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【特集】米アップル「Vison Pro」で変わる世界、有力株を緊急リサーチ <株探トップ特集>

米アップルのゴーグル型端末「Apple Vision Pro」の発表を受け、ARやVR、MRに関連した市場が急拡大するとの期待が高まっている。電子部品大手や有機EL関連企業に対しては、業績へのプラス効果の思惑が広がりそうだ。

─注目度急上昇のゴーグル型端末と空間コンピューター、実用化でオフィスやエンタメ業界は革新へ─

 今年の米アップル<AAPL>の世界開発者会議で最も注目を集めたのが、ゴーグル型端末の「Apple Vision Pro」だった。モニターに対峙してキーボードを操作するといったオフィス作業や、エンターテインメントのあり方を大きく変える潜在性を秘めており、現実とデジタルの世界を融合した空間コンピューターの実用化を促すツールとして、関心が日増しに高まっている。今回の株探トップ特集では、アップルの次世代製品をはじめとしたMR(複合現実)関連機器の普及による恩恵が期待できる銘柄群をピックアップしていく。

●アップル製品登場でゴーグル型端末市場は急成長へ

 「iMac」から「iPod」「iPhone」と、アップル製品はこの数十年にわたって社会を変革する原動力となってきた。多くの人の手にスマートフォンやタブレットが行き渡った今、これらに続く革新的な新製品の予感を消費者に与えているのが、2024年に発売されるApple Vision Proである。

 ゴーグル型の端末を巡っては、米マイクロソフト<MSFT>の「HoloLens 2」や、メタ・プラットフォームズ<META>の「Meta Quest Pro」などがすでに発表されている。Apple Vision Proの価格は3499ドル(約49万円)と高額だが、デザイン性とUI/UX(ユーザーインターフェースとユーザー体験)を強みとするアップル製品の登場により、市場の急成長の素地は一段と整ったと言えるだろう。

 そして、ゴーグル型端末の普及により、空間コンピューターを活用する流れが一気に加速するとも考えられている。ところで、空間コンピューターとはどのようなものだろう。実際に端末が使用されるシーンを見てみると理解しやすい。

 ゴーグルのレンズの向こう側に映し出される現実世界に重なる形で、パソコンのモニター上のウィンドウが表示され、ユーザーは手や指を動かしたり、時に話し掛けたりして操作する。ゴーグルを掛けていれば場所の制約を受けることなく、必要に応じて誰かと会話ができるようになる。更に、自分の部屋を生成AIの作成した絵画で埋め尽くしてギャラリーのようにするといったことも可能となる。

 AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を融合したMRのなかで操作できる「空間コンピューター」の普及により、新たな働き方や、エンターテインメントの楽しみ方が次々と生まれることとなると予想されている。

 独調査会社のIoTアナリティクスは、23年はAR・MR市場にとって転換点となるとしたうえで、技術革新に成功すれば市場規模は27年に40億ドル(22年は14億ドル)に拡大するとの見通しを示している。分析結果が公表されたのは今年2月と、アップルの新製品が話題を集める前の話であり、当時の見立てよりも期待される市場規模は大きなものとなっているに違いない。

●電子部品大手の技術力発揮に期待

 ゴーグル型端末の普及に伴う恩恵が見込まれる銘柄を探すうえで、アップルが公表するサプライヤーリストを参照するのは決して無駄な作業ではないだろう。22年のサプライヤーリストには、村田製作所 <6981> [東証P]やTDK <6762> [東証P]、太陽誘電 <6976> [東証P]といった電子部品大手の名が記されている。超微細な積層セラミックコンデンサーを安定的に製造できる日本企業の技術力は、ゴーグル型端末にも十分に発揮する余地がある。

 有機EL部材を持つ日東電工 <6988> [東証P]やコネクターのヒロセ電機 <6806> [東証P]のほか、ミネベアミツミ <6479> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]、アルプスアルパイン <6770> [東証P]なども同リストに登場する常連企業であり、新たな商機への思惑を広げやすい。

 中小型株では、ソニーケミカルを母体とするデクセリアルズ <4980> [東証P]がアップル向けに部品の供給責任を負う。同社はディスプレイ向け光学材料を手掛けているが、子会社が開発・製造する「無機拡散板」「無機波長板」といった無機光学デバイスの採用拡大が期待されているようだ。

 アップルサプライヤーの恵和 <4251> [東証P]も、今年1月31日~2月1日に米国のサンフランシスコで開かれたAR・VR関連の展示会で、複合拡散板「オパスキ」シリーズを出展した。アップルの次世代製品への採用が決まれば、業績浮揚の原動力となるだろう。

●有機EL関連企業に思惑の余地

 アップルのゴーグル型端末にはマイクロOLED(有機EL)ディスプレイが搭載されているという。この分野を手掛けているのが、ソニーグループ <6758> [東証P]だ。株式市場ではすでに部品の採用の思惑が広がっている。

 同社はアップルサプライヤーの1社だが、サプライヤーリストに名前がなくても、部品や部材を間接的に供給する企業は多く存在する。三菱ガス化学 <4182> [東証P]は22年の同リストにその名は記載されていないものの、Apple Vision Proにおいて、同社の光学樹脂ポリマーが使われている可能性があると指摘されている。

 最先端の有機EL関連事業を手掛ける企業に対しても、業績拡大の思惑が広がるシナリオが横たわる。住友化学 <4005> [東証P]を巡っては、AR・VR端末向けマイクロディスプレイ向けの部材の成長に注目が集まっている。

 ほかにも、保土谷化学工業 <4112> [東証P]やケミプロ化成 <4960> [東証S]といった材料メーカーや、パネル製造装置の平田機工 <6258> [東証P]、スパッタリング装置や成膜装置のアルバック <6728> [東証P]などに今後、関心が広がる余地が大きい。有機EL用のファインメタルマスクで高い技術力を持つとされる大日本印刷 <7912> [東証P]や凸版印刷 <7911> [東証P]も関連銘柄と位置付けられそうだ。

●「マイクロLED」関連も要マーク

 マイクロOLEDと並行して、微細な発光ダイオードを用いて映像を表示する「マイクロLED」に関連する製品・技術群も、ゴーグル型端末で活躍領域を広げる可能性がある。

 ブイ・テクノロジー <7717> [東証P]は、マイクロLEDディスプレイの製造ラインを過去に出荷した実績を持つ。浜松ホトニクス <6965> [東証P]はマイクロLEDチップの歩留まり向上につながる検査システムを手掛けている。東レ <3402> [東証P]は子会社の東レエンジニアリングが、マイクロLEDディスプレイの製造工程で使用する高効率転写装置の販売を昨年12月に開始した。

 このほか、ジャパンディスプレイ <6740> [東証P]は、民事再生手続きを申し立てた有機ELパネル製造のJOLED(東京都千代田区)のディスプレイ技術開発に関する事業を、6月30日付で買収する予定だ。有機EL領域における日の丸ディスプレイの復活劇にも期待したい。

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