【特集】日産東HD Research Memo(7):さらなる成長と収益力の強化に向けて行動を起こした
日産東HD <日足> 「株探」多機能チャートより
■業績動向
3. トピックス
2024年3月期のコーポレートアクションとしてのトピックスは、スタンダード市場への移行と東京日産コンピュータシステムの全株式譲渡である。2023年10月に日産東京販売ホールディングス<8291>はスタンダード市場へ移行した。経営資源を中期経営計画に集中し、さらなる成長と収益力の強化に注力することが目的で、中長期的な企業価値の向上を目指したアクションといえる。東京日産コンピュータシステムは2023年10月2日に連結除外となったが、前述したように、同社が持続的に成長するため経営資源を自動車関連事業に集中するとともに、東京日産コンピュータシステムも譲渡先のキヤノンマーケティングジャパンとのシナジーにより一段と成長していくことを目的としている。このほか、地域社会への貢献に関するトピックスとして、能登半島地震への復興支援や交通遺児育英会への寄付、「社会貢献推進プロジェクト」を行った。
売上高は保守的な印象だが、コストをしっかり使う方針
4. 2025年3月期の業績見通し
同社は2025年3月期の業績見通しに関して、売上高150,000百万円(前期比0.7%増)、営業利益7,500百万円(同13.9%減)、経常利益7,000百万円(同16.3%増)、親会社に帰属する当期純利益4,500百万円(同38.7%減)と見込んでいる。引き続き持続的成長のための人的資本の充実や顧客利便性向上のための店舗投資など中期経営計画の取り組みを着実に推進することで、事業の成長を図るとともに企業価値の向上に努める考えである。
新車登録販売台数については、引き続き電動車を中心とした販売を軸とするが、納車が正常化したことから27,000台(前期比2.6%増)程度と想定している。一方、販売単価については、電動車が出揃ったことで価格帯がいったん落ち着くため車種ミックスによる上昇を見ていないようだ。また、日産自動車の戦略によればインパクトのある新型車の投入を見込めないうえ、東京日産コンピュータシステムの半期分の業績をカバーする必要があるため、慎重な見方になっているようだ。ほかにも、車両供給の正常化に伴って受注再開したEVのフラッグシップカーであるアリアの通年寄与、注目度が増しているため前期と同等以上の増加が期待できる個人リースなどを考えると、売上高はやや保守的な印象がある。加えて、EVの補助金の条件で満額評価を受けていること、東伏見店(2024年4月竣工)を含め新築・改装4店舗の竣工が予定されていること、世界第2位のEVメーカーである中国BYDの日本参入によりEVに注目が集まること、高評価の電動車の充実のラインナップを引き続き提案型営業で訴求していくことなど、売上高の押し上げ要因は多い。中古車と整備は微増収を見込んでいるが、中古車は中古車個人リースが順調に立ち上がっていること、整備は「車検館」が効率化を一層推進して入庫台数を増やそうとしていることから、これらの売上高も保守的な印象がある。
一方、コスト面では、日本経済も車両不足も正常化するなか、物価上昇に加え、持続的成長のための人的資本や店舗、働く環境整備などへの投資強化よる増加を想定している。人的資本については、人財確保に向けて新卒や中途採用を増やすほか、働き方改革や教育などに積極的に投資していく方針である。店舗では、より多くの先進装備を顧客に体験してもらうため、電動車の試乗車を最新のものへ入れ替える投資を行う予定である。また、電動化・安全/運転支援技術に対応するため、測定機器など最新鋭の整備機器を導入することも計画している。このため、3販社統合の効果が漸減傾向となるなか、ややコストプッシュな1年となる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《HN》
提供:フィスコ