明日の株式相場に向けて=「低PBR株」大逆襲相場の序章か
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比58円安の2万7473円と反落。これで日経平均は9営業日連続(TOPIXは8営業日連続)で毎日交互に上げ下げを繰り返していることになる。こうなると、このリズムがいつ崩れるのかが、もみ合い放れのカギを握っているようにも見えてくる。テクニカル的には日経平均の25日・75日移動平均線がゴールデンクロスを示現しており、満を持しての上放れに期待が募る。しかし、なにぶん米国株次第のところもあり、米ハイテク株が長期金利上昇を嫌気して売り優勢の地合いとなれば、その流れが東京市場も伝播しやすく、足もと様子見ムードは拭えない。
ただ、個別株の物色意欲は旺盛で、全体指数を眺めているだけではマーケットの風を感じることはできない。いうまでもなく低PBR銘柄が乱舞している。これまでPBRが際立って低い銘柄は割安という認識はあっても、だからといって上値を買い進む理由も見当たらず、そのまま触らずに放置されるケースが多かった。仮に株価が動意しても、経営に変革の兆しが見えない限り継続的に投資資金が流れ込むようなことはなく、線香花火のようにあっという間に火種が尽きる、9割方がそういうパターンであった。しかし、ここにきて低PBR銘柄の株高修正が有力な投資テーマとしてにわかに色を帯びている。
PBRが1倍を割り込む水準に放置されている銘柄は、端的に言えば会社の解散価値よりも低く評価されている。つまり現在行っている企業活動を全停止して会社を解散し、保有している純資産を現金化すれば、お釣りがくる状態にあることを意味する。机上論には違いないが、会社として行うビジネスをゼロ以下に評価されているに等しい理屈となる。これは資本を投下している投資家の側からすれば、本来あってはいけない。市場関係者に言わせると「PBR1倍を大きく下回った状態から抜け出せない企業は、経営者が資本を活用する義務をネグレクトした状態、株主価値の毀損に無頓着で、いわば株主をなめ切っていると言われても仕方がない状態を続けていることになる」(ネット証券マーケットアナリスト)と手厳しい。ところが、現在プライム上場企業のほぼ半分がPBR1倍未満という状況にある。
昨年4月に東証は再編を行い、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再区分したわけだが、企業価値向上を主眼に置いた見た目には派手な再編も、実態的には何も変わらず、現時点で見る限りは“大山鳴動して鼠一匹”のようなところがある。このままの状態を、東証としても放置はできない。市場再編の改善点などを議論する「フォローアップ会議」において、今春をメドにPBRが継続的に1倍を割り込んでいる上場企業に対し、改善策及びその進捗状況について開示する要請案を明らかにしている。
こうなると山火事状態というべきか、特にプライム上場企業は鼠一匹チョロリなどという場面ではなくなった。東証の大号令によって、上場を維持するために本気でPBRを高める経営努力を行う必要に迫られるからだ。ただし、低PBR銘柄なら何でもよいということではない。財務状況との兼ね合いもある。例えば地銀株などは厳しい経営環境を余儀なくされている銘柄も少なくないわけで、今のような総花的な買われ方は、結果的にいくつかのアダ花を咲かせることにもなりかねない。あくまで個別に業績内容のしっかりとした「優良低PBR株」を物色対象として選別していく作業が求められる。
好実態の低PBR銘柄としては、旧財閥系で首都圏中心に倉庫を展開する安田倉庫<9324>が強いチャートで目を引く。このほかホンダ系自動車部品会社のエフテック<7212>、建設用クレーントップの加藤製作所<6390>、アルミ建材大手の三協立山<5932>やダイカスト大手のアーレスティ<5852>なども注目できる。また、きょうは低PBR銘柄のなかで、TBSホールディングス<9401>やフジ・メディア・ホールディングス<4676>などの民放大手の急伸が目立ったが、両社の増配や自社株買いなど株主還元に力を入れROEを高める経営戦略は、結果として低PBRの是正効果をもたらすため、投資資金の流入は理に適っているともいえる。
あすのスケジュールでは、1月の企業向けサービス価格指数、1月の全国スーパー売上高など。また、東証スタンダード市場にプライム・ストラテジー<5250>が新規上場する。海外ではニュージーランド中銀の政策金利発表、2月の独Ifo企業景況感指数、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月31日~2月1日開催分)などに注目。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年02月21日 18時18分
ただ、個別株の物色意欲は旺盛で、全体指数を眺めているだけではマーケットの風を感じることはできない。いうまでもなく低PBR銘柄が乱舞している。これまでPBRが際立って低い銘柄は割安という認識はあっても、だからといって上値を買い進む理由も見当たらず、そのまま触らずに放置されるケースが多かった。仮に株価が動意しても、経営に変革の兆しが見えない限り継続的に投資資金が流れ込むようなことはなく、線香花火のようにあっという間に火種が尽きる、9割方がそういうパターンであった。しかし、ここにきて低PBR銘柄の株高修正が有力な投資テーマとしてにわかに色を帯びている。
PBRが1倍を割り込む水準に放置されている銘柄は、端的に言えば会社の解散価値よりも低く評価されている。つまり現在行っている企業活動を全停止して会社を解散し、保有している純資産を現金化すれば、お釣りがくる状態にあることを意味する。机上論には違いないが、会社として行うビジネスをゼロ以下に評価されているに等しい理屈となる。これは資本を投下している投資家の側からすれば、本来あってはいけない。市場関係者に言わせると「PBR1倍を大きく下回った状態から抜け出せない企業は、経営者が資本を活用する義務をネグレクトした状態、株主価値の毀損に無頓着で、いわば株主をなめ切っていると言われても仕方がない状態を続けていることになる」(ネット証券マーケットアナリスト)と手厳しい。ところが、現在プライム上場企業のほぼ半分がPBR1倍未満という状況にある。
昨年4月に東証は再編を行い、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再区分したわけだが、企業価値向上を主眼に置いた見た目には派手な再編も、実態的には何も変わらず、現時点で見る限りは“大山鳴動して鼠一匹”のようなところがある。このままの状態を、東証としても放置はできない。市場再編の改善点などを議論する「フォローアップ会議」において、今春をメドにPBRが継続的に1倍を割り込んでいる上場企業に対し、改善策及びその進捗状況について開示する要請案を明らかにしている。
こうなると山火事状態というべきか、特にプライム上場企業は鼠一匹チョロリなどという場面ではなくなった。東証の大号令によって、上場を維持するために本気でPBRを高める経営努力を行う必要に迫られるからだ。ただし、低PBR銘柄なら何でもよいということではない。財務状況との兼ね合いもある。例えば地銀株などは厳しい経営環境を余儀なくされている銘柄も少なくないわけで、今のような総花的な買われ方は、結果的にいくつかのアダ花を咲かせることにもなりかねない。あくまで個別に業績内容のしっかりとした「優良低PBR株」を物色対象として選別していく作業が求められる。
好実態の低PBR銘柄としては、旧財閥系で首都圏中心に倉庫を展開する安田倉庫<9324>が強いチャートで目を引く。このほかホンダ系自動車部品会社のエフテック<7212>、建設用クレーントップの加藤製作所<6390>、アルミ建材大手の三協立山<5932>やダイカスト大手のアーレスティ<5852>なども注目できる。また、きょうは低PBR銘柄のなかで、TBSホールディングス<9401>やフジ・メディア・ホールディングス<4676>などの民放大手の急伸が目立ったが、両社の増配や自社株買いなど株主還元に力を入れROEを高める経営戦略は、結果として低PBRの是正効果をもたらすため、投資資金の流入は理に適っているともいえる。
あすのスケジュールでは、1月の企業向けサービス価格指数、1月の全国スーパー売上高など。また、東証スタンダード市場にプライム・ストラテジー<5250>が新規上場する。海外ではニュージーランド中銀の政策金利発表、2月の独Ifo企業景況感指数、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月31日~2月1日開催分)などに注目。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年02月21日 18時18分