【市況】【植木靖男の相場展望】 ─いずれ本格バブル相場へ移行か
株式評論家 植木靖男
「いずれ本格バブル相場へ移行か」
●上昇“後半戦”入りを告げる鐘の音は?
日経平均株価が待望の1989年史上最高値3万8957円を突破し、市場関係者は沸き立った。となれば、次の目標は4万円となる。だが、足もとはこの大台を前に一進一退のもみ合いとなっている。
ただ、冷静に考えれば、4万円突破を巡る議論にはあまり意味がない。そして、いま市場で交わされているもう一つの「バブルではないか」との議論、これもあまり意味はないとみる。バブル(泡)は弾けて初めてバブルと判断するものであり、弾けていない以上、バブルとはいえない。
一方で、いまの市場を巡る経済環境は正常であって、平成バブルの時とは異なると指摘するエコノミストが多い。これにも筆者は違和感を覚える。当時も上昇して1~2年は今回と同じように、市場環境に異変はなく、通常の上昇相場と変わりはなかった。
一言でバブル相場と称されるが、振り返ればバブル相場に転化したのは、後半戦からの相場だ。すなわち、当時その途次にブラックマンデーが起きた。NYダウが23%急落した翌日、日経平均株価は1日で3800円超も下げる。いまの水準でいえば1日に5000~6000円も下げたのだ。
ここまでが前半戦。そして、その後、数カ月で切り返し後半戦に突入した。ここからの上昇はまさに理屈抜きで上がるから買う、買うから上がるというまさにバブル相場が展開された。現日銀総裁の植田氏が「この上昇相場は理解できない」と日本経済新聞の取材に答えたのは1989年6月。つまり後半戦の、しかも最終局面に入ってからだ。
いまの状況は大勢観からすればまだ前半戦であり、今後、前半戦が終わり、後半戦に入ってから本格的なバブル相場がスタートするとみてよいのだ。
では、現在の前半戦はいつ終了するのか。人それぞれ考えは違うが、市場関係者の多くはきっかけとなる材料があるとみている。それは好材料であったり、懸念材料であったり、どちらでも構わない。市場が決めることだ。多くのエコノミストは金融政策の修正時ではないかと考えているようだ。だとすると、3月か4月か。しっかり見極めたい。
ところで、この前半戦はどうして起きているのか。主要な要因に半導体市場の底入れがあるとみている投資家は多いが、いまは世界的な株価上昇なのだ。半導体というより世界的なカネ余りが背景にあるからだ。米国も、日本も、欧州もカネ余りである。いずれも財政過多であり、その裏には世界各地での戦争・紛争があり、各国は地政学的リスクの高まりに備えて防衛費を拡大している。なぜ、三菱重工業 <7011> [東証P]が騰勢をみせているかが理解できよう。
●主役は半導体関連、脇役は大型バリュー株
物色対象だが、前半戦が終わるまでは 半導体関連株が主流であるとみてよさそうだ。もっとも、早くも半導体関連株のほかにバリュー株、つまり金融、機械、鉄鋼株がちらちら目の前をよぎるようになった。主役は半導体関連、脇役はバリュー株という構図である。ここはしっかりと峻別することが肝心だ。
仮に近々、調整に入るとすれば、そのときは中期的に防衛関連や 機械、金融、 鉄鋼などバリューの大型株の安値を拾いたい。具体的には日本製鉄 <5401> [東証P]、三菱重工業、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などだ。
また、当面は勢いのあるセクターのなかで出遅れ感の強い銘柄、たとえば自動車関連ではブリヂストン <5108> [東証P]、機械では三菱化工機 <6331> [東証P]、インバウンドでは近鉄グループホールディングス <9041> [東証P]などがおもしろそうだ。
そして、こうしたなかで、いま日本銀行 <8301> [東証]が急騰している。なにを語っているのか、見極めたい。
2024年2月29日 記
株探ニュース