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【特集】いざスポットライト当たる舞台へ、成長力内包する「隠れ半導体株」 <株探トップ特集>

半導体関連株に依然として高水準の人気が集まっている。物色の流れは大型株から中小型株、そして「隠れ半導体銘柄」へと広がりをみせていくことだろう。

―補聴器や原発、ライドシェア、ゴルフ用品、陶磁器など、意外な半導体関連株を徹底マーク―

  半導体に投資家の熱い視線が注がれ続けている。コロナ禍を機に加速するデジタル化の流れや人工知能(AI)をはじめとする先端技術の発展により、中長期的に需要が増加するとの見方がもはや既定路線として市場コンセンサスを得ているためだ。エネルギーや食料と並び経済安全保障上の戦略物資となった半導体に対しては各国政府がこぞって生産体制の強化を打ち出しており、関連企業には強い追い風が吹いている。半導体関連株には今後も投資資金が根強く流入し、半導体に少しでも絡んでいる銘柄にも物色が波及することだろう。

●象徴銘柄とは

 日経平均株価は今月9日、これまで度々トライしながらもはね返されてきた昨年7月高値(3万3753円)をついに終値で上回った。その後上げ足を速め3万4000円、3万5000円と節目を次々突破し、15日には3万6000円台乗せを達成した。株高の原動力となったのは東京証券取引所の市場改革や新NISA開始などが挙げられるが、なかでも注目は半導体関連株の上昇だ。米ハイテク株高の流れを受け、東京エレクトロン <8035> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]、ディスコ <6146> [東証P]、SCREENホールディングス <7735> [東証P]は青空圏をまい進。信越化学工業 <4063> [東証P]やレーザーテック <6920> [東証P]も上場来高値圏で堅調な値動きを続けており、これら値がさ半導体株が全体相場を強く押し上げる格好となった。

 スマートフォンや家電、車などあらゆる製品に搭載され、加速するデジタル化にも欠かせない“産業のコメ”半導体は将来の更なる需要増が確実視され、株式市場では不動の人気テーマとして継続的に関心を集めている。関連銘柄は材料から部品、製造装置に至るまで幅広く、物色の流れは前述した主力大型株から中小型株へと大きく広がりをみせている。こうしたなか、半導体事業を主力とはしていないものの、本業で培った技術やノウハウを生かし半導体業界に向けても事業を展開している「隠れ半導体銘柄」を探す動きもある。

 隠れ半導体の象徴的な存在となっているのが味の素 <2802> [東証P]だ。言わずと知れた大手調味料メーカーだが、エレクトロニクス分野にも展開しており、うま味調味料の副産物を使って開発した半導体絶縁材料「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」はパソコンのCPU向けでほぼ100%のシェアを有する。もちろん本業の調味料事業も好調だ。24年3月期連結純利益は前期に続き過去最高益の予想。株価も2022年に1987年高値を上抜け、過去最高値圏での推移が続いている。

●隠れ半導体の中小型8銘柄

 こうした味の素のような銘柄は株式市場にまだ数多く存在する。今回は隠れ半導体銘柄のなかから個人投資家好みの中小型株を8銘柄ラインアップした。いずれも本業で高い存在感を示す企業ばかりだ。

 リオン <6823> [東証P]は 補聴器の国内大手。空気中や液体の中にある微粒子の数を測定する「パーティクルカウンタ」を手掛けており、半導体工場のクリーンルームや半導体用薬品の品質管理に用いられている。同測定器をはじめとする微粒子計測器事業は売上高全体の約3割近く(23年3月期)にのぼり、補聴器を含む医療機器事業(約5割)に次ぐ柱だ。営業利益ベースで上期の対通期進捗率は5割超と順調。1月30日に決算発表予定。

 助川電気工業 <7711> [東証S]は温度測定・加熱製品メーカー。原発関連株として注目されることが多いが、事業別の売上高比率(23年9月期)をみると半導体製造装置など製造業向け製品を販売する産業システム関連事業が全体の約6割を占め、発電所向けのエネルギー関連事業は4割弱となっている。前23年9月期は両事業とも好調に推移し、最終最高益を記録。今期は小幅減益見通しながら、配当は前期比増額を計画している。

 FIG <4392> [東証P]はバス・タクシー事業者向けシステムを提供するモバイルクリエイトと、半導体・自動車関連製造装置のREALIZE(リアライズ、旧石井工作研究所)が経営統合し、18年に発足した持ち株会社。タクシー配車システムを手掛けていることから、最近ではライドシェア関連の一角として関心が高まった。ドローンや自律搬送ロボット、決済システムなどさまざまな事業を展開しており、物色の切り口は多彩だ。

 南海化学 <4040> [東証S]はあらゆる製品の基礎原料となるカセイソーダ、殺菌・消毒に使われる次亜塩素酸ソーダを製造する基礎化学品のパイオニア企業。昨年4月に東証スタンダードに新規上場した。注力事業として取り組む硫酸リサイクル事業が注目で、製造業から出る廃硫酸を引き取り、精製して再び販売している。同社はこの分野でトップクラスのシェアを保持。今後、半導体企業をターゲットに同事業を拡大させる方針だ。

 藤倉コンポジット <5121> [東証P]はゴルフシャフトの主要メーカーとして知られるが、主力は半導体や液晶市場向け制御機器を手掛ける産業用資材事業だ。上期実績は円安効果もあって従来予想から大きく上振れし、営業利益は前年同期比で増益を確保。通期では小幅減益を見込むが、上期決算とあわせ大幅増配を発表しサプライズに。同社はPBR1倍達成を目指し、総還元性向30%を目標とする株主還元方針を掲げている。

 ノリタケカンパニーリミテド <5331> [東証P]は老舗の高級陶磁器・砥石メーカー。食器製造で培ったセラミックス技術を発展させ電子材料や製造装置、工業機材に業容を広げており、主な顧客は半導体や自動車、鉄鋼業界だ。 パワー半導体ウエハーの研磨工具「LHAパッド」を開発し、量産化を進めるなど半導体分野に注力している点がポイント。電子材料部門での顧客の在庫調整進展や円安を背景に、24年3月期は最終増益と増配を見込む。

 澁谷工業 <6340> [東証P]は飲料をペットボトルや缶に入れる充填装置の最大手。このほか半導体製造装置をはじめ医療機器、細胞培養システム、農業用設備などさまざまな産業機械を展開する。昨年にパワー半導体関連装置を製造する企業を買収し、半導体分野を強化した。24年6月期は充填装置の豊富な受注残や半導体市場の回復が寄与し、2期ぶりに営業増益に転換する計画。第1四半期は前年同期比2.4倍増益と好スタートを切った。

 北川鉄工所 <6317> [東証S]は自動車関連や建設・農業機械の鋳造部品を主力に、産業機械や工作機器を手掛ける。半導体事業に参入すべく、昨年に半導体研磨材の製造販売会社と半導体精密研磨技術を持つ製造装置メーカーの2社を子会社化、今後の業績成長に期待がかかる。自動車部品の回復により、24年3月期は営業5.1倍増益となる見通し。有配企業にもかかわらず、PBRは0.3倍台と極めて割安な水準に放置されている。

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