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8508 Jトラスト

東証S
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Jトラスト Research Memo(2):2023年12月期第1四半期は大幅な増収増益、各利益は計画を上回る(1)


■業績動向

1. 2023年12月期第1四半期の業績概要
Jトラスト<8508>の2023年12月期第1四半期の営業収益は26,136百万円(前年同期比111.6%増)、営業利益は9,293百万円(同365.2%増)、税引前利益は9,966百万円(同146.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は9,124百万円(同147.7%増)と大幅な増収増益決算となった。特に営業利益と税引前利益は、第1四半期時点で通期計画を既に達成するなど、各利益は順調に推移している。セグメント別営業損益では、東南アジア金融事業は計画を23億円上回る7億円の利益となるなど、収益の柱になりつつある。また、韓国及びモンゴル金融事業は、貸倒引当金の戻し入れ等により、損失額は計画15億円より10億円下回る5億円に留まった。安定した収益貢献を続ける日本金融事業は、Jトラストグローバル証券やNexus Cardの連結取込によりTVCM等の広告宣伝費をはじめとする営業費用や販管費の増加があったものの、8億円の利益を計上した。加えて、新設した不動産・再生可能エネルギー事業では、ミライノベートを吸収合併したことによる負ののれん益により92億円の利益となり、会社全体の好業績をけん引した。このように営業成績が著しく向上したのは、BJIの黒字転換をはじめとする収益向上に向けた経営努力や、Nexus Bank、Jトラストグローバル証券やミライノベートの取得など、同社の積極的なM&A戦略による成果であると言える。

2. セグメント別業績
同社は、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在は日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、不動産・再生可能エネルギー事業、投資事業の5事業セグメントを展開している。

(1) 東南アジア金融事業
2023年12月期第1四半期の営業収益は8,293百万円(前年同期比43.6%増)、営業利益は719百万円(同41.5%増)となった。営業収益は、銀行業における貸出金や保有有価証券の増加に伴う利息収益の増加により増収となった。また、営業利益は、銀行業における預金が増加したことにより預金利息費用が増加したものの、銀行業において優良な貸出金の積み上げによる営業収益の増加に加えて、審査体制の見直し等により貸出債権のリスク低下を図ったことや、積極的なマーケティング戦略を継続し、流動性預金残高のかさ上げにより流動比率を高め、資金調達コストの抑制や経費の削減を進めたこと等により増益となった。

a) BJI
インドネシアにおいて長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったBJIについては、最優先課題の1つとして再生に取り組んできたが、事業規模が損益分岐点を超えたことで、営業損益は2021年12月期の43億円の損失から2022年12月期には11億円の利益に改善し、2023年12月期第1四半期も5億円(前年同期比3億円増)の利益を計上している。黒字を目指すフェーズから、より多くの利益の積み上げを追求する段階に入ったと見られる。厳格な審査体制が整ったことで、より安全性の高いローンの増加が続いていることに加え、コロナ禍の収束傾向もあり、2023年3月末の法人大企業を中心とする貸出残高は前年同期比62%増の1,785億円と、過去最高を更新した。インドネシアではGDP成長率が5%台に回復しており、資金需要が強まっているようだ。債権の不良化抑制と回収による不良債権金額の圧縮に加え、貸出残高の増加もあり、不良債権比率(90日以上延滞債権比率)はインドネシア銀行業界平均の2.4%(2022年12月末)を下回る1.73%に低下した。2020年1月以降の新体制で積み上げた貸出残高は全体の91.07%まで拡大したが、不良債権比率は0.08%の低水準に留まり、不良債権はほぼ発生していないなど、リスクマネジメントを強化した成果が現れていると言えよう。また、預金残高も2,181億円(2023年3月末)に増加している。大口の高金利預金を抑制する一方、ショッピングモールでのキャンペーンなどにより小口の低金利預金を増やしたことで、資金調達額は主な競合銀行と比べて大幅に伸長した。

b) JTRB
カンボジアのJ Trust Royal Bank Plc.(以下、JTRB)では、2023年12月期第1四半期の営業利益は4億円と前年同期と同水準であった。貸出残高は、2023年3月末には1,342億円とおおむね横ばいで推移している。これは、預金残高が伸びていないため、2022年12月期後半からは貸出を戦略的にコントロールしているためだ。一方、延滞債権比率は足元では若干上昇したものの2.31%と依然として低水準に留まっている。カンボジアでは信用力の高い米ドルが主に流通しており、銀行の預金金利は米国金利上昇の影響を受けて上昇傾向にあり、預金獲得競争が続いている。JTRBでは「Goal Saving」「The One」「Premier Savings Plus」などの普通預金商品を開発するなど、預金獲得施策を推進している。

(2) 韓国及びモンゴル金融事業
2023年12月期第1四半期の営業収益は11,261百万円(前年同期比166.8%増)、営業損失は578百万円(前年同期は1,175百万円の利益)となった。営業収益はJT親愛貯蓄銀行の子会社化と貯蓄銀行業務における利息収益の増加により、大幅増収を記録した。一方、韓国中央銀行による基準金利の引上げに伴う預金金利の高騰に加えて、JT親愛貯蓄銀行の連結取込で預金が増加したことによる銀行業預金利息費用の増加及び貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の増加等により、営業損失を計上した。ただ、営業損失額は計画値を10億円下回って着地している。預金獲得競争のために上昇した韓国の貯蓄銀行における1年定期預金金利も、2023年3月には前年8~9月頃の水準にまで低下し、金融環境は正常な状態に戻りつつある。一方、JT親愛貯蓄銀行の貸出残高は、戦略的に抑制したことで、2022年12月末の2,700億円から2023年3月末には2,600億円に減少した。米国西海岸のシリコンバレー銀行が2023年3月に経営破綻したことを受け、金融当局の今後の対応が不透明なこともあり、アクセルを踏む状況ではないとの判断から、量より質を重視した結果だ。そのため、90日以上延滞債権比率は2022年12月末の5.62%から2023年3月末には6.28%に上昇したものの、前月比では低下している。JT貯蓄銀行でも、BIS規制遵守のため貸出を戦略的にコントロールした結果、2022年12月末の貸出残高1,938億円から2023年3月末には1,827億円に減少したが、90日以上延滞債権比率は2022年12月末の4.96%から2023年3月末には4.84%に低下した。JT親愛貯蓄銀行は個人向け貸出の比率が高く、JT貯蓄銀行は中小企業取引に強いことが、両銀行の延滞債権比率の差になっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《AS》

 提供:フィスコ

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