【植木靖男の相場展望】 ─半導体・IT株が相場の命運を握る
「半導体・IT株が相場の命運を握る」
●36年に一度の相場だが、急騰後には急落が待つ
日経平均株価は驚異的といえる爆騰を演じている。特に6月7日、8日の2日間で800円以上下落した後の急伸が凄まじい。
この2日間の下落で多くの市場関係者が「これでいったん上昇は終わった」と発言したが、株価はこれをあざ笑うかのように再び上昇に転じた。
今年の4月以降、チャート上で実に一度も明確な売り転換を示していないのである。7日、8日の下げの時も明確に売り転換していない。この下げにより重荷であった買い方を振り落としたとみてよい。荷を降ろして軽くなった株価は再上昇に転じた。
いまや東京市場を巡る市況感は強気一色となってきた。多くの市場関係者からここへきて日経平均株価は先行き4万円もといった声が続出している。市場を巡る材料も好材料に溢れている。
筆者も36年に一度のバブル相場に昨年から入っている、とみている。今回の上昇はその前哨戦とみてよいと思う。
だが、気掛かりな点もある。かつて平成バブルの時も、同じような経過を辿ったが、その途次1987年10月にブラックマンデーが起き、市場は大混乱に陥った。だが、上昇エネルギーを残した株式市場は4カ月後にはブラックマンデー前の高値を取り戻している。
さらに、2013年5月には金融緩和と円安進行で急騰していた株価は、中国の製造業購買担当者指数(PMI)の悪化を受けて利食い売りが殺到。1日で1500円近くも下げ、時価総額は40兆円も吹っ飛んでしまった。
こうした当時の急騰・急落劇が筆者の頭をよぎるのだ。急騰の後には急落が待ち構えている。そして、その材料などは何でもいいのだ。
今回もさらに急騰すれば、いずれしっぺ返しを受ける、とみてよい。
●株価指数先物の動向にも注意
では、それはいつか。まさしく“神のみぞ知る”だ。しかし、手掛かりとなる可能性があるものが2つある。1つは物色の中身だ。エヌビディア<NVDA>の好決算発表からテック株主導によりナスダック指数は大幅上昇に転じているが、筆者は東京市場の先行きを決定づけるのも、テック株の動向になるとみている。
いま買いの主役は海外勢だ。彼らは個別ではテック株、それも値がさテック株を買う。日本人投資家は株価の水準を気にかけて買う習性があるが、海外勢は株価が高いからといって躊躇することは一切ない。しかも、円安だけにドル建てでは安く見えるのだ。
であれば、値がさ株が頭打ちすると、市場全体がおかしくなってくる恐れがある。値がさ株の動向には十分注意が必要だ。
そして、もう1つが株価指数先物だ。海外勢は現物の値がさテック株の買いとともに、先物市場に買いを断続的に入れてくる。その動向にも注意したい。2013年5月の暴落の時も、まず先物指数が崩れた。
いずれにしても6月7日、8日の急落から目下6営業日を経過したところだ。日柄的にはまだ余裕がありそうである。
最後に物色対象だが、 半導体、IT株で出遅れ感のあるカバー <5253> [東証G]、TDK <6762> [東証P]、浜松ホトニクス <6965> [東証P]などに注目したい。
2023年6月16日 記
株探ニュース