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【特集】どう動く23年IPO、環境変化のなかセカンダリーの選別投資に妙味も <株探トップ特集>

市場の人気が高いIPO銘柄だが、足もとでは投資環境に変化が出ている。成長性や収益性を評価して上場後のセカンダリー市場で妙味株を狙うスタイルに投資機会が膨らんでいる。

―1~2月銘柄の出足は低調、初値上回る高値持続銘柄の継続人気に期待感―

 株式市場で高い人気を誇るIPO(新規上場)銘柄。今年は2月まででは予定を含め2社の上場にとどまり、出足は低調だ。ただ、2023年も昨年と同水準の新規上場銘柄が登場するとの期待は強い。22年の傾向を探ると初値の上昇率は以前に比べ低下する一方、着実な利益を出している大型株などの値動きの良さが目立った。金利上昇局面でのIPO銘柄の投資には、以前とは異なるスタイルも求められている。

●昨年は91社が登場、23年も同水準の上場観測も

 22年は91社のIPO銘柄が登場した。120社を超えた21年からは3割近く減少したが、20年以前とほぼ同水準を維持した。23年のIPOも「22年並みとなるのでは」(アナリスト)との予想が多く、90社前後を見込む声が多い。直近の昨年12月IPOの結果をみると、新規上場25社の初値の公開価格に対する平均上昇率は40%強。このうち、5社の初値は公開価格を割り込んでいる。初値が相次いで急騰する相場は過去のこととなり、公開価格割れも珍しくなくなっている。

●第1号銘柄「テクノロジー」の初値は3.7倍に

 そんななか、23年IPOの出足はいまのところ低調だ。1月の1社に続き、2月も1社の予定にとどまっている。昨年は1月のIPOはなかったが、2月は7社が上場した。今年のIPOの出足の鈍さに関しては、金利上昇懸念でベンチャー企業などの資金調達に逆風が吹いていることを指摘する見方もある。とは言え、3月以降のIPO銘柄登場に向けては挽回を期待する声が多い。

 1月26日にグロース市場に登場したテクノロジーズ <5248> [東証G]はITソリューション事業とSaaS事業を手掛け、23年最初のIPO人気にも乗り、上場2日目に公開価格の3.7倍で初値をつけた。2月は22日にプライム・ストラテジー <5250> [東証S]がスタンダード市場に上場する。同社はウェブサイトの閲覧環境を改善するシステムを手掛けている。公開価格から弾いた資金吸収額は15億円程度、時価総額も40億円台。「年初からIPOの登場は少ないだけに人気を集めそう」(市場関係者)との見方が出ている。

●23年は楽天銀行や住信SBIネット銀行などの登場に期待も

 23年の注目IPOに関しては、大型銘柄では昨年新規上場を申請した楽天グループ <4755> [東証P]傘下の楽天銀行や住信SBIネット銀行、レオス・キャピタルワークスなどの動向が関心を集めている。住信SBIネット銀行は昨年3月に新規上場する予定だったが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻で市場環境が悪化したこともあり上場を延期している。レオスも18年12月に上場する予定を延期した経緯がある。また、政府と東京都が株式を保有する東京地下鉄(東京メトロ)や、半導体大手のキオクシアホールディングスのIPOに向けた動きなども注目されている。

●プラスゼロやトリプラ、サンクゼール、BTMなど堅調

 IPO銘柄に関しては、初値がついた後のセカンダリー(流通)市場での上昇を狙う直近上場銘柄への関心が高まっている。IPO銘柄では初値で急伸した後、その後は鳴かず飛ばずとなる銘柄は少なくない。そんななか、上場後も株価が初値水準を上回って推移している銘柄は、その成長性を評価した投資家が継続的に買いを入れているとみることもでき、その動向が注目を集めている。

 昨年10月から12月までの期間に上場した39社のうち、13日時点の終値が初値水準を上回っているのは初値が不振だった名証銘柄を除くと10社強で全体の2割を上回る程度にとどまる。具体的には、10月では半導体関連でプライム市場へ直接上場したソシオネクスト <6526> [東証P]、それにAI(人工知能)とITを軸にソリューション事業を提供するpluszero <5132> [東証G]。11月は宿泊施設向けITサービス企業でAIチャットボットシステムなどを手掛けるtripla <5136> [東証G]が堅調に推移している。

 12月は産業廃棄物の処理など環境関連事業を手掛けプライム市場へ上場した大栄環境 <9336> [東証P]、生鮮流通プラットフォーム提供事業を展開するフーディソン <7114> [東証G]、ワーキングデータプラットフォーム事業を手掛けるオープンワーク <5139> [東証G]、メタバースプラットフォームの運営を行うmonoAI technology <5240> [東証G]、メディアプラットフォーム「note」を運営するnote <5243> [東証G]、「久世福商店」などを展開し食品製造販売を手掛けるサンクゼール <2937> [東証G]、地方人財を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進支援などを手掛けるBTM <5247> [東証G]、生体認証・画像解析などを活用したオンライン認証ソリューションを手掛けるELEMENTS <5246> [東証G]といった銘柄だ。

 上場後も人気を集める銘柄は、独自のビジネス展開を行っていたり利益面の成長が見込めたりする企業などが評価されている。これまでのIPOでは大型株は避けられがちだったが、プライム市場などへ直接上場する銘柄がセカンダリーで評価されていることも最近の特徴だ。

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