【市況】S&P500 月例レポート ― 9月下落で市場は悪材料を織り込む? (3) ―
●世界の株式市場
○S&Pグローバル総合指数は、8月の3.08%下落に続き、9月は4.29%下落しました(7月は3.72%上昇)。9月のグローバル市場は、米国の4.88%下落を除くと3.40%下落となりました。8月は米国の2.13%下落を除くと4.46%の下落、7月は米国の3.51%上昇を除くと4.03%の上昇でした。グローバル市場は過去3ヵ月間では3.79%下落、米国の3.65%下落を除くと3.99%下落、年初来では7.68%上昇、米国の11.10%上昇を除くと3.04%上昇しています。2023年9月までの1年間では、S&Pグローバル総合指数は17.86%上昇、米国の18.58%上昇を除くと16.81%上昇しています。
⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は2023年9月に2兆9490億ドル減少し(8月は2兆3520億ドル減)、年初来では4兆9120億ドルの増加となって、総額は70兆6700億ドルとなりました。米国以外の市場の時価総額は9月に8830億ドル減少し(同1兆3860億ドル減)、総額は28兆7270億ドルとなり、年初来では8630億ドル増加した一方、米国市場の時価総額は9月に2兆660億ドル減少し(同9660億ドル減)、総額は41兆9430億ドルとなり、年初来では4兆480億ドル増加しました。2022年にグローバル市場の時価総額は13兆3950億ドル減少し、米国以外の市場の時価総額は4兆2960億ドル減、米国市場の時価総額は9兆990億ドル減でした。
○セクター間のリターンのばらつきは拡大し、9月は11セクターのうち1セクターが上昇しました。8月は11セクターのうち10セクターが下落、7月と6月は全11セクターが上昇していました。9月のパフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、2.39%上昇)と最低のセクター(不動産、6.48%下落)の騰落率の差は8.87%と、8月の6.53%や7月の5.65%から拡大しました。年初来でのパフォーマンスが最高のセクター(情報技術、27.70%上昇)と最低のセクター(公益事業、10.96%下落)の騰落率の差は38.66%となっています。2022年のパフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、28.08%上昇)と最低のセクター(コミュニケーション・サービス、36.30%下落)の騰落率の差は64.38%でした
⇒新興国市場は7月の5.56%上昇、8月の5.34%下落の後に、9月に全体で2.07%下落しました。新興国市場は過去3ヵ月間では2.14%下落、年初来では0.76%上昇しています(2022年は20.46%の下落を記録)。過去1年間では8.49%の上昇ですが、過去2年間では20.94%の下落、過去3年間では6.91%の下落となっています。9月は23市場のうち6市場が上昇しました(8月は3市場が上昇)。9月はエジプトのパフォーマンスが最も良く8.34%上昇し、パフォーマンスが最低だったのはポーランドで9.84%下落しました。
⇒先進国市場は、7月の3.51%上昇、8月の2.82%下落の後に、9月に全体で4.55%下落しました。先進国市場は米国を除くと、7月の3.52%上昇、8月の4.16%下落の後に、9月に3.88%下落しました。先進国市場は過去3ヵ月間では3.98%下落、米国を除くと4.64%下落しています。年初来では8.54%上昇し、米国を除くと3.81%の上昇です。過去1年間では19.03%上昇、米国を除くと19.90%上昇、過去2年間では7.67%下落、米国を除くと13.99%下落、過去3年間では18.45%上昇、米国を除くと7.17%上昇しています。9月は25市場のうち1市場が上昇しました(8月は2市場が上昇)。パフォーマンスが最も良かったのはノルウェーで9月に2.50%上昇し、パフォーマンスが最低だったのはオランダで9月に7.93%下落しました。
○中国の不動産開発大手の碧桂園(カントリーガーデン)は、支払いが遅れていた社債2本の利息(合計2250万ドル)について、30日間の猶予期間が切れる前に支払いを行いました。同社債は額面の10%前後で取引されています。同社は向こう1年以内に約150億ドル相当の社債が償還期限を迎えます。
○中国の8月の輸出(ドルベース)は前年同月比8.8%減、輸入は同7.3%減となりました。
○英国の8月のインフレ率は前月比0.3%となり、予想されていた0.7%を下回りました。前年同月比では7月の6.8%を上回ると予想されていましたが、8月は6.7%と前月から低下し、18ヵ月ぶりの低水準となりました(ピークは2022年10月の11.1%)。食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は、7月の前年同月比6.9%に対して8月は6.2%に低下しました。
○ユーロ圏の9月のインフレ率は前年同月比4.3%となり、8月の5.2%から低下しました。コアインフレ率は4.5%となり、8月の5.3%から低下しました。
●米国経済
○8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.9と7月の46.4から上昇しました。
○8月のISM製造業景気指数は47.6と7月の46.4から上昇しました。
○8月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50.5と7月の51.0を下回りました。
○8月のISM非製造業景況指数は、7月の52.7から52.4へと低下すると予想されていましたが、54.5に上昇しました。
○9月のPMI速報値は、製造業が47.9と8月の47.8を0.1ポイント上回り、サービス部門は50.2と8月からほぼ横ばいとなりました。
○8月のCPIは予想通り前月比0.6%の上昇となり(7月は0.2%上昇)、前年同月比は3.7%と7月の3.2%から上昇しました。食品とエネルギーを除いたコアCPIは、予想が前月比0.2%上昇だったのに対し0.3%上昇(7月は0.2%上昇)となり、前年同月比は4.3%と7月の4.7%から低下しました。CPI構成比率の3.4%を占めるガソリンの価格が月間で10.6%上昇したことが目立ちました。ただし、前年同月比では3.3%低下しています。
○8月のPPIはエネルギー価格の上昇が響き、前月比0.7%上昇と14ヵ月ぶりの大幅上昇となりました。市場予想はより低めの0.4%上昇でした(7月は0.3%上昇)。前年同月比は7月改定値の1.3%上昇(当初発表値は0.8%)から、8月は1.6%上昇に加速しました。食品とエネルギーを除いたコアPPIは前月比では0.2%上昇、前年同月比では2.2%上昇と、7月の2.4%から低下しました。
○2023年第2四半期の労働生産性改定値は3.5%上昇と速報値の3.7%上昇から下方改定されました。単位労働コストが速報値の1.6%上昇から2.2%上昇へと上方改定されたことを受けたものです。
○8月の鉱工業生産指数は、前月比0.4%の上昇(予想は0.1%上昇)となりました。設備稼働率は79.7%と7月の79.5%から上昇しました。
○2023年第2四半期のGDP成長率確報値は2.3%と従来の2.1%から上方修正されました。個人消費の伸び率は0.8%(年率)と、従来の1.7%から下方修正されました。
○2023年第2四半期の最終企業利益は2022年第2四半期比で7.8%減少しました。
○8月の個人所得は予想通り前月比0.4%の増加でした。個人消費支出は予想が前月比0.5%増だったのに対し、0.4%増となりました。
⇒個人消費支出(PCE)総合価格指数は前月比0.4%上昇し、前年同月比では3.5%上昇(7月の3.4%から上昇)しました。コアPCE価格指数は前月比0.1%上昇し、前年同月比では3.9%の上昇(7月は4.3%)となりました。
○7月の建設支出は前月比0.7%増と6月の0.6%増から上昇しました。前年同月比は5.5%増と、6月の4.6%増から上昇しました。
○8月の小売売上高は前月比0.6%増となりました。予想は0.2%増でした。7月は前月比0.7%増(速報値)から0.5%増に下方修正されました。目立って予想を上回ったのはガソリン販売で、8月に5.2%増加しました。
○7月の製造業受注は前月比2.1%減となりました。6月の2.3%増の後、2.6%減が予想されていました。
○8月の耐久財受注額は、7月分が速報値の前月比5.2%減から5.6%減に下方修正されたこともあり、前月比0.2%増となりました。予想は0.3%の減少でした。
○7月の卸売在庫は前月比0.1%減と予想されていたのに対し、0.2%減となりました。6月は当初発表の0.5%減から0.7%減に修正されました。
○7月の企業在庫は前月比0.1%の増加が予想されていましたが、横ばいとなりました。6月は横ばいから0.1%減に下方修正されました。
○8月の小売在庫は前月比1.1%増(7月は0.5%増)となりました。卸売在庫は前月比0.1%減(7月は0.2%減)となりました。
○7月の貿易統計によると、貿易赤字は650億ドルでした。これに対し6月の貿易赤字は637億ドルでした。
⇒8月の貿易統計(速報)では、輸入が1.2%減(7月は2.1%増)、輸出が2.2%増(7月は1.7%増)となり、843億ドルの貿易赤字となりました。
○8月の輸入物価指数は0.5%上昇(予想0.3%上昇)となりました。前年同月比では3.0%の低下で、7月の4.6%低下と比べると低下幅が縮小しています。輸出物価指数は1.3%上昇(予想0.4%上昇)となり、前年同月比で5.5%低下し、7月の8.0%低下と比べ低下幅が縮小しています。
○9月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は67.7で、前月の69.2から低下しました。1年先のインフレ期待は3.1%で、前月の3.5%から低下しました。
⇒ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は68.1となり、速報値から上方改定されました。
○8月の景気先行指数は、予想が前月比0.3%の低下だったのに対し0.4%の低下となりました。7月は速報値の0.4%低下から0.3%低下に修正されました。
●住宅関連
○9月のNAHB住宅市場指数は、予想は横ばいの50だったのに対し、45に低下しました。
○7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、予想は前月比0.7%上昇でしたが0.6%上昇となり、前年同月比は0.1%上昇と、6月の1.2%低下からプラスに転じました。
○7月のFHFA住宅価格指数は前月比0.4%上昇の予想に対し0.8%の上昇となり、前年同月比は4.6%上昇と6月の3.1%上昇から加速しました。
○8月の中古住宅販売仮契約件数は前月比で若干の低下が予想されていましたが、7.1%の減少となりました。7月は0.9%の増加でした。
○8月の年率換算データは以下の通りです。
⇒住宅着工件数は128万3000件で、市場予想の143万5000件を下回り、7月の144万7000件から減少しました。
⇒着工許可件数は予想以上に堅調で154万3000件となり(予想は144万件)、7月の144万3000件から増加しました。
⇒中古住宅販売戸数は7月の407万件から410万件への増加が予想されていましたが、0.7%減の404万件となりました。前年同月比は15.3%減となり、7月の16.6%減から改善しました。
⇒新築住宅販売件数は67万5000件(予想69万9000件)となり、7月の73万9000件(速報は71万4000件)を下回りました。前年同月比では5.8%の増加でした。
→販売価格の中央値は43万300ドルと前月比で1.4%、前年比では2.3%下落しました。平均価格は51万4000ドルと前月比1.2%上昇しましたが、前年同月比では3.2%下落しました。
※「9月下落で市場は悪材料を織り込む? (4)」へ続く
株探ニュース