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1905 テノックス

東証S
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テノックス Research Memo(7):出遅れ感はあるが、中期経営計画の取り組みは着実に進行


■テノックス<1905>の中期経営計画

3. 中期経営計画の進捗
中期経営計画がスタートして1年半を経過したが、この間、コロナ禍の長期化に加え物流混乱や原材料高、円安、競争激化、一部工事遅延の発生などにより、想定外に事業環境が悪化した。このため、2022年3月期は業績が未達となり、2023年3月期も、中期経営計画で10億円と見ていた経常利益を5億円と予想するなど、経営数値目標に対して進捗は遅れている印象である。ただし、3つの基本戦略に沿った取り組みに関しては、以下で述べるように着実に進行している。また、想定外の事業環境も、コロナ禍は平常化が進み、原材料高などは価格転嫁などの対応が図られている。このため、後ろ倒しされていた案件の確保が、足元では着実に進んでいるところである。

(1) 営業領域の拡張
同社は技術力を背景に営業領域の拡張を進めている。2020年5月に販売を開始した浅層の地盤改良工法である浅層混合処理工法「TENO Q-be(テノキューブ)」に関して、2022年1月にタスクフォースを立ち上げて本格的な事業化に向けた取り組みを加速した。すでに8件受注しており、順次施工している(受注は今後も増える見込み)。現在はテノキューブの施工管理装置を製作中で、2023年度中の公的認証取得を目指している。公的認証を取得できれば、高品質の浅層混合処理工法としてテノキューブの拡販に弾みがつくだろう。また、同一区画でも支持層深度が異なることが多いため、浅層のテノキューブと深層のテノコラムの2つの工法で対応できるようになれば、設計事務所やゼネコンにとって利便性が高く、同社に基礎工事を任せるモチベーションになると考えられる。また、物流施設、データセンターといった大型建築物向けに、コンクリートパイルの高支持力杭工法の開発に着手した。鋼管杭と合わせたターゲット市場は2倍に膨らむ見通しで、今後の受注拡大につながることが予想される。同社が保有していない基礎工法への取り組みも含め、今後もシナジーが得られる営業領域へと拡張する方針である。

(2) 国土強靭化、リダンダンシープロジェクトへの貢献
北陸新幹線延伸工事での実績を背景に、国土強靭化やリダンダンシープロジェクトへの同社の参画が増えている。2021年に北海道新幹線の延伸事業の工事第1弾として「北海道新幹線、市渡高架橋他」の基礎杭工事を受注した。同社にとって今後の鉄道基礎工事の受注につながる重要案件という位置付けで、2022年8月よりガンテツパイル工法による杭施工を開始した。また、「大阪湾岸道路西伸部」「新名神高速道路」「大阪モノレール延伸」など関西インフラ強靭化プロジェクトの基礎杭工事を受注しており、順次施工に入ることになっている。近年頻発する豪雨災害に関しては、水処理施設・排水機場・ポンプ場など国土交通省が注力している施設の整備へ向けて、鋼管杭やコンクリート杭などを使用した設計提案を強化しており、「松浜雨水ポンプ場調整池」(新潟市北区)の基礎工事の施工を2022年10月に開始した。今後も、大阪モノレールの延伸や2025年開幕の大阪万国博覧会向け新アクセス関連工事、3年後にはリニア中央新幹線といった具合に、国土強靭化の案件はまだまだ出てくると思われる。そうした案件を確保するためにも、同社は工法の充実を図っているところである。

(3) そのほかの進捗・成果
これまでも基本戦略に従い、GTL燃料の導入や既存杭引抜き時の地盤改良技術の確立、二酸化炭素固定化技術の開発などを進め、一定の成果を得てきた。GTL燃料については、同社が基礎工事業界で初めて建設現場に導入した。GTL燃料は石油由来の軽油に代わるクリーンな燃料で、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量を約8.5%削減するほか、無色無臭で燃やしても煤が出にくく、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質を低減できる特徴がある。また、杭の撤去と同時に埋戻し処理された地盤の安定化を図ることを目的に、原地盤程度の強度に復旧・安定(埋め戻し地盤の緩みを防止)させる地盤改良技術の確立に取り組んでいる。強度を確保するため、産業副産物を用いた材料を活用することを検討しており、将来的に関東と関西を皮切りに事業展開することを考えている。日本コンクリート工業との業務及び資本提携では、コンクリートスラッジ由来の脱リン材「PAdeCS(パデックス)」製造時に二酸化炭素を封入して生成されるエコタンカルを、基礎工事の施工に使用するための研究開発を進めている。セメントの代わりに一部エコタンカルを使うことで、特別大きなコストをかけずに二酸化炭素を固定化できる。これは将来、基礎工事における「脱炭素」の流れをけん引する技術だと同社は考えている。

(4) ウェルビーイング経営
DX推進やESG推進の旗振り役として、2022年4月に経営戦略本部を立ち上げた。具体的な目的の1つが、心身ともに健康なウェルビーイング経営を推進することである。「働き方改革関連法」施行に伴って浮上した、労働時間の上限規制、正規・非正規社員の同一労働同一賃金、時間外割増賃金率引き上げといった建設業の「2024年問題」への対応にとどまらず、人口減少社会において重要な人的資本の確保や、従業員一人ひとりに対するメンタル・フィジカル両面からのケアサポートなどサステナビリティ経営の側面もある。直近では、空調服の採用など現場作業員の熱中症対策や健康診断項目の拡充、全従業員の健康診断受診を実施したほか、ストレスチェックの実施や社外カウンセリング窓口の設置、管理職層向けメンタルヘルス・ラインケア研修の実施、禁煙に対しては、禁煙啓発セミナーの実施や禁煙外来治療費補助、非喫煙手当・禁煙手当の支給などを行った。また、「産後パパ育休」の取得推進や長時間労働対策なども実施しており、今後もよりウェルビーイングを意識した経営に取り組む方針である。こうした健康経営への取り組みが評価され、2022年2月に全国健康保険協会東京支部より「健康優良企業 銀の認定」を取得した。

(5) ガバナンス
代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」を2022年9月に設置した。「リスク管理委員会」は、リスクの特定・把握・分析・評価・対応といった同社全体のリスク管理状況を統括する組織で、グループ全体のリスクに関する方針を策定するとともに、リスク発見時に適切な対応をとることができる実効的かつ持続的な組織の構築と運用を図ることで、経営の健全性を担保することを目的としている。一方、ダイバーシティとインクルージョン※に関しても、取り組みを強化している。2022年6月に同社初の女性社外取締役が就任し、2022年10月には同社で初めて圏央道の現場管理者(主任技術者)として、国家資格(土木施工管理技士)を持ったベトナム人社員を起用した。

※ダイバーシティとインクルージョン:国籍、性別、学歴などにとらわれず、インクルージョンが個々の従業員を生かす考え方で、ダイバーシティは人材の多様性を認める考え方。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《TY》

 提供:フィスコ

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