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【特集】Jストリーム Research Memo(8):コロナ禍の反動で苦戦も、オーガニックな成長は継続

Jストリーム <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2024年3月期第2四半期の業績動向
Jストリーム<4308>の2024年3月期第2四半期の業績は、売上高5,581百万円(前年同期比5.5%減)、営業利益294百万円(同61.9%減)、経常利益309百万円(同59.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益152百万円(同66.9%減)となった。コロナ禍において様々な分野で急速にオンライン化が進んだが、2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行をきっかけに、リアルへの回帰が想定以上に進んだことから減収減益となった。こうした厳しい状況をある程度織り込んでいたものの、進行が広範囲だったため、社内計画に対して業績は未達となったようだ。

日本経済は、世界的な政情の悪化、資源価格の高騰、急速な円安の進行などから物価高が顕在化しており、景況感は回復しつつあるものの、個人消費動向や企業収益における不確実性が高い状況が続いている。一方、コロナ禍で広まったテレワークなどオンライン化への関心は、コロナ禍の沈静化によってオフィス回帰への動きが急速に進んだことで相対的に低下したが、DXへの関心は依然として高い水準にあるといえる。インターネット業界においては、企業や社会のDXが進展するなかで、注目の生成AIの活用がすでに進みはじめ、関連市場が広がっている。こうした環境下、同社は各種イベントのインターネットライブ配信や社内情報共有・教育などのオンデマンド動画配信ニーズに対応し、主力サービスである「J-Stream Equipmedia」や「ライブ配信サービス」、コンテンツ配信サービスに関連するシステム開発、運用受託を中心に営業活動に努めた。

2023年5月のコロナの5類移行により会議やイベントのリアル回帰の傾向が強ることは想定していたが、想定以上となったのは、リアル回帰の期間が長期化したことと様々な分野に広がったことで、医薬系企業からの受注だけでなく、一般企業におけるセミナーや各種イベントのスポット受注も減少した。また、グループ子会社でも、医薬系企業を主力顧客とする2社を中心に医師向け情報提供用のデジタルコンテンツの制作が減少するなど苦戦した。一方、OTTについては、引き続き運用や開発を中心に売上が好調に推移した。コロナ禍のオンライン集中から(オンラインとリアルの)ハイブリッドへのシフトについては手応えを感じているものの、いったんリアルへの回帰が強まったという印象である。コロナ禍の反動といえるが、オンラインのコストメリットを考慮すると、ハイブリッドを含め、早晩回復してくるものと思われる。利益面では、将来の業容拡大に向けた開発体制の充実のための投資を継続したことで、人員、労務費ともに増加傾向が継続した。しかし、売上連動の外注費の減少、足元の営業見通しを鑑みた採用計画の抑制、その他の経費の大幅な見直しなどによりコスト圧縮を図り、販管費を当初計画から単体で6億円ほど削減、前年同期比でも減少した。

コロナ禍以前と渦中、その後を対比してみると、2020年3月期は医薬を中心に成長がみられていたところに、2020年2月以降コロナ禍が顕在化し、非接触のライブイベントや映像制作等の需要が医薬領域を中心に突如本格化した。2021年3月期は医薬領域の需要が急増した(EVCとOTTも相応の成長を達成した)が、急増する需要対応を優先した結果、必要なコストを投入できず利益が過大に計上されていた。2022年3月期、2023年3月期は、イベントや会議のオンライン化が急速に進んだことで、医薬は高水準、EVCは成長を拡大、OTTは徐々に拡大という状況となり、2年続けて利益は2020年3月期を大きく上回る水準となった。そういう意味で、コロナ禍の反動があった2024年3月期は非常に厳しい業績となるのは想定内で、上期ベースの比較だが、売上高が2021年3月期の水準にあり、営業利益が2020年3月期の水準を大きく上回っていることを考えると、むしろオーガニックな成長が継続していると理解できる。ただし、急激な外部環境の変化によって、現状は収益バランスが取れていない状況でもあり、下期から2025年3月期へ向けて、コストの整備や売上高につながる商品開発などに注力する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SO》

 提供:フィスコ

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