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【特集】SIGG Research Memo(1):「社会を変革するITイノベータ」を目指す独立系のシステムインテグレーター

SIGG <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

SIGグループ<4386>は「社会を変革するITイノベータ」を目指す独立系システムインテグレーターである。長期ビジョンの「ありたい姿」として、企業のビジネス変革(DX:Digital Transformation)を支援し、企業の外部CIO(Chief Information Officer=情報システム責任者)として、企業成長に貢献するITトータルソリューションカンパニーを掲げている。

1. システム開発事業とインフラ・セキュリティサービス事業を展開
システム開発事業(システム企画提案・開発・構築・運用までの総合的なサービスを提供)と、インフラ・セキュリティサービス事業(ITインフラソリューションとセキュリティサービスを一元的に提供)を展開し、M&Aも積極活用して業容を拡大している。売上高構成比はシステム開発事業が8割弱、インフラ・セキュリティサービス事業が2割強で推移している。同社の顧客は大手企業が中心で、システム開発事業では地方自治体や電力会社などへの基幹システム系の導入実績が多数あり、創業以来30年以上の積み重ねで幅広い業種・業態の導入ノウハウを蓄積している。顧客のシステムニーズに応える技術と実績をベースに、DX対応を含めて、幅広い業種・業態にソリューション提供できることを強みとしている。また同社はAmazon Web Services(以下、AWS)が提供するAWS Partner Network(以下、APN)において「AWS アドバンストティアサービスパートナー」に認定されており、AWSの新規システム構築だけでなく、オンプレミスからAWSへの移行、既存AWSシステムのコスト最適化やセキュリティ強化などを、ワンストップでサービス提供できることも強みとしている。

2. 2024年3月期は減益も、営業利益と純利益は計画を上回る水準で着地
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比27.5%増の6,906百万円、営業利益が同9.2%減の355百万円、経常利益が同21.9%減の357百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同20.7%減の239百万円だった。大幅増収だが先行投資による販管費の増加などで減益となった。なお期初計画に対しては売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益が計画を上回る水準で着地した。売上面は各事業とも大幅伸長(システム開発事業が同30.2%増の5,202百万円、インフラ・セキュリティサービス事業が同19.7%増の1,704百万円)した。受注が好調に推移したことに加え、(株)アクト・インフォメーション・サービスの新規連結、地方拠点要員との連携強化による体制拡充効果なども寄与した。営業利益はシステム開発事業の(株)Y.C.O.における不採算案件発生、案件増加に伴う外注費の増加、先行投資や人事評価制度改正による人件費の増加、M&Aに伴うのれん償却額の増加、管理コストの増加、労働環境改善のためのオフィス増床・レイアウト変更の一時的費用などの影響により減益だった。なお、のれん償却額などを考慮したEBITDA(=営業利益+のれん償却額+減価償却費)は同8.2%増の481百万円だった。

3. 2025年3月期は大幅増収増益と大幅増配を予想
2025年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比15.8%増の8,000百万円、営業利益が同18.1%増の420百万円、経常利益が同23.2%増の440百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.0%増の280百万円としている。大幅な増収増益予想である。売上面はシステム開発事業が同7.6%増の5,600百万円、インフラ・セキュリティサービス事業が同40.4%増の2,400百万円の計画としている。引き続き公共分野やエネルギー分野、さらにクラウド・セキュリティ領域を中心に需要が高水準に推移し、インフラ・セキュリティサービス事業ではユー・アイ・ソリューションズ(株)を新規連結することも寄与する。利益面は人件費の増加、M&Aに伴うのれん償却額の増加、管理コストの増加が継続するほか、Y.C.O.における不採算案件の影響(2025年3月期中に収束の見込み)も考慮しているが、増収効果で吸収する見込みだ。なお、のれん償却額などを考慮したEBITDAは同13.9%増の548百万円の計画としている。また2025年3月期より配当方針を変更し、大幅増配(前期比10.00円増配の24.00円)予想としている。なお半期別に見ると下期偏重の計画としている。下期に向けて受注単価改善やグループシナジー創出などの効果が進展することも期待され、会社予想に上振れの可能性があると弊社では考えている。

4. 成長戦略の第2フェーズは営業利益重視に変更
同社は長期ビジョン達成に向けたロードマップとして、2024年3月期までを大量のDX案件に対応できる体制構築を目指す第1フェーズ、2027年3月期までをITトータルソリューションカンパニーへの飛躍を目指す第2フェーズ、そして2030年3月期までを企業の外部CIOとして企業成長に貢献することを目指す第3フェーズと位置付けている。第1フェーズについては売上高が目標を達成したが、営業利益と営業利益率が目標未達となった。このため第2フェーズと第3フェーズについては、グループシナジーの創出遅れなど第1フェーズにおける課題を踏まえ、売上高目標値を下方修正して営業利益重視の方針に変更した。基本方針に大きな変更はなく、新事業領域・新技術の取り込みを可能とするM&Aも引き続き積極推進するものの、従来計画に比べて売上規模の拡大ペースを落とし、グループシナジー創出やサステナビリティ経営の実現により企業価値の最大化を目指す。そして、第2フェーズの新たな目標値として最終年度2027年3月期の売上高12,000百万円(既存子会社で9,000百万円、新規M&Aで3,000百万円)、営業利益720百万円、営業利益率6.0%、株主資本配当率(DOE)6.0%を、第3フェーズの新たな目標値として最終年度2030年3月期の売上高20,000百万円(既存子会社で12,000百万円、新規M&Aで8,000百万円)、営業利益1,400百万円を掲げた。なお2025年3月期より配当方針を変更し、「株主資本配当率(DOE)6.0%を目安として、安定した配当を継続して実施すること」を基本方針とした。

5. 独自のポジション確立や株主還元策の強化を評価、「営業利益重視」の方針の進捗に注目
同社はシステム開発・情報サービス産業において、公共分野(政令指定都市向け人事給与システム、共済・年金システム、国民健康保険に関するシステム開発など)やエネルギー分野(送配電事業者の受付・託送システムの開発支援・保守など)といった分野に強みを持ち、独自のポジションを確立している。この点を弊社では高く評価している。また成長戦略において従来の長期ビジョンの売上高目標数値にはやや過大感があったが、第1フェーズにおける課題を踏まえて営業利益重視の方針に変更したことも評価できる。さらに配当方針を変更して株主還元策を強化したことも評価するべきだろう。今後はグループシナジー創出などによって利益率を持続的に高めることが課題となるが、市況環境は良好であり、営業利益重視方針の進捗状況に注目したいと考えている。

■Key Points
・独立系のシステムインテグレーターで、幅広い業種・業態にソリューションを提供できることが強み
・2024年3月期は減益も、営業利益と純利益は計画を上回る水準で着地
・2025年3月期は大幅増収増益と大幅増配を予想
・成長戦略の第2フェーズは営業利益重視に変更
・独自のポジション確立や株主還元策の強化を評価、「営業利益重視」の方針の進捗に注目

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《HH》

 提供:フィスコ

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