テリロジーHD Research Memo(8):2023年3月期2Q累計は赤字だが、売上高は順調に推移(1)
■業績動向
1. 2023年3月期第2四半期累計は一過性費用も影響して赤字だが売上高は順調に推移
テリロジーホールディングス<5133>の2023年3月期第2四半期累計の連結業績(上場廃止となったテリロジーの連結業績)は、売上高が前年同期比5.3%増の2,474百万円、営業利益が42百万円の赤字(前年同期は178百万円の黒字)となった。営業利益は、サブスクリプション型へのシフトに伴うイニシャル収入減少(特にネットワーク部門に影響)、急速な円安進行による海外製品仕入価格の上昇、事業拡大に向けた人的資本の増強などに加えて、資本業務提携や組織再編に伴う一過性の諸費用計上(資本業務提携に係る費用20百万円、譲渡制限付株式の精算など組織再編に伴う諸費用32百万円)も影響して減益(赤字化)だった。ただしセキュリティ需要の高まりを背景として売上面は概ね順調だった。なお受注高は同10.2%減の2,435百万円だが、受注残高はサブスクリプション型へのシフトの効果で同30.6%増の1,850百万円へと積み上がった。
2023年3月期第2四半期累計は営業赤字だったが、イニシャル収入減少は中期的にストック型ビジネスモデルへの転換を目的としており、資本業務提携や組織再編に伴う諸費用計上という一過性要因を除くオーガニックベースで見れば実質的に営業黒字だった。したがって第2四半期累計の赤字化は特に懸念される要因ではないと弊社では判断している。
2023年3月期第2四半期累計の事業部門別売上高は、ネットワーク部門が前年同期比9.6%減の640百万円、セキュリティ部門が同34.1%増の1,009百万円、モニタリング部門が同21.6%減の126百万円、ソリューションサービス部門が4.0%減の698百万円だった。
ネットワーク部門は、サブスクリプション型ビジネスモデルへのシフトに伴うイニシャル収入減少等で減収だった。ただし、国際的スポーツイベント以降も続くDDoS攻撃への対策や、テレワーク・在宅勤務によりひっ迫したVPN回線・WAN回線の負荷分散など、企業内ネットワークが抱える課題解決に向けて、DDoS対策サービス、WAN回線の負荷分散装置、Webアプリケーションの最適化等への「Radware」製品の受注は堅調に推移した。また、テレワークやフリーアドレス制の導入に伴う企業のWi-Fi利用拡大を背景に、セキュアなクラウド型無線LAN「Extreme Networks(旧Aerohive)」製品を採用したネットワーク構築案件の受注獲得を推進した。IPアドレス管理サーバー「Infoblox」製品については新モデルへのリプレース需要が一巡し、DNSセキュリティソリューションの提案に注力した。2023年3月期第2四半期累計はイニシャル収入減少を主因に減収となったが、サブスクリプション型ビジネスモデルへのシフトによって2024年3月期以降は利益率の高い安定収益源となることが見込まれる。
セキュリティ部門は、不正アクセスや標的型攻撃などサイバーセキュリティ攻撃に対する脅威が高まっていることも背景に大幅増収だった。電力系などの重要インフラや工場及びビル管理などの産業制御システム分野では、OT/IoTのセキュリティ対策に「Nozomi Networks」を採用した制御システム・セキュリティリスク分析案件の引き合いが増加した。また、既存システムやセキュリティツールのログ情報やSaaS・PaaSなどのクラウドサービスのログ情報を一元的に集めて相関付けることで、脅威をいち早く正確に捉えることができる「Sumologic」も増加した。サイバー犯罪・テロに関する情報を収集・分析するサイバースレットインテリジェンスサービス、サプライチェーンのリスクを可視化するサイバーリスク自動評価サービス「BitSight」の受注が堅調に推移し、ソフトウェアサプライチェーンリスクのサービスの立ち上がりも順調だった。さらに、犯罪に利用されるSNSをAIで分析し、犯罪グループ間の隠れた関係や裏アカウントなどを特定するサービスも本格展開を開始した。
モニタリング部門は、長年使用されてきたレガシーな製品のサポート終了に伴って、保守サービスの売上が減少したため減収だった。ただし、テレワーク・在宅勤務の急拡大に伴うネットワークの負荷やセキュリティリスクの高まりを背景に、テリロジーワークスのパケットキャプチャ新モデル「THXシリーズ」について、ネットワーク監視、セキュリティ対策、トラブルシューティング対応など新規案件獲得に注力した。また、テリロジーの運用監視クラウドサービス「CloudTriage」については、既存主要顧客向けを中心に受注獲得を推進している。利益率の高いテリロジー製品/サービスの拡販であり、今後の動向に注目しておきたい。
ソリューションサービス部門は全体としては小幅減収だが、主力プロダクトである「みえる通訳」(手話を含む多言語リアルタイム映像通訳サービス)はワクチン接種会場、官公庁・自治体、医療機関での利用が増加した。また、Zoomの新しい利用スタイルとして「みえる通訳」を組み合わせた需要が国際会議などで増加している。さらにコロナ禍に伴う入国制限が緩和され、インバウンド需要再開の本格化に向けて明るい兆しが見え始めている。クラウドPBX事業者や中小企業向けのネットワークサービスである「かんたん接続クラウドマネージドVPNサービス」は、簡便性と導入しやすい価格帯であることも評価されて引き合いが増加している。テリロジー開発RPAツール「EzAvater」は、誰でも簡単に使える特徴と認知度の高まりによって業界・業種・規模を問わず利用が拡大し、契約件数は堅調に推移している。なお、情報システム業務支援及び業務開発のクレシードと、訪日インバウンドメディアを活用したプロモーション事業のIGLOOOの受注活動は概ね計画水準で推移している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ