明日の株式相場に向けて=ソフトバンクGに「生成AI」の風
名実ともに6月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比260円高の3万1148円と反発。前日に440円安と大きく下値を試す展開となったが、その余韻冷めやらぬなか、きょうも朝方取引開始前は「おそらく続落は避けられない」という見方が市場関係者の間でも支配的であった。しかし、実際は驚くほど頑強な値動きで3万1000円台を回復した。
足もとで売り優勢に傾くだろうという見方が強かったのは、世界的に株価の上値が重くなってきたこともある。前日を振り返ると、アジア時間から日本株だけではなく世界的なリスクオフモードであった。中国、香港、韓国などアジア株が総じて下げただけではなく、欧州株市場も文字通りの全面安。しかも前日は、独DAXや仏CAC40など主要国の株価指数の下落率は日経平均を上回るものだった。そして米国では、はっきりした理由がないままにNYダウ、ナスダック総合株価指数が下落。米債務上限引き上げ問題は採決待ちの状態で、結果を見極めたいという思惑もあったが、本音の部分では法案可決を既定路線として相場は織り込んでいたはずである。その証拠に、日本時間きょう午前に米下院で債務上限法案が可決された後も米株価指数先物が買われることはなかった。
いずれにしても、世界的に株価はやや変調な時間帯に入っている。日本株もそれに歩調を合わせておくことはある意味大切なことで、ここで気張り過ぎても後でそのツケは回ってくる。日経平均は5月最終日に440円安と大幅安をみせたが、率にすれば1.4%。その前日の30日時点では5月は月間8.6%も上昇していただけに、最終日にポジション調整の売りが出て、400~500円の押しがあっても何の不思議もない。この日にプライム市場は7兆円近い売買代金をこなし市場でも話題となったが、これはMSCIの銘柄入れ替えだけでなく、複数の大口機関投資家のリバランスが引け際にあったことが観測されている。果たして更なる日本買いの暗示なのか。きょうの相場の強さは日本株優位論を裏付けるものだったが、そういう時こそ目先波乱に警戒しておくタイミングかもしれない。
個別では引き続き人工知能(AI)関連株が輝きを放っている。直近のAI関連株人気は日米ともに“エヌビディア効果”という表現がしっくりくる。今週に入ってエヌビディア<NVDA>の時価総額は一時1兆ドルを超え、GAFAMクラスの巨大IT企業として存在感を高めたが、画像処理半導体大手と生成AI 関連という2つの顔に光が当たっている。同社の手掛ける半導体いわゆるGPUについては「強烈な需要に生産が追い付かず払底状態にあり、今から予約しても商品到着まで何年も待たされるような状況。日本のゲーム機メーカーなどは頭の痛い局面に陥る懸念がある」(ネット証券アナリスト)とする。
生成AIブームのなせる業だが、東京市場ではこのエヌビディア効果で視界がガラッと変わった銘柄としてソフトバンクグループ<9984>が挙げられる。「同社が傘下のファンドを通じて投資するAIベンチャーの数々が、新規上場バブルに乗る可能性がある」(同)という。AIブームによって、これまで見えなかった出口戦略への強力な追い風が吹いてきたというわけだ。また、今週初めの5月29日には子会社のソフトバンク<9434>がエヌビディアとの協業を発表するなど直接的な材料も株価に浮揚力を与えている。
東京市場ではAI関連という括りで、このソフトバンクGはいうまでもなく大型株の範疇に入るが、全体的には中小型株が圧倒的に多い。これが生成AI特需を囃(はや)して併走する半導体関連株とは違うところで、株価も思惑先行で個人投資家好みの材料株相場の様相を呈する。また、株価が3ケタ台の銘柄も比較的多い。例えば目先人気化しているブレインパッド<3655>や、今のところ動きはないがAIテーマでは常連のFRONTEO<2158>などはこれに該当する。前日当欄で取り上げたテクノホライゾン<6629>、日本ラッド<4736>のほか、ジェクシード<3719>、データセクション<3905>、エクサウィザーズ<4259>、アセンテック<3565>などもAI関連の中低位株に属する。
あすのスケジュールでは、5月のマネタリーベース、5月の財政資金対民間収支など。また、3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。海外では、5月の米雇用統計にマーケットの注目度が高い。このほか、アジア安全保障会議が4日までの日程で行われる。なお、シンガポール市場とインドネシア市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年06月01日 17時02分
足もとで売り優勢に傾くだろうという見方が強かったのは、世界的に株価の上値が重くなってきたこともある。前日を振り返ると、アジア時間から日本株だけではなく世界的なリスクオフモードであった。中国、香港、韓国などアジア株が総じて下げただけではなく、欧州株市場も文字通りの全面安。しかも前日は、独DAXや仏CAC40など主要国の株価指数の下落率は日経平均を上回るものだった。そして米国では、はっきりした理由がないままにNYダウ、ナスダック総合株価指数が下落。米債務上限引き上げ問題は採決待ちの状態で、結果を見極めたいという思惑もあったが、本音の部分では法案可決を既定路線として相場は織り込んでいたはずである。その証拠に、日本時間きょう午前に米下院で債務上限法案が可決された後も米株価指数先物が買われることはなかった。
いずれにしても、世界的に株価はやや変調な時間帯に入っている。日本株もそれに歩調を合わせておくことはある意味大切なことで、ここで気張り過ぎても後でそのツケは回ってくる。日経平均は5月最終日に440円安と大幅安をみせたが、率にすれば1.4%。その前日の30日時点では5月は月間8.6%も上昇していただけに、最終日にポジション調整の売りが出て、400~500円の押しがあっても何の不思議もない。この日にプライム市場は7兆円近い売買代金をこなし市場でも話題となったが、これはMSCIの銘柄入れ替えだけでなく、複数の大口機関投資家のリバランスが引け際にあったことが観測されている。果たして更なる日本買いの暗示なのか。きょうの相場の強さは日本株優位論を裏付けるものだったが、そういう時こそ目先波乱に警戒しておくタイミングかもしれない。
個別では引き続き人工知能(AI)関連株が輝きを放っている。直近のAI関連株人気は日米ともに“エヌビディア効果”という表現がしっくりくる。今週に入ってエヌビディア<NVDA>の時価総額は一時1兆ドルを超え、GAFAMクラスの巨大IT企業として存在感を高めたが、画像処理半導体大手と生成AI 関連という2つの顔に光が当たっている。同社の手掛ける半導体いわゆるGPUについては「強烈な需要に生産が追い付かず払底状態にあり、今から予約しても商品到着まで何年も待たされるような状況。日本のゲーム機メーカーなどは頭の痛い局面に陥る懸念がある」(ネット証券アナリスト)とする。
生成AIブームのなせる業だが、東京市場ではこのエヌビディア効果で視界がガラッと変わった銘柄としてソフトバンクグループ<9984>が挙げられる。「同社が傘下のファンドを通じて投資するAIベンチャーの数々が、新規上場バブルに乗る可能性がある」(同)という。AIブームによって、これまで見えなかった出口戦略への強力な追い風が吹いてきたというわけだ。また、今週初めの5月29日には子会社のソフトバンク<9434>がエヌビディアとの協業を発表するなど直接的な材料も株価に浮揚力を与えている。
東京市場ではAI関連という括りで、このソフトバンクGはいうまでもなく大型株の範疇に入るが、全体的には中小型株が圧倒的に多い。これが生成AI特需を囃(はや)して併走する半導体関連株とは違うところで、株価も思惑先行で個人投資家好みの材料株相場の様相を呈する。また、株価が3ケタ台の銘柄も比較的多い。例えば目先人気化しているブレインパッド<3655>や、今のところ動きはないがAIテーマでは常連のFRONTEO<2158>などはこれに該当する。前日当欄で取り上げたテクノホライゾン<6629>、日本ラッド<4736>のほか、ジェクシード<3719>、データセクション<3905>、エクサウィザーズ<4259>、アセンテック<3565>などもAI関連の中低位株に属する。
あすのスケジュールでは、5月のマネタリーベース、5月の財政資金対民間収支など。また、3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。海外では、5月の米雇用統計にマーケットの注目度が高い。このほか、アジア安全保障会議が4日までの日程で行われる。なお、シンガポール市場とインドネシア市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年06月01日 17時02分