【市況】明日の株式相場に向けて=75日線下抜けは逆に買いの好機到来
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
前日の米国株市場でNYダウが何とか下げ止まったことで、それを好感する形できょうは日経平均が高く始まったが、強気ムードも束の間、ほぼ寄り付き天井であっという間に値を消しマイナス圏に沈んだ。そして、後場は先物主導でつるべ落としの下げ。絵に描いたような安値引けとなり「寄り天・安値引けの大幅安かつフシ目の3万8000円大台割れ」という“全部乗せ”状態で下げトレンド転換を意識させる大荒れの地合いとなった。
日経平均は75日移動平均線に急接近しており、NYダウに追随する形でこの中期波動の分水嶺を下回ることになるのかどうか、テクニカル的にも正念場といえる。しかし、正念場というのは見方を変えればチャンスの到来でもある。同移動平均線を下回ったら、ただちに中長期下降トレンド入りかといえば必ずしもそういうことではない。75日線を下抜けたことで、これまで辛抱していた向きの投げを誘発し一段下げとなり、シコリ玉が解消されてそこが底入れ反転の契機となるケースも実は多い。
個別株戦略において日経平均にこだわる必要はないが、仮に同じ軌道を描くNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>、いわゆる日経レバを投資対象として考えた場合、どういうスタンスをとるべきか。ネガティブ材料を挙げたらキリがなく前方視界を遮るものは多いが、結論を言ってしまえば、敢えて外部環境に目をつぶって買い向かって良い頃合いといえる。「今が買い場かどうかは神のみぞ知るところだが、キャッシュポジションを高く維持している状態なら3万8000円割れは参戦する一手」(中堅証券ストラテジスト)という強気の声もある。一か八かではなく、最初から75日線を下抜けることを念頭に置いたうえで資金に余裕をもたせて段階的に買い下がるイメージで臨めば、大きな痛手は被らない。「75日線割れから投げ売り噴出による一段安」までを想定に入れて対処するなら、機は熟したといえる。
今は日米の金利上昇が再び懸念材料として株式市場に覆いかぶさっている。米国では前日にパウエルFRB議長が明確にタカ派寄りのコメントを発して早期利下げ期待を牽制、想定されたとはいえ金利を高目誘導し、米10年債利回りは4.6%台後半まで水準を切り上げた。米国では利下げのタイミングが後ろ倒しとなることをマーケットが警戒しているが、そうしたなかパウエル発言は「6月の利下げは見送り確定」を一段と印象づけた。
一方、日本では日銀の利上げが当初想定より前倒しになることを気にしている。植田日銀総裁は利上げに向けたアドバルーンと思しき発言を繰り返しているが、「次回4月25~26日の日銀金融政策決定会合で植田総裁は利上げの可能性に言及する可能性がある」(ネット証券アナリスト)とする。その場合は利上げ決定が最短で次々回6月13~14日開催の決定会合となる。今は、この日米の金融政策との距離感を足もとでマーケットがどう織り込んでいくかという段階にある。ただ、これから本格化する日米の企業決算発表は弱い内容とはなりにくい。日本の場合、期初見通しは慎重に出す傾向が強いが、業態にもよるが目先の円安進行を織り込んでいない以上、最初から増額修正の伸びしろを内在させている有利さがある。きょうはオランダのASML<ASML>の1~3月期決算発表が、市場予想に届かなかったことで、半導体関連の下げを加速させる背景となったが、ここは主力どころを中心に買い場となっている銘柄も多い印象。あすのTSMC<TSM>の決算が仮にコンセンサス未達でダメ押しの下げがあれば、そこはレーザーテック<6920>やソシオネクスト<6526>などをはじめ中期スタンスで絶好の拾い場提供となる可能性がある。
あすのスケジュールでは、2月の第3次産業活動指数、3月の首都圏マンション販売など。なお、午前中に1年物国庫短期証券の入札が予定。海外では、週間の米新規失業保険申請件数、4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、3月の米中古住宅販売件数、3月の米景気先行指標総合指数など。海外主要企業の決算発表では、TSMC<TSM>とネットフリックス<NFLX>の1~3月期決算の内容にマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS