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デジタル教科書が本格導入、「教育ICT」関連は更なる高み目指す <株探トップ特集>


―GIGAスクール構想は「利活用」の段階へ、市場規模は30年度に5.9倍の予測も―

 4月の新学期スタートを控えて、 デジタル教科書への関心が高まりつつある。文部科学省が2019年12月に打ち出した「GIGAスクール構想」では当初、段階的に全国の児童・生徒1人に1台のコンピューター端末の導入を進め、23年度中に達成するロードマップを掲げていたが、その後、新型コロナウイルス感染症の拡大によりオンライン学習導入が余儀なくされたことにより前倒しで進められることになり、21年春には小中学校で「1人1台」がほぼ実現した。

 いわばインフラが整ったことで、次に注目されるのは「利活用」だ。端末は普及したものの、現在はまだ本格的に利用されているとは言い難い状況にある。ただ、24年度からデジタル教科書が本格導入される予定であることから、教科書・教材のデジタル化を巡る動きも今後活発化しそうだ。

●英語からスタートし段階的に他の教科でも導入

 学習者用(児童・生徒用)デジタル教科書は、「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が19年4月に施行されたことにより制度化された。これまで使用されてきた紙の教科書を主たる教材として使用しながら、必要に応じて併用することができるようになっており、紙の教科書の内容を基本としながらも、文章や図表などを縮小・拡大することやペンやマーカー機能を使用した書き込みや保存などができるようになる。また、副読本であるデジタル教材と併用することで、声優などプロによる国語の朗読や教科書と連動した動画コンテンツの活用など、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ることが期待されている。

 文科省は昨年8月、デジタル教科書の導入について、24年度に小学5年生から中学3年生の「英語」で先行導入する方針を決定した。新しい学習指導要領に基づく小学校の検定教科書が改訂時期に当たることに合わせたもので、当面の間はデジタルと紙を併用しながら、その後、段階的に導入を進める方針だ。

●デジタル教科書の市場規模は急拡大

 既にデジタル教科書は実験的に導入が進められているが、GIGAスクール構想による「1人1台」が実現したことでその動きは加速しており、22年度には文科省が全国の小学5年生から中学3年生を対象に英語を中心とした学習者用デジタル教科書を無償提供した。ただ、全国の公立学校における整備率は22年3月時点で36.1%に過ぎない。今後、本格導入が始まることで整備率が上昇すると、関連する市場も一気に拡大が期待できる。

 富士キメラ総研(東京都中央区)が昨年11月に発表した「教育DX/ICT関連の国内市場を調査」によると、デジタル教科書の22年度の市場規模は105億円(前年度比23.5%増)の見込みで、30年度には21年度比5.9倍の500億円へ拡大が予測されている。

 また、デジタル教科書と併用して使用するデジタル教材を加えると、市場規模は4~5倍に拡大するとの見方もある。市場の拡大とともに、関連する企業のビジネスチャンスは拡大しそうだ。

●印刷大手はデジタル教科書でも活躍

 デジタル教科書の本格導入で恩恵を受けそうなのは、まずは凸版印刷 <7911> [東証P]、大日本印刷 <7912> [東証P]、共同印刷 <7914> [東証P]といった印刷大手だ。

 凸版はデジタル教科書に対応した学習プラットフォーム「Lentrance」を手掛けるLentrance(東京都千代田区)などと21年6月に大学向けデジタル教科書システムの導入及びコンテンツ開発・販売で協業を開始しているほか、大日印は20年12月、主要教科書会社5社のデジタル教科書のクラウド配信サービスに関して連携している。共同印ではコミックや雑誌、カタログ、書籍などで培ったデジタル技術を活用してデジタル教科書を制作するとしており、これら印刷大手がデジタル教科書でも活躍しそうだ。

●デジタル教材で先行する中堅・中小にも商機

 チエル <3933> [東証S]は、ハード、ソフトの両面から学校教育向けのICT利活用を支援している。特にGIGAスクール構想でシェアトップとなったChromebook向けの授業支援ツール「InterCLASS」シリーズは、Chromebook導入自治体の約4割で採用されており、同社の安定的な収益基盤の一つとなっている。2月14日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)決算は、連結営業利益は4億2100万円(前年同期比5.8%減)と減益だったが、情報基盤部門で前期に受注した大学における大規模なシステム構築案件の反動などが要因であることから、23年3月期通期は営業利益6億8000万円(前期比14.7%増)の従来見通しを据え置いている。

 すららネット <3998> [東証G]は、 eラーニング事業として学校、学習塾、BtoCの各マーケットに向けたサービスを提供しており、学校向けでは先生役のアニメーションキャラクターと一緒に、一人ひとりの理解度に合わせて進めることができる自立学習応援プログラム「すらら」などを展開している。2月3日に発表した22年12月期連結決算では、学校マーケットの売上高は9億6700万円(前の期比15.7%増)に拡大。今期もeラーニング事業の増収率(前期比7.1%増)を上回る同11.6%増の10億7900万円へ伸長する見込みだ。なお、会社全体の営業利益は、開発に伴う減価償却費と販管費人件費の増加などを見込むため3億9100万円(同17.7%減)と減益を計画している。

●デジタル教科書利活用のためのソフトにも注目

 また、「1人1台」は実現したものの、デジタル教科書の利活用を図るうえでのソフト面の整備も急がれており、それに関連する銘柄も多い。

 なかでも、学校ネットワークアクセス管理装置「NetSHAKER W-NAC」を手掛けるYE DIGITAL <2354> [東証S]、デジタルノートや辞書などICT教育に幅広く活用できる機能を一つに統合したICT学習アプリ「ClassPad.net」を展開するカシオ計算機 <6952> [東証P]、生徒による投稿や学校の評判を見守る学校向けネット監視サービス「スクールガーディアン」を展開するアディッシュ <7093> [東証G]に注目。更に、教科書・教材出版社向けに制作・配信・利用までをワンストップで提供する「みらいスクールプラットフォーム」を提供する富士ソフト <9749> [東証P]などにも好影響が期待できる。

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