TKP Research Memo(1):貸会議室・宿泊需要の回復基調継続により、大幅な増収及び営業黒字化を達成
■要約
ティーケーピー<3479>は、貸会議室ビジネスを起点とした「空間再生流通事業」を展開している。不動産オーナーから遊休不動産等を大口(割安)で仕入れ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、それを法人に小口で販売・シェアリングを行う独自のビジネスモデルに特徴がある。遊休不動産の有効活用を図りたい不動産オーナーと、低コストで効率的に会議室を利用したい法人のニーズを結び付けるところに新たな市場を創出し、高い成長性を実現してきた。国内の主要都市に237拠点・1,988室(約14万坪)と幅広く展開し、顧客基盤は3万社以上に上る(2023年2月末時点)。
2023年2月1日付けでレンタルオフィス「Regus」等を展開するリージャス事業※を売却。新型コロナウイルス感染症流行の収束(以下、アフターコロナ)を見据え、ビジネスモデルをLight Capex(資本的支出の軽減)及び High Margin(高収益)へとさらに進化させることが目的である。今後は貸会議室・宿泊事業の需要回復の本格化を見据えた仕入れの積極推進や「再生」をテーマとする新規事業などに経営資源を集中投下する方針である。
※日本リージャスホールディングス( 株 )(以下、日本リージャス)の買収(2019年5月)及び台湾でリージャス事業を運営する台湾子会社(以下、台湾リージャス)の買収(2019年9月)により開始したレンタルオフィス事業。
1. 2023年2月期の連結業績
2023年2月期の連結業績は、売上高が前期比13.0%増の50,504百万円、営業利益が3,575百万円(前期は883百万円の損失)と、売上高の回復とともに営業黒字転換を達成した。また、重視するEBITDAについても同88.9%増の8,748百万円と大きく回復してきた。経済活動の再開とともに、コア事業であるTKP事業(貸会議室・宿泊事業)の需要回復が継続し増収に大きく寄与した。また、2023年2月1日に売却したリージャス事業については11ヶ月分の業績寄与となったものの、前期とほぼ同水準の売上高を確保した。損益面では、TKP事業は売上高の回復と、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を通じて取り組んできた収益構造の改善により大幅な営業増益を実現した一方、リージャス事業については「顧客関連資産」及び「のれん」の償却負担が重く、連結損益の足を引っ張る要因となっていた。活動面では、同社初の独自ビジネスホテルブランド「TKPサンライフホテル」を含め、4施設の新規出店を行った。また、識学<7049>との資本業務提携やリリカラ<9827>の持分法適用関連会社化を実現し、TKP事業の付加価値向上(ソフト領域の拡充)に向けても一定の成果をあげることができた。
2. 2024年2月期の連結業績予想
2024年2月期の連結業績について同社は、売上高を前期比28.1%減の36,300百万円、営業利益を同51.0%増の5,400百万円と、リージャス事業の売却により減収となる一方で損益面では大幅の増益を見込んでいる。売上高はリージャス事業の売却による影響を除くと、約20%の増収を確保する計画である。貸会議室・宿泊需要が回復基調にあるなかで、東京・大阪のビジネス地区を中心に新規出店・既存施設の増床を積極化する方針であり、会議室面積で1万坪増を目指す。損益面でも、筋肉質な収益体質への転換(損益分岐点の引き下げ)を進めてきたところに増収効果が重なることで大幅な増益を実現し、営業利益率も14.9%(前期は7.1%)に大きく改善する想定となっている。
3. 新中期経営計画の公表
同社は、リージャス事業の売却に踏み切ったことや貸会議室・宿泊需要の回復が進んできたこと、仕入れ環境も追い風に向かっていることを踏まえ、アフターコロナを見据えた新中期経営計画(3ヶ年)を公表した。貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェアの拡大と対象市場の拡張を図るとともに、経営効率の最適化にも注力する方針である。最終年度である2026年2月期の目標として、売上高575億円、営業利益94億円(営業利益率16.3%)を掲げており、過去最高の業績水準を更新していく計画となっている。
■Key Points
・2023年2月期は貸会議室・宿泊需要の回復基調継続により、大幅な増収増益(営業・経常黒字転換)を達成
・アフターコロナを見据え、資本的支出の軽減と高収益確保に向けてリージャス事業を売却
・2024年2月期はリージャス事業の売却により減収となるも、貸会議室・宿泊事業の伸びにより大幅な増益を見込む
・新中期経営計画を公表。貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェアの拡大と対象市場の拡張を図り、過去最高の業績水準を更新していく計画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SI》
提供:フィスコ