窪田朋一郎氏【強烈な上昇続く東京市場、天井はまだ先か】(1) <相場観特集>
―米株高と円安を追い風に日経平均は3万1000円台へ―
29日の東京株式市場は、リスクオン相場が継続する形で日経平均株価は3万1000円台を大きく回復してきた。米国で懸案だった債務上限引き上げを巡る問題が解決の方向に向かったことが、マーケットの強気心理を後押しし前週末の欧米株市場がほぼ全面高となったことが追い風となっている。ここから更に上に行くのか、そして株式相場のカギを握る為替動向はどうなるのか。業界第一線で活躍する市場関係者2人に今後の展望を聞いた。
●「日本株はトルコ型の強気相場へ」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
米債務上限問題がようやく解決の方向となったことで、前週末の米国株市場が大きくリスク選好に傾き、週明けの東京市場も日経平均が上げ足を一気に強めた。しかし、この先も依然として上値に対する伸びしろが大きいといえる。当面は円安進行とセットで日経平均の上昇トレンドが続くと考えられ、目先の押し目形成場面は強気に買い向かって報われる公算が大きいとみている。
向こう1ヵ月程度、6月相場の見通しとして日経平均は3万2500円くらいまでの上昇余地があるとみている。理由として挙げられるのは何といっても植田日銀総裁のハト派的金融政策の継続にある。日本国内を見れば明らかにインフレ圧力が強まっている状態にあるにもかかわらず、それでも黒田前日銀総裁の超金融緩和を引き継ぐ構えを貫いている点で、今の日本は「トルコ型」の株価上昇モデルとなっている。インフレ率が0%近辺の経済下でのマイナス金利と、今のようなインフレ率が4%を超えているような環境にあってマイナス金利を続けるのとは大きく意味が異なる。国内ではガソリンの補助金が9月までで打ち切られ、更に電気料金やガス料金の政府支援についても9月以降も続くのかどうか不透明感が強い。海外で資源価格が落ち着く中でも日本ではインフレ圧力が継続する可能性が高く、株式市場はインフレから政策金利を差し引いた実質金利の低下により、上昇基調を強めることが予想される。
差し当たっては6月15~16日の日程で行われる日銀の金融政策決定会合が市場の関心を集めそうだ。ここで日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)の解除もしくは許容幅拡大といった政策変更に踏み込まない限り、日経平均は3万2000円台乗せから更に上値を指向する展開となりそうだ。万が一政策変更の動きをみせた場合は、3万円を割り込むような波乱も考えられるが、植田総裁は政策変更には慎重とみられ、その線は薄いとみている。
物色対象としては引き続き半導体関連株に注目したい。米エヌビディア<NVDA>と同様に生成AI関連分野の特需が強力なアドバンテスト <6857> [東証P]やディスコ <6146> [東証P]などをはじめ、広範囲に物色の矛先が向くだろう。また、バフェット効果で脚光を浴びた三菱商事 <8058> [東証P]など総合商社大手も引き続き株価上昇余地があるとみている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
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