クオールHD Research Memo(6):処方箋単価の下落を処方箋応需枚数の増加で吸収し、売上高は過去最高を更新
■クオールホールディングス<3034>の業績の動向
2. 保険薬局事業の動向
(1) 調剤売上高の状況
保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成されている。2023年3月期の売上内訳を見ると、調剤売上高が前期比1.2%増の144,036百万円、その他売上高が同5.1%増の11,410百万円といずれも増収となった。調剤売上高の内訳を出店期・タイプ別で見ると、自力出店店舗のうち、既存店については前期比2.9%増、金額ベースで1,267百万円の増収となり、新店については前期と比べて新規出店数が多かったこともあり、同36.6%増、金額ベースで186百万円の増収となった。M&A等で取得した店舗については、既存店と新店を分けていないためわかりにくい面もあるが、同0.3%増、金額ベースで273百万円の増収となった。
調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前期比5.5%増の14,957千枚、処方箋単価は同4.1%減の9,629円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。
処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前年同期比5.3%増となった。前期はまだコロナ禍で受診控えの動きが残っていたが、2023年3月期はそうした動きも徐々に緩和され、既存店の伸びにつながったと見られる。また、M&A等による店舗の応需枚数も同5.1%増となった。M&Aによる取得店舗数は前期の15店舗から48店舗と3倍強に増加したが、そのうち38店舗は2023年1月に子会社化した栃木県の(株)パワーファーマシーの店舗となっており、全体の枚数増に与える影響は限定的だった。なお、栃木県内では今回の子会社化によって同社グループが最大規模の店舗数となっている。
一方、処方箋単価は全体で前期比4.1%減と2期連続で低下した。このうち既存店は同2.3%減、M&A等店舗は同4.6%減となった。毎年実施されることになった薬価改定の影響に加えて、コロナ禍で解熱剤など比較的安価な処方薬が増加したことによる薬剤料単価の低下が主因だが、調剤技術料単価についても調剤報酬改定(隔年改定)の影響により若干低下した。
店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関しては、定められた基準の達成度に応じて点数が加算される仕組みで、主に調剤基本料(応需枚数や特定医療機関への集中率等で分類)、GE医薬品調剤体制加算(GE医薬品の取扱比率で分類)、地域支援体制加算(在宅調剤など地域医療への貢献体制によって分類)がある。なかでも、GE医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算については各薬局の取り組み状況で点数も変わる差別化ポイントとなる。今回の改定では、調剤基本料は、薬局経営の効率性を踏まえた設定の変更、GE医薬品調剤体制加算は調剤数量割合の基準の引き上げと評価方法、地域支援体制加算は地域医療への貢献に係る体制や実績に応じた評価体系が見直された。
改定後の調剤基本料の点数分類は従来の5分類から6分類に細分化され、最高点の42点と26点の間に32点の項目が追加された。今回の改定では大規模グループ薬局※の基本料について、特定医療機関からの処方箋受付割合が85%を超える薬局を16点とし、85%以下の店舗を32点とした。この結果、同社においては2021年4月時点で47.3%を占めていた42点の取得店舗比率が2022年4月には1.2%に減少し、新たに追加された32点の取得店舗比率が47.1%を占めたことにより技術料単価の低下につながった。
※同一グループで処方箋受付医回数が月40万回超または同一グループの店舗数が300以上。調剤基本料の算定は前年3月から当年2月までの1年間の処方箋応需枚数等の実績を基準として、当年4月から翌年3月まで所定点数で算定することになる。
GE医薬品の取扱い比率(数量ベース)については、グループ全体で2022年3月時点の84.0%から2023年3月時点では85.6%と若干上昇し、厚生労働省が目標としている8割の水準を継続して超過した。この要因として、国の後発医薬品に関する方針に沿って、後発医薬品の使用をグループ全体で取り組んでいることが大きい。2022年4月の改定では、最高点を取得する条件として従前は85%以上で28点であったが、改定後は85%以上で28点、90%以上で30点が付与されることになった。2021年4月時点では28点取得店舗の比率が64.7%であったのに対して、2022年4月は28点と30点を合わせて70.2%、2023年3月時点で76.7%と上昇したことにより、技術料単価にはプラスに寄与した。
地域支援体制加算は、従来0点か38点の2分類しかなかったが、改定後は0点、17点、39点、47点と4分類に細分化された。2021年4月時点で38点取得店舗比率が35.7%だったのに対して、2022年4月時点の39点及び47点の取得店舗比率が36.7%(うち47点は26.4%)、2023年3月時点で34.8%(うち47点は28.6%)となった。また、在宅調剤の取り組みを推進したことで、0点の比率が2021年4月時点の64.3%から2022年4月時点では54.3%、2023年3月時点で50.1%と減少したこともあり、技術料単価にはプラス方向で寄与した。なお、在宅調剤売上に関しては前期比2割増の60億円程度になったと見られる。
(2) 出退店とM&Aの状況
2023年3月末の店舗数は892店舗となり、前期末比で58店舗増となった。自力出店で20店舗、M&Aによる取得で48店舗、ビックカメラとのコラボ店舗で1店舗、売店1店舗の合計70店舗を出店し、12店舗を閉店した。新規出店のうち1店舗は良品計画との連携店舗で、2022年4月に無印良品「広島アルパーク店」の「まちの保健室」内へ出店した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ