鈴木英之氏【米雇用統計通過で安心感? 春相場の勘所は】(2) <相場観特集>
―次は米CPI、金融不安一服後の日米株の動向を占う―
週明け10日の東京株式市場は総じて買い優勢の展開となり、日経平均株価は2万7000円台後半で頑強な値動きを示した。前週末に発表された3月の米雇用統計は大方の予想から大きなブレはなく、このビッグイベントを通過したことで投資家心理が改善した。一方、買い一巡後は上値も重く、海外市場の休場の影響もあって外国人投資家の参戦も限られ、売買代金は前週末に続き低調だった。ここからの相場見通しと物色の方向性などについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「2万8500円前後への上昇相場も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
今後1ヵ月程度の日経平均株価は、下値が2万7000円程度、上値は2万8500円前後を見込んでいる。4月下旬から本格化する決算発表を経る形となるが、相場は上昇基調を期待できるとみている。
やはり決算内容が注目されるが、3月の日銀短観をみても大企業製造業などの景況感は良くない。それだけに、24年3月期業績予想のガイダンスは減益が打ち出されることも想定される。しかし、その一方で少額投資非課税制度(NISA)の拡充に向けた方針が打ち出されるなか、「PBR1倍割れ」の是正に向けた動きが強まっている。株式市場に新たな資金が入る格好となり、株価上昇に向けた意識も強く働くなか、企業が自社株買いなどを積極的に行う動きは続くとみられる。
株式市場を巡る環境には、プラスマイナス両面があるが、全体的にはプラス要因が優勢だと思う。
米金融政策も5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%利上げも予想されるが、その後、米政策金利はピークアウトを視野に入れた展開が期待できる。日銀が長短金利操作(YCC)の変更を行うことは有り得る。しかし、4月の実施は企業業績見通しにも影響を与えることになりかねないだけに、政策修正はまだ少し先ではないか、とみている。
個別銘柄では、大型のグロース株である「クオリティー・グロース」が有望だとみている。ソニーグループ <6758> [東証P]やキーエンス <6861> [東証P]のようなクオリティー・グロース銘柄には投資妙味がありそうだ。
また、内需系ではインバウンド関連株に注目している。JR東日本 <9020> [東証P]のようなJR株に出遅れ感がある。更に、中小型の人工知能(AI)関連株なども面白そうだ。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース