影響し営業減益
・2024年3月期は売上高62,000百万円、営業利益3,000百万円予想。テレコム事業の利益回復や環境事業の黒字化など4事業ともに増収増益を期待
・産官学の連携で地方のGDX化を推進するF‐Japan戦略が順調に進行中
・過去10期にわたり増配または維持。2023年3月期は1円増配の配当金年27.00円、配当性向41.3%
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《SI》
提供:フィスコ