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【特集】主要産油国の供給削減の行方は?ガザ侵攻はサウジの判断を左右するか <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻が始まり、中東情勢の緊迫感が一段と高まっている。そのなか、主要産油国の自主的な供給削減の行方に注目しなければならない。サウジアラビアは日量100万バレルの自主減産を、ロシアは日量30万バレルの輸出削減を年内続ける予定だが、来年以降の供給調整についてはまだ不明である。石油企業との受け渡しの都合上、11月前半には発表される可能性がある。

●需給はタイト化というよりも横ばい

 足元の石油市場の需給は引き締まり気味に推移していると見られているものの、世界的な石油在庫の先行指標である米石油在庫は年初から穏やかな増加傾向にある。米エネルギー情報局(EIA)によると、昨年末の原油と石油製品の在庫の合計(戦略石油備蓄を除く)は12億524万7000バレルだった一方、足元では12億6561万3000バレルで推移している。サウジアラビアやロシアの供給調整以外にも、石油輸出国機構(OPEC)プラスが減産を実施しているが、需給は緩んでいる。経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫は直近8月で28億300万バレルとなっており、今年1月と比較するとやや減少傾向にあるが、需給がタイト化しているというよりも、どちらかといえば横ばいに近い。

 ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物ブレント原油など指標原油は7月以降堅調に推移しており、相場の動きだけ眺めていると需給のタイトさが反映されていると思われるかもしれないが、年初から10月にかけて需給バランスの変化は限定的である。石油タンカーによる海上備蓄は減少傾向にあるようだが、一般的に利用可能な統計からすると、生産調整が世界的な石油在庫を押し下げているとは言い難い。

●西側に利することになる減産縮小をサウジが行うか

 世界的な需給が引き締まる方向にあるとして、来年以降の自主減産規模の縮小を見通す向きはあるが、上述したように石油在庫の推移からすると需給の引き締まりは限定的である。また、サウジが増産すれば原油相場が重くなり、イスラエルを軍事的に支援する西側を利することにもなるものの、パレスチナ国家の樹立を目指してきたサウジが自主減産を縮小するのだろうか。減産の効果が限定的であると判断すると、自主減産の据え置きが妥当だと思われる。現実的ではないとしても、心情だけで刹那的に決定するならば、自主減産の拡大があり得るのではないか。

 主要産油国は原油を武器として利用することはないと繰り返しているものの、ガザ侵攻による死傷者の拡大に歯止めをかけることができるのであれば、原油相場を交渉の糸口として利用することにためらう理由はあるのだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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