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産業DXで普及加速へ、「デジタルツイン」活躍期待の銘柄を追え <株探トップ特集>


―産業用メタバースとして活用広がる、製造現場から社会課題の解決まで―

 ゲームやSNSの世界での活用が中心だった メタバースだが、ビジネスの領域でも本格的に普及し始めた。「産業用メタバース」ともいわれ、数年前から注目されていた「デジタルツイン」が、欧米に比べて出遅れていた日本でも、大手製造業を中心に活用が広がりつつある。本格的な普及期に入りつつあるデジタルツイン関連に注目したい。

●生産ライン停止の原因を事前に予測

 デジタルツインとは、デジタル空間にリアル空間の双子(ツイン)を作る技術のこと。センサーなどを用いて集められたさまざまなデータをクラウド上のサーバーに送信し、仮想空間上で人工知能(AI)が分析・シミュレーションを行い、その結果を現実空間にフィードバックする。これにより物理空間にあるモノの将来の変化をデジタル空間上でシミュレートし、いち早くその変化に対応することなどができるようになる。製造現場や建設業ではモノづくりに役立てているほか、社会課題の解決などの分野への活用も始まっている。

 例えばダイキン工業 <6367> [東証P]は、堺製作所臨海工場(大阪府堺市)向けに、デジタルツイン機能を搭載した新しい生産管理システムを開発した。工場内の製造設備などに取り付けたセンサーやカメラから取得したデータをもとに製造工程を仮想空間に再現することで、生産ラインの停止原因を事前に予測し、迅速に対応することができる。川崎重工業 <7012> [東証P]も工場を丸ごとデジタルツイン化する方針だ。

 社会課題の解決の分野では、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」が有名だ。このデータを活用すれば、仮想空間上に立体的な都市を再現したデジタルツインを作ることができ、都市開発や災害リスクの可視化などに役立てている。

●生産性が最大15%向上

 デジタルツインが急速に普及する背景には、新型コロナウイルスの感染拡大以降、製造業を中心に企業がそれまで以上に省力化を求められるようになり、プロセスの合理化のためにデジタルツイン技術を導入するケースが増えたことがある。人員の稼働状況のデータを収集・分析し、デジタルツイン上で製造体制を再現することで、製造プロセスを最適化することができるようになる。トヨタ自動車 <7203> [東証P]と産業技術総合研究所が行った実証実験では、人の作業負荷をロボットが理解し、安全かつ効率的な生産を人とロボットが協調して行うことで生産性が最大15%向上したという。

 現在、デジタルツインの活用は大手製造業や大手ゼネコンなどが中心だ。ただ今後、こうした企業の顧客がデジタルツインの構築に必要なデータを顧客へと引き継ぎ、引き継いだ顧客が自社の工場などに活用するようになると市場は一気に拡大する可能性もある。デジタルツイン関連サービスを提供している企業のビジネスチャンスも急拡大しそうだ。

●デジタルツインの関連銘柄

 YE DIGITAL <2354> [東証S]は、デジタルツインによるシミュレーションで、生産性要素データを元にした倉庫の稼働率や生産性などの分析を可能にした、物流倉庫の自動化促進に特化したWES(倉庫実行システム)「MMLogiStation」を開発し、2021年11月に提供を開始している。同システムは、ホームセンター大手のカインズ(埼玉県本庄市)が24年2月に稼働開始予定の次世代大型物流センター(三重県桑名市)にも採用されている。

 シリコンスタジオ <3907> [東証G]はゲームエンジンを自社開発するが、近年は非エンターテインメント領域の事業が拡大。CG制作で培ったレンダリング技術やモデリング技術などを生かし、自動車、土木・建設などさまざまな業界のCGビジュアライゼーションのニーズに対応することでデジタルツインに貢献しており、今後も事業領域の裾野拡大が見込まれている。

 サイバネットシステム <4312> [東証S]は、CAE(コンピューター支援設計)の分野で蓄積してきた実績と知見をもとにしてシミュレーションベースのIoT/デジタルツインの構築を行うサービスを展開している。センサーデバイスの選定からシステムの開発・構築・運用までワンストップで提供しており、納入実績も多い。

 ウイングアーク1st <4432> [東証P]は生産現場のデジタルツインを実現するため、データ可視化・分析ツールとしてBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「MotionBoard」を開発・販売している。生産設備やAGV(無人搬送車)から取得したリアルタイムなIoTデータを元に、仮想空間を表現。3Dの立体表現とカメラ映像により、遠隔地からでも工場の様子を手に取るように把握することができるという。

 伊藤忠テクノソリューションズ <4739> [東証P]は、19年11月に製造業向けのデジタルツイン・ソリューションの提供を開始。また、昨年7月には企業向けにメタバース開発環境の簡易導入パッケージ「Omniverse Starterパッケージ」の提供を開始した。デジタルツインやVRなどの技術を通して、業務プロセスの最適化を図る製造業や建築業を中心に展開するとしており、同社では3年間でOmniverse関連ビジネスの売上高10億円を目指すとしている。

 KIMOTO <7908> [東証S]は、創業以来培ってきた画像処理技術・データ加工技術を進化させ、デジタルツインの実現につながる精度ある高品質なデータを作成するデジタルツイン事業を展開している。中心となる建設・土木向けでは、建設現場で求められる建設生産プロセスでの3次元モデルの流通を図るBIM/CIMに関する計測・加工・閲覧の一気通貫サービスを提供しており、デジタルツインの実現に技術面で貢献している。

 このほか、今年4月に高性能パソコンや特別なスキルを必要とせずに、容易に建設現場のデジタルツインを構築できる「デジタルツインアプリ」を開発したと発表した大林組 <1802> [東証P]や、今年1月にデジタルツインなどの次世代の開発手法や設計に関わる技術領域の強化を図るためにギリア(東京都台東区)に出資した日本郵船 <9101> [東証P]なども注目したい。

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