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【特集】プラチナは軟調、米利下げ見通しも景気減速懸念で戻りを売られる <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、7月の米雇用統計が予想以下となり景気減速懸念が高まったことを受けて急落したが、市場に安心感が戻ると米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しを受けて押し目を買われ980ドル台まで戻した。その後、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを織り込むと利食い売りなどが出て上げ一服となった。中国や米国の景気減速懸念が高まり、手じまい売りなどが出て4月末以来の安値899ドル台をつけた。

 パウエル米FRB議長は8月23日のジャクソンホール会議の講演で、インフレが目標である2%に向かいつつあるなか、政策を調整する「時期が来た」と述べた。21日に発表された米雇用統計の算出基準改定で、3月時点の非農業部門の就業者数が81万8000人下方改定された。月平均の就業者数は24万2000人増から17万4000人増に下方改定。米FRB議長は雇用の下振れリスクが高まったことを指摘した。

 また、8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比14万2000人増となり、事前予想の16万人増を下回った。前月の非農業部門雇用者数は11万4000人増から8万9000人増に下方改定され、6~7月分の雇用者数は計8万6000人減少した。失業率は4.2%となり、前月の4.3%から小幅低下。景気減速懸念から市場では株安に振れた。ただ、米経済のソフトランデイング(軟着陸)の見方も強く、米FRBによる大幅な利下げ観測は後退した。

 目先は今夜発表される8月の米消費者物価指数(CPI)でインフレに対する見方を確認したい。事前予想は前年比2.6%上昇(前月2.9%上昇)に伸びが鈍化する見通しである。17~18日の米FOMCでは25ベーシスポイント(bp)利下げが見込まれており、利下げ開始が発表されればプラチナの下支え要因になるとみられる。

●中国の不動産不況の長期化見通しは上値を抑える要因

 不動産調査会社の中国房産信息集団(CRIC)の暫定データで、8月の不動産開発上位100社の契約販売総額は前年比26.8%減の2510億元となり、前月の19.7%減から減少率が拡大した。販売不振が深刻化したことで中国の不動産不況が長期化するとの懸念が高まった。中国は最大5兆3000億ドルの住宅ローンの金利引き下げを検討しており、今後発表される政策と見通しを確認したい。

 一方、カナダのトルドー首相は8月26日、中国から輸入する電気自動車(EV)に対して100%の関税を課すと発表した。米国や欧州連合(EU)の動きに追随した。中国製の鉄鋼とアルミニウムについても25%の関税を課す方針を示した。また、オランダ政府は同国の半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング<ASML>が中国で行う半導体装置の修理やメンテナンスを制限する計画である。中国におけるサービス提供に関するASMLの一部ライセンスが今年末に失効した後、更新しない可能性が高いという。今回の一段安の場面では上海プラチナの出来高が急増し、中国勢の安値拾いの買いが入ったが、中国経済の先行き懸念が残れば、戻り場面で中国勢は買いを見送ることになりそうだ。

●NY市場の大口投機家の買い越しは3月以来の低水準

 プラチナETF(上場投信)残高は9日の米国で31.89トン(7月末31.78トン)、5日の英国で21.35トン(同24.82トン)、6日の南アフリカで11.24トン(同11.36トン)となった。米国で安値拾いの買いが入ったが、英国と南アで投資資金が流出し、合計で3.52トン減少した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月3日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1388枚(前週1万5733枚)に縮小し、売り越しとなった3月5日以来の低水準となった。景気減速懸念を受けて売り玉が4万0536枚(同2万7218枚)に急増した。ただ欧米の利下げが見込まれており、買い戻す動きが出るとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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