ドラフト Research Memo(4):デザイン力・企画力を強みに価格競争に巻き込まれにくい事業モデル(2)
■ドラフト<5070>の事業概要
b)プロダクトブランド「201°」
同社グループのデザインに調和しつつ、ABWといった新しい働き方に対応したオリジナルプロダクトの企画・販売を行っている。2017年に販売を開始したブランド名は、「201°」(NIHYAKU-ICHI-DO)。人の平均的な視野と言われる200度に1度の視点を加えることで、もっと自由な視点から物づくりをしたいという考えに基づく。簡単に集中スペースを創り出せるブースや、カジュアルな打ち合わせに最適なミーティングベンチを含む全18種類が発売されている。どんな空間にも馴染むベーシックな色合いと、素材の質感やディテールの繊細さが人気を集めている。
2018年に、米国を代表するデザイン雑誌『Interior Design』が主催する国際的なデザイン賞である「The Best of Year Award 2018」において、同ブランドの集中ブース「COOM」がContract Desk Categoryにおいて最優秀賞を受賞した。
c) 新ブランド「DAFT about DRAFT」
同社グループは、ファッションのように自由で繊細な発想で、長く人生を共にできるプロダクトを生み出す新しいブランド「DAFT about DRAFT」を2022年4月にローンチした。同社グループ代表取締役・デザイナー・建築家である山下泰樹氏がディレクターを務め、オリジナルデザインのファニチャーや海外からのセレクトブランド商品など、暮らしに彩りを添えるアイテムの数々を展開していく。ブランドネームの「DAFT about DRAFT」は、固定概念に囚われず自由でユーモアのあるデザインがしたいという想いを「…に熱中して、夢中で」という意味を持つ「daft about~」という言葉で表現している。同社グループでは、家具は衣服のように人を包み込み、人が持つ本来の良さを引き立てる器と捉えており、より人を中心としたプロダクトを生み出したいという想いが込められている。伊勢丹新宿店でのポップアップストアを経てローンチとしていたが、個人顧客からの反応は上々であり、既に一定の受注を確保している。2022年8月には東京・表参道にフラッグシップストアをグランドオープンさせ、自由に立ち寄ることができるストアと完全予約制サロンを設けている。フラッグシップストアの目的は大きく2つある。1つは、クライアントに実際に家具に触れてもらうことで、同社のプロジェクトへの使用につなげ、収益率の向上を図るためである。もう1つの目的は、表参道という好立地を生かし、一般顧客との接点を設けることでブランディングを強化し、知名度を高めることである。
d) 海外受賞
上記以外にも、ウォンテッドリーのオフィスが、米国の国際デザインアワード協会が主催する国際的なデザインアワード「IDA Design Award 2015」においてHonorable Mentionを受賞。また、同オフィスは、米Herman Millerが主催するアジア太平洋地域の優れたオフィスを表彰する「Liveable Office Award 2016」においてスモール&ミディアムビジネス部門の最優秀賞に輝いた。さらに、2017年には、NYで毎年開催されるデザイン分野を網羅するコンペティション「Spark Award」にて、同社グループが設計したディップ<2379>本社オフィスがブロンズ賞を受賞した。
(3) 商業施設
同社グループのプロジェクトでは、商業施設も海外Awardを受賞している。「IDA Design Award 2015」において、「EARTH coiffure beaute藤枝店」がHonorable Mentionを受賞した。同賞には、ウォンテッドリーオフィスと同時に、2つのプロジェクトが受賞したことになる。2016年にドイツで開催された建築・インテリアの世界大会「World Architecture Festival / INSIDE」のリテール部門には「Zoff MART自由が丘店」が入選した。
2022年3月には、京王電鉄<9008>とのパートナーシップにより、建築デザイン・インテリアデザイン・コンセプトワークを手掛けた下北沢駅の新エリア「ミカン下北」がオープンした。「下北沢は永遠に完成することのない未完成な街とした」というコンセプトのもと、京王井の頭線の高架下に5街区に分かれるエリアには、ラウンジを兼ねたTSUTAYA BOOKSTORE、予約資料の受け取りや返却が可能な図書館カウンター、古着屋や飲食店などといったテナント約20店舗が並ぶ。
(4) 都市計画・環境設計・その他
環境設計とは、オフィスビルディング、商業施設などのエントランス・ロビー・エレベーターホール・周辺植栽など共用スペース、または建物各階の共通デザインコンセプトの立案、設計及びデザインビルドなどの業務を指す。環境設計の良し悪しが当該建築物のブランドイメージを左右することとなる。都市計画は、街区開発やそれに関わる建築設計における基本コンセプトの立案、具体的デザインの制作、設計及び個別建物の内外装工事などの業務になる。
ここ数年、同社グループには建築デザインや複合施設の環境設計など「街のランドマークとなる建築物をデザインしてほしい」というような依頼が増えている。東京都心は言うに及ばず、名古屋や福岡などの主要都市、スマートシティ構想の中心地である千葉県・柏の葉などの多彩なプロジェクトに関わっている。同社グループでは、「次世代に必要な都市とはなにか」を問い直し、デベロッパーと協業した新しい都市の価値提案をしている。
同社グループの先進的な取り組みが業界で認知され、不動産大手の三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、東急不動産(株)(東急不動産ホールディングス<3289>の子会社)、東京建物<8804>など大手デベロッパーとの協働に発展している。
国土交通省のプロジェクトである柏の葉スマートシティのオフィスビル「KOIL TERRACE」では、同社グループは環境設計を請け負った。壁一面を本棚にしたアトリウムを一般開放し、利用者が減る土日祝日には地域の人々の憩いとなる空間をデザインしている。常識に囚われない、変化と成長を続ける同社グループならではの発想とデザインとなる。東京駅周辺の開発プロジェクトでは、2020年に完成した「丸の内テラス」の中心施設の企画立案から内装設計までを手掛けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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提供:フィスコ