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【特集】坪田ラボ Research Memo(2):近視進行抑制等の研究開発と商業化を目的に設立された大学発バイオベンチャー

坪田ラボ <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

1. 会社沿革
坪田ラボ<4890>は2012年に、慶應義塾大学医学部眼科学教室の教授であった代表取締役の坪田 一男(つぼた かずお)氏によって設立された(株)ドライアイKTが前身となる(2015年2月に現在の商号に変更)。坪田氏は、定年を迎えるまでに何か世の中の役に立つ仕事がしたいとの想いを持ち、医療機器や医薬品の輸入超過が進むなか、これら領域の輸入超過問題を解消するために、自身が長く研究に携わってきた眼科領域のサイエンスを商業化につなげるべく、起業を決断した。また当時、国内の大学では研究は行うものの、その成果を社会に役立てられるようなイノベーションを起こす大学が少なく、自身が先頭に立って大学発ベンチャーの成功モデルとなることで、その道筋を切り開くとの想いで創業来、事業活動を進めてきた。

現在の主力開発パイプラインであるバイオレット光を用いた近視進行抑制デバイスを着想したのは2014年頃で、きっかけはIOL(人工眼内レンズ)手術後に視力が低下する患者と維持する患者に分かれ、その差が眼内レンズの違い(バイオレット光を透過するレンズと遮断するレンズ)によるものとの仮説を立てたことから始まる。最初にヒヨコを使って研究し、その後近視モデルマウスを使って研究を進めた結果、仮説どおりの結果を得られたほか、近視進行抑制の作用機序も解明した。具体的には、360ナノメートル~400ナノメートルのバイオレット光を照射することで、網膜内層にある非視覚型光受容タンパク質「OPN5」が活性化し、血流改善により脈絡膜厚を維持することで、近視進行を抑制する作用を解明した(血流不足となると脈絡膜厚が菲薄化し近視進行要因となる)。バイオレット光は太陽光のなかに含まれているため、屋外活動の減少に起因するバイオレット光不足が近年の近視有病率の急激な上昇の一因になっているとも言える。

坪田氏は同研究の成果を論文として学術専門誌で発表するとともに、国内外で特許出願を進めるなど知財戦略も強化していった。また、「OPN5」の活性化により眼の血流が改善するのであれば、脳の血流についても改善する効果があることを予見し、うつ病やパーキンソン病、認知症などを対象に研究を進めていった。動物実験で得られた結果を基に、2019年3月に大日本住友製薬(株)(現 FrontoAct)とバイオレット光を用いたうつ病及び認知症に関する共同研究契約を締結した(TLG-005)。また、近視進行抑制デバイス(TLG-001)についても同年5月にジンズホールディングスと実施許諾契約を締結し、共同開発を進めている。その後も、2020年10月にロート製薬と近視抑制点眼薬(TLM-003)に関する実施許諾契約を締結し、共同開発を開始したほか、2021年4月にはマルホ(株)とマイボーム腺機能不全の処置剤に関する国内及び米国、フランス、英国、ドイツ等への実施許諾契約を締結した(TLM-001)。海外企業とも2022年12月にフランスのLaboratoires TheaとTLM-003の米欧等を対象とした独占実施許諾契約を締結するなど、積極的にライセンス活動を展開している。

なお、同社は2022年6月で東証グロース市場に上場している。2024年3月末の従業員数は7名(研究開発4名、事業開発2名、管理本部1名)と前期末比で3名減となったが、同年6月時点では新たな社員を採用し、10名程度となっている。なお、研究開発については大半を外部委託しており、2024年4月時点の外部委託も含めた研究人員は38名となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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