はてな Research Memo(2):2023年7月期第2四半期累計は増収減益となるも、成長に向けた施策は順調に進捗
■業績動向
1. 2023年7月期第2四半期累計業績の概要
はてな<3930>の2023年7月期第2四半期累計業績は、売上高で前年同期比2.7%増の1,568百万円、営業利益で同46.2%減の99百万円、経常利益で同49.7%減の94百万円、四半期純利益で同58.4%減の54百万円と増収減益となったものの、通期予想に対する進捗率は売上高で49.3%、営業利益で67.3%と順調に推移した。また、2024年7月期以降の成長加速に向けた「GigaViewer for Apps」の機能拡充や採用強化施策も順調に進捗した。
広告収入が低迷したコンテンツプラットフォームサービスと、大型顧客の運用停止等の影響を受けたコンテンツマーケティングサービスがそれぞれ減収となったものの、「GigaViewer」や「Mackerel」を中心としたテクノロジーソリューションサービスの増収でカバーし、売上高は半期ベースで過去最高を更新した。利益面では人件費が前期比2.1%増の774百万円、DC利用料が同18.0%増の293百万円、その他費用が同19.0%増の402百万円となったが、事業費用は同9.3%増の1,469百万円と想定の範囲内であった。
2023年7月期第2四半期末の社員数は前期末比9名増の178名となり、第2四半期末時点で通期採用目標数に到達(内定受託者含む)した。エンジニアの採用環境が厳しいこともあり、ここ数年は計画未達が続いていたが、採用・育成力強化に向けた施策として、2022年5月に組織変更を行ったことが奏功した。Indeed Japan(株)が主催する「Owned Media Recruiting AWARD 2022」では同社の採用力が評価され、グランプリを受賞した。一方、自社のエンジニア向け採用サイトだけでなく、開発者ブログやオンラインセミナー、ポッドキャストなど多チャンネルで積極的に発信した結果、オウンドメディアからの採用が増加し、採用費の抑制にもつながっている。なお、人件費が前年同期比2.1%増に留まったのは、利益水準の低下により前年同期比で賞与引当金繰入額が減少したことによる。
DC利用料の増加要因としては、円安傾向により米ドル支払いでのクラウドサービス利用料の増加のほか、「GigaViewer」を利用する媒体数の増加及び利用の増加による。対売上比でも前年同期比2.4ポイント上昇し、営業利益率低下の一因となった。その他費用の増加要因としては、テクノロジーソリューションサービス開発推進のための外注費や業務委託費の増加のほか、レベニューシェアの増加に伴う収益配分原価や、自社サービス拡販に向けた広告宣伝費の増加による。
「GigaViewer」は新たに1媒体の大型案件を受注
2. サービス別売上動向
(1) テクノロジーソリューションサービス
テクノロジーソリューションサービスの売上高は前年同期比10.6%増の980百万円と2ケタ増収が続き、過去最高を更新した。また、通期予想に対する進捗率も49.5%と順調である。「GigaViewer」を中心とした受託サービスが同15.3%増の581百万円、「Mackerel」が同4.2%増の398百万円となった。
受託サービスのうち、「GigaViewer」は「モーニング・ツー」((株)講談社、広告運用・販売サービス含む)で「GigaViewer for Web」が搭載され、搭載累計20メディア(うち「GigaViewer for Apps」1メディア)となった※。また、開発案件やシステム運用保守案件のほか、読者確保のためのレベニューシェアも本格化した。なお、「GigaViewer」の開発期間は1メディア当たり3~6ヶ月程度かかるようで、引き合いに対応するためにエンジニアの増員を積極的に進めている。
※2023年2月には「月マガ基地」で「GigaViewer for Web」が搭載された。
「Mackerel」は大型顧客からの支持が高く、計画を上回って着地した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴い有力な顧客獲得ルートであったオフラインでの展示会が中止となったことに加え、大型顧客の開拓に注力した結果、伸び率は1ケタ台にとどまった。トピックとしては、2022年11月に、AWS(Amazon web Service)のプロセッサである「AWS Gravitionプロセッサ」をサポートするサービスのみが取得できるパートナー制度「AWS Gravition Ready」に日本企業で初めて認定された。クラウドサービスを利用する顧客に技術力をアピールでき、さらなる売上成長が期待できる。
(2) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前年同期比7.0%減の366百万円となった。大型顧客の更新停止に伴い運用件数当たり月平均売上は前年同期比17.4%減の479,000円となったものの、通期予想に対する進捗率は47.7%と順調である。「はてなブログMedia」新規開設については、引き続き企業の採用・広報を目的とした開設案件が多いが、潜在顧客向けマーケティングニーズも底堅く、引き合いは多数発生している。オンラインセミナーの実施によるリード(見込み顧客)獲得も有効であった。しかしながら、コロナ禍前と比較し受注決定や開設完了までに要する時間が長引く傾向に変わりはなく、新規開設数は9件(前年同期は14件)に留まった。一方、解約数は8件と過去5年間で見ても平均的であったことから、運用件数は前期末比1件増の129件となった。
(3) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前年同期比10.6%減の221百万円となった。期初予想どおりアドネットワーク広告単価の急回復はないものの、通期予想に対する進捗率は50.8%と順調である。YouTubeやInstagramなどのSNS普及に伴い、「はてなブログ」など同社サービスに対する需要減退の懸念があるものの、「はてなブログ」への投稿数やアクティブユーザー数は堅調に推移していることから、広告単価下落の影響が大きいと弊社では見ている。なお、スタートアップ企業または小規模法人向けの「はてなブログBusiness」はスタートアップ企業を中心に契約件数を伸ばしているものの、業績への影響は軽微である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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提供:フィスコ