C&R社 Research Memo(6):クリエイティブ分野と医療分野が過去最高業績を更新(2)
■クリーク・アンド・リバー社<4763>の業績動向
(5) その他事業
子会社16社で構成されるその他事業の売上高は前期比21.9%増の3,071百万円、営業損失は275百万円(前期は32百万円の損失)となった。16社のうち6社が新たに連結対象子会社として加わり(うち、5社は新設子会社)、172百万円の増収、120百万円の減益要因となった。既存子会社10社のうち5社が増収、4社が増益となった。
主な子会社の動向を見ると、ITエンジニアやデータサイエンティスト等のエージェンシー事業を主に展開する(株)リーディング・エッジ社(出資比率99.99%)の売上高は増収となったものの、上期に稼働率が一時的に低迷したことや不採算案件が発生した影響により、営業損失0.8億円(前期は0.2億円の利益)を計上した。ただ、下期だけで見ると派遣案件の受注獲得に注力したことで稼働率も向上し、0.3億円の黒字に転じている。
ファッション分野のエージェンシー事業を主に展開する(株)インター・ベル(同100.0%)は、販売職の派遣や店舗の運営代行業務を展開している。コロナ禍の影響が徐々に緩和され、小売店舗への来客数が回復するとともに、販売員の派遣需要も上向き、また、販売代行事業が伸長したこともあり売上高は前期比30%の増収、営業利益も増益となった。
人材メディア事業を展開する(株)プロフェッショナルメディア(同100.0%)は、Web、IT、AI業界の総合求人サイト「DXキャリア」を運営しており、同業界における旺盛な需要を背景に売上高は同30%増と順調に伸長したが、利益面では若干ながら損失を計上した。
VR事業を展開する(株)VR Japan(同84.21%、12月決算)は、中国大手メーカーからVRゴーグルを調達し、国内で販売・運用・保守を行っている。導入案件の減少により売上高は減収となったものの、費用削減により営業利益は黒字に転換した。新たな取り組みとして順天堂大学と共同で医療ARシステムの共同開発に着手している。具体的には、肺がんなどの治療で行う胸腔ドレナージ※の安全性向上を目的に、臓器の位置を正確に把握するためのARシステムの開発を進めており、2023年6月頃にプロトタイプが完成する見通しだ。
※胸腔ドレナージとは、胸腔内にドレーン(管)を挿入し、貯留した気体や液体(胸水や血液、膿)を持続的に体外へ排出(ドレナージ)する治療法。
AIシステムの企画・開発・販売・運用・保守事業を行う(株)Idrasys(同80.11%)では、自社開発したAI予測プラットフォーム「Forecasting Experience」を展開している。「Forecasting Experience」の特長は、学習データをExcelベースで簡単に作成でき、専門知識がなくても比較的容易に予測モデルを構築できる点にある。また、Idrasysで取り扱う台湾インツミット社製のAI搭載ドキュメント検索システム「SmartKMS」とAIチャットボットサービス「SmartRobot」に、ジェネレーティブAI(生成AI)「ChatGPT」を連携した強化版を開発中であり、セミナー開催や展示会への出展により新規リードの獲得に取り組み、売上高は若干増となったが営業利益は前期並みの損失を計上した。一定のニーズはあると見られ、顧客ターゲット・マーケティング戦略の見直しも行いながら収益化を目指していくものと思われる。
米国で法曹分野のSNSプラットフォーム「JURISTERRA」の開発・運営を行うCREEK & RIVER Global, Inc.(同100.0%)は減収減益となった。「JURISTERRA」の本格稼働に向けては法制度面でクリアすべき課題が残っているため、現状は一部の機能を活用して米国と日本を結んだ法務コンサルティングサービスを行っている。2023年2月期はコンサルタント人員の減少により、売上高で前期比58.4%減の29百万円となった。当面は現状を維持していく方針で、収益への影響も軽微となる。また、中国で版権ビジネスを展開するCREEK & RIVER SHANGHAI Co., Ltd.(同100.0%)は、売上高で同5.6%減の78百万円となり、営業利益も若干の損失を計上した。コロナ禍の長期化による映画産業の低迷により、版権収入等が減少したことによる。
2022年3月に連結子会社化したforGIFT(同77.5%)は、売上高で2億円弱、営業利益で数百万円を計上したと見られる。このうち、新規サービスとなるアパレル3DCGサンプル制作サービス「sture(ストゥーラ)」は複数社から受注し、月間数百万円の売上規模となったようだ。同サービスは同社開発スタジオで蓄積してきたゲームの3DCG制作技術とファッション分野での知見を融合したサービスで、顧客側のメリットとしてはサンプル制作時間の短縮や経費・廃棄ロスの削減に伴う製造コストの低減が挙げられる。顧客企業では一部のブランドから導入を開始し、コスト低減効果が確認できれば他のブランドにも順次導入を進めていくものと見られる。
また、同年4月に新設したコネクトアラウンドでは、農業分野でのテクノロジーを活用したダイバーシティ&インクルージョン及び農業を基軸とした地域雇用の促進事業を展開していく。2023年2月に屋内栽培と2次加工品の製造・販売を行う6次化農業ビジネス「Fun Eat Makers」事業を神奈川県川崎市内の施設で開始した。同施設にて収益モデルを確立したのちにFC展開していく予定だ。障がい者雇用を組み合わせたビジネスモデルで、企業の関心度も高く今後の動向が注目される。さらに、地方創生ビジネスの一環として、2024年7月の竣工を目途に福島県大熊町にスマート農業施設「Fun Eat Makers in Okuma」を開設する計画を発表した。同施設は「高付加価値農業生産エリア(ミニトマト、無農薬栽培リーフレタス)」と「食を楽しむエリア(レストラン)」「様々なプロフェッショナルがつながるワーケーション滞在エリア」の3つのエリアで構成する建物と、地域の人々がつながる半屋外エリア及び屋外エリアで構成されており、建設費用等は国の補助金で賄われる。
同年4月に新設したOne Leaf Cloverは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社の認定を取得し、障がい者の安定的な職場環境の確保及び社会への主体的な参画を目指し、自治体等と連携を図りながら事業構築していくことにしている。
同年5月に連結子会社化したANIFTY(同51.8%)では、アニメ作家や漫画家、イラストレーター、動画制作者等のコンテンツをNFT(非代替性トークン)として流通させ、グローバル市場での収益化を図るとともに、才能の発掘や新たなビジネスモデルの構築に向けた準備を進めている。
同年7月に新設したChef’s valueでは、同年11月末にシェフの独立開業を支援するための直営スタートアップ1号店を本社ビル内に開店した。今後は、シェフの独立開業支援によるロイヤリティ収入の獲得や周辺ビジネスの創出による収益化を目指す。
同年7月に新設したNextrekは、漫画家や出版社のグローバルにおける収益拡大及び映像・音楽クリエイターの新たな創作機会の提供を目的に、モーションコミック「モブコミ」を開発、2023年3月よりサービスを開始した。既に10タイトル以上の作品がYouTubeを通じて配信されており、同アプリから直接原作漫画を購入することも可能となっている。反響は上々のようで、収益化に向けては人気作品の版権獲得に加えて、無料視聴ユーザーを有料課金ユーザーに遷移していくことができるかがポイントとなりそうだ。
同年10月に新設したC&Rインキュベーション・ラボでは、グループとの事業シナジーが見込める企業に対して出資を行うCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を展開している。1件当たり0.3~1億円を目安に10億円程度の投資を行う予定で、投資実績として劇団運営及び公演を行うYTJ(Youth Theatre Japan)、食品原料のWeb売買プラットフォームを開発・運営するICS-net(株)の2社に出資した。
なお、2020年7月に子会社化した(株)Gruneについては、シナジー効果が十分に発揮できなかったことから、同社の持ち株(75.0%)をすべて売却し、連結対象から外している。この影響により売上高で約60百万円、営業利益で数百万円の減額要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ