ユニリタ Research Memo(4):2023年3月期は計画を上回る増収増益
■決算動向
1. 2023年3月期決算の概要
ユニリタ<3800>の2023年3月期の業績は、売上高が前期比10.6%増の11,549百万円、営業利益が同32.1%増の915百万円、経常利益が同36.7%増の1,132百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.1%増の752百万円と計画を上回る大幅な増収増益となった。
売上高は、「プロダクトサービス」「クラウドサービス」「プロフェッショナルサービス」の3つの事業がそれぞれ好調に推移した。「プロダクトサービス」は、主力の自動化・帳票プロダクトにおけるビジネスモデルのサービス化の取り組みが着実に立ち上がり、ストック売上高が伸びてきた。「クラウドサービス」についても、旺盛なDX投資を追い風として、「LMIS」や「Digital Workforce」などIT活用クラウドが軸となり順調に拡大した。「プロフェッショナルサービス」については、データ・サービスマネジメント領域の専門性を活かしたコンサルティングが好調であり、グループ機能を結集したワンストップソリューションの起点として業績全体の伸びをけん引している。
損益面では、賃金改善動向に伴う人件費や将来に向けた研究開発費(農業ITやデータサイエンス領域など)が増加したものの、増収に伴う収益の押し上げや保守サポート等の内製化推進による外注費削減効果により、計画を上回る営業増益を実現した。営業利益率も7.9%(前期は6.6%)に改善している。
財政状態については、自己資本が内部留保の積み増しにより前期末比3.3%増の11,329百万円に増加した一方、総資産も「現金及び預金」や増収に伴う「売掛金」の増加等により同5.4%増の15,135百万円に拡大したことから、自己資本比率は74.9%(前期末は76.4%)と若干低下した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) プロダクトサービス
売上高は前期比1.5%増の4,488百万円、セグメント利益は同12.8%減の1,093百万円と増収減益となった。1) 主力の自動化・帳票プロダクトは、プロアクティブな営業活動を通じて、システム更改や再構築に伴うクラウド化提案の機会が増加したほか、法改正に伴う電子化対応の動きを追い風として「まるっと帳票クラウドサービス」も堅調に立ち上がってきた。また、2) クラウド運用についても、基幹システムのクラウド化ニーズの増加に伴い「ユニリタクラウドサービス」が伸長した。1)及び2)の結果、ビジネスモデルのサービス化が進み、ストック売上高が伸びてきたところは特筆すべきポイントである。一方、3) メインフレーム事業については、市場が縮小傾向にあるものの、堅実に売上・利益を確保することができた。なお、損益面で減益となったのは、利益率の高いメインフレーム事業の売上減に起因するが、セグメント利益率は24.4%と高い水準を維持している。
(2) クラウドサービス
売上高は前期比11.9%増の3,310百万円、セグメント損失は197百万円(前期は365百万円の損失)と増収となり損失幅が改善した。1) IT活用クラウド事業では、DX化の動きやリモートワークの普及が進むなかで、新たな課題解決ニーズに合致する「LMIS」や「Digital Workforce」、「Waha! Transformer」などの主力サービスが順調に拡大傾向にある※。2) 事業推進クラウド事業では、「らくらくBOSS」や「DigiSheet」など通勤費管理や人事管理向けのサービスが堅調に推移した。新たな市場を開拓中の「Growwwing」などのサービス群については、当初ターゲットとしていたスタートアップ企業だけでなく、予算規模の大きなエンタープライズ企業による採用も増え、案件単価も上昇している。一方、3) ソーシャルクラウド事業では、バス事業者向け位置情報サービスが全国の自治体向けに好感触を得ており、受注も増加してきた。ただ、損益面では主力サービスの伸びとともに損益の改善も進んできたものの、依然としてソーシャルクラウド事業が先行投資の段階にあることから、セグメント損益の黒字化には至っていない。
※コンタクトセンター、サービスデスク等のサポート品質向上の需要に対応する「LMIS」は前期比13.9%増、リモートワーク環境のセキュリティ強化、システム連携基盤として需要が拡大している「Digital Workforce」は同28.5%増、DX推進を背景にデータ整備、変換等のニーズを受けた「Waha! Transformer」は同8.6%増とそれぞれ順調に伸びている。特に、「Digital Workforce」は、多種多様なクラウドサービスと連携し、一度のログインで多くのクラウドサービスに安全にアクセスできるなど、安全性と利便性の両立が図られており、大規模受注が増加している。
(3) プロフェッショナルサービス
売上高は前期比22.5%増の3,750百万円、セグメント利益は同253.0%増の298百万円と増収増益となった。1) コンサルティング事業は、データ・サービスマネジメント領域における専門性がDX投資ニーズに合致しており、グループ機能を結集したワンストップソリューションの起点として業績全体の伸びをけん引している。また、その動きに伴って、2) システムインテグレーション事業ではグループの顧客基盤を活用した高単価な業務領域へのシフトが順調に進んでいるようだ。3) アウトソーシング事業についても、DX推進を背景としたIT人材確保や業務シフトの加速を受け、システム運用代行サービスが拡大傾向にある。損益面でも、高付加価値なコンサルティング事業の伸びやシステムインテグレーション事業における高収益案件の獲得により増益となった。
2. 2023年3月期の総括
以上から、2023年3月期を総括すると、DX化の流れのなかでしっかりと需要を取り込み、計画を上回る増収増益を実現した業績面はもちろん、その中身についても、これまでの取り組みの成果が表れてきたと評価できる。特に、1) ビジネスモデルのサービス化が進展し、安定収益となるストック売上高が伸びてきたこと、2) データ活用やサービスマネジメントの重要性の高まりとともに、コンサルティングを起点としたワンストップソリューションの案件が増えてきたこと、3) 専門性の高いパートナー企業とのサービスコラボレーション※1でも実績をあげることができたところは、今後に向けても明るい材料と言える。一方、クラウドサービスの一部(ソーシャルクラウド等)には、コロナ禍の影響により事業の進捗や収益化に遅れが見られるものの、位置情報サービス(移動体IoT)では、交通に関する課題を抱える自治体向けの案件※2が増加傾向にあるほか、農業経営支援クラウドサービスのリリース※3などでも一定の成果をあげることができた。
※1 (株)日立ソリューションズがリリースした「インボイス制度対応支援ソリューション」の請求書等の帳票電子化・Web配信、紙帳票の郵送代行サービスの1つに、同社の「まるっと帳票クラウドサービス」が採用されている(2023年5月22日公表)。
※2 北海道ニセコエリア路線バス運行データ分析、北海道全域の交通オープンデータ(GTFS-JP)整備事業、千葉県庁と小湊鐡道(データ分析)、横浜みなとみらい(データ分析)、石川県小松市(データ分析)、四国の複数自治体にて分析前の可視化事業、鹿児島県・佐賀県乗合バス事業者向けサービスなどで案件が進行中である。
※3 2022年6月10日に農業経営者に経営効率化への気付き情報を提供する農業経営支援クラウドサービス「ベジパレット」の正式版をリリースした。詳細については、前回のフィスコレポート(2022年12月14日発行)を参照。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SI》
提供:フィスコ