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4308 Jストリーム

東証G
360円
前日比
+6
+1.69%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
24.5 0.87 3.89
時価総額 101億円
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Jストリーム Research Memo(8):コロナ禍前を上回る収益水準を維持


■業績動向

1. 2023年3月期の業績動向
Jストリーム<4308>の2023年3月期の業績は、売上高12,501百万円(前期比0.7%増)、営業利益1,663百万円(同19.1%減)、経常利益1,652百万円(同19.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益873百万円(同33.3%減)となった。日本経済は、ウクライナ情勢の悪化に伴うエネルギーや原材料など資源価格の高騰に加え円安の進行もあって物価が上昇傾向にあり、先行き不透明な状況となっている。一方、コロナ禍で広まったテレワークへの関心は、コロナ禍の沈静化によってオフィス回帰への動きが急速に進み相対的に低下したものの、DXへの関心は依然として高い。

事業環境はコロナ禍の需要急拡大期から沈静化期に入り、今後アフターコロナの再成長期に向かうという、一般に収益のボラティリティが高まる転換期の状況にある。こうした環境のなかで同社は、各種イベントのライブ配信や社内情報共有・教育などのオンデマンド配信のニーズに対応して、主力サービスの「ライブ配信サービス」や「J-Stream Equipmedia」、配信に関連するシステム開発や運用受託などを中心に営業活動を展開し、Web講演会やバーチャル株主総会、社内情報共有のため動画を利用したい企業の需要に応えた。また、オンラインイベントやハイブリッドイベントに関連する他社とサービス連携を実施し、顧客企業の多様な利用シーンとニーズに応える高品質なサービスの提供を進めた。情報通信業界の将来に向けた研究開発や実証実験などの取り組みに積極的に参画するなど、外部とのコラボレーションも積極化した。

この結果、主力の医薬領域が一部大口顧客の販促活動縮小の影響を受けて減収となったものの、オンライン化やDXが普及途上にあるEVC領域(医薬以外)が着実に成長し、第3四半期に大型受注のあったOTT領域も増収を確保した。子会社は、医薬関連の子会社は制作系を中心に不調となったが、大型納品のあったイノコスのほか、CO3やJクリエイティブワークスは、グループシナジーを高めるため本体からの制作や開発を積極的に受注したことで順調な推移となった。このため全体の売上高は、ボラティリティの高い期間にも関わらず増収を確保した。オーガニックな成長トレンドに回帰しつつあると言える。

利益面では減益になったが、コロナ禍前を大きく上回る水準を確保することができた。原価面では、サービス開発の強化に伴い業務委託費用、システム開発の増加に伴い外注費、及び将来の業容拡大に向けた開発体制充実のための社内制度の充実や採用の強化に伴い労務費が増加した。販管費は、採用強化に伴って求人費が増加したが、社内システムの開発が一巡したこと、全般的にコストを抑制したことにより前期比で微増に留めた。親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、時価が著しく下落した投資有価証券の減損処理を期末に特別損失で行ったため減益幅が広がった。なお、期初予想との比較では、コロナ禍における収益急拡大の反動と一部大手製薬企業の販促費圧縮により利益進捗が遅れた。しかし、ボラティリティの高まる状況のなかにおいてもコロナ禍前に比べて高い利益水準を維持したうえ、半期ベースで見ればコロナ特需の反動減からオーガニックな成長トレンドに回帰する傾向を示しており、こうした点は評価できるだろう。


減収の医薬領域も実態は堅調
2. 市場別などの売上動向
市場別(同社個別、旧基準)の売上高は、医薬領域が4,545百万円(前期比5.9%減)、EVC領域(医薬以外)が2,965百万円(同4.2%増)、OTT領域が2,372百万円(同8.8%増)となった。

医薬領域は減収となったが、これは前述したように一部大口顧客の販促活動縮小が要因で、そのほかの顧客は総じて微増と推測され、需要実態は堅調だったと言える。販促を縮小した一部大口顧客以外は、コロナ常態下で進めたDXを続けており、Web講演会のライブ配信売上や講演会への集客などの売上は底堅く推移したためである。Web講演会関連のデータ分析ツール「WebinarAnalytics」やWeb講演会における医師とMRの新たな交流ツール(開発中)など、マーケティングやソリューションに関する新たな需要は着実に拡大した。こうした状況を受けて同社は機構改革を実施し、主力の動画ソリューション事業に加え、今後は医薬領域のマーケティングやソリューションの支援も強化する方針である。

EVC領域(医薬以外)では、コロナ禍が沈静化するなかで企業活動のリアル回帰が進む一方、販売促進のためのウェブセミナーや教育・情報共有に向けた動画の利用は底堅く推移した。「J-Stream Equipmedia」のアカウント数は3,500件、「J-Stream CDNext」の自治体への導入実績は200件を超えるなど、主力の配信システム関連の売上が順調に推移した。また、好調なイベント・セミナー向けにパッケージプラン「Webinar Stream for 学会 Lite」をリリースし、最新鋭の撮影手法を用いた「XRバーチャルプロダクション」の提供も開始した。バーチャル株主総会は取扱件数が1.3倍増となったものの、システム化の進行に伴ってWeb制作など同社が担う範囲が狭まったことで(コストも下がったと推測される)単価が下落、想定ほどの売上規模には至らなかったようだ。映像制作は期末の駆け込み需要が伸びず、前期実績を下回った。

OTT領域においては、コンテンツ配信システムやWebサイト運用、配信ネットワークなどのキー局を中心とした継続的な売上に加え、専門チャンネル事業者向けのシステム開発、リアルコンテンツの販促用Web広告やWeb制作で比較的大口の開発案件が、子会社では大口の放送局向け機器売上があった。ほかに、公営競技やスポーツコンテンツなどの事業者や大手キャリア向けにDXの推進に注力し、放送業種以外の顧客層にすそ野を広げた。なお、動画配信業務の効率化を支援する「J-Stream メタマスタシステム」をリリースしたほか、「動画配信型マストバイキャンペーン」や「マルチアングル配信」などの新サービスも提供した。また、VRライブ生配信、VRオンデマンド配信やVRギアの制作など、各種VR事業を手掛けるVR MODEに出資するとともにサービスを支える大規模配信インフラを提供するなど、エンタメ市場向けのソリューションサービスを積極的に推進した。

市場別以外の特徴として、利用用途別(同社個別、旧基準)では、販促・ブランディングの第4四半期の売上が第3四半期に比べて減少したが、これは第4四半期がWeb講演会の閑散期にあたることが要因である。売上種別区分長短期別(同)では、前期大型制作案件の反動減やスポット制作の伸び悩みにより短期の制作は減少したものの、主力の「J-Stream Equipmedia」の累計アカウント数が2月に3,500件を突破するなど、契約期間が3ヶ月以上のストック性の強い長期プラットフォーム案件が引き続き伸長した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《AS》

 提供:フィスコ

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