【市況】国内株式市場見通し:波乱含みも日経平均バブル後高値更新にトライ
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日経平均節目の33000円台上抜ける
今週の日経平均は週間で926.25円高(+2.8%)の33533.09円と2週間ぶりに反発し、8月1日の戻り高値33488.77円を15日終値で更新した。日本銀行によるマイナス金利政策の解除への思惑が強まるなか週初は売りが先行。ただ、国内長期金利の上昇一服に伴い下げ止まると、その後は9月の中間配当権利取りを狙った買いや原油市況の上昇を背景に景気敏感・バリュー(割安)株が相場をけん引。米8月消費者物価指数(CPI)が予想並みだったことで金融引き締め懸念が後退するとハイテクにも買いが入り、相場上昇に弾みがついた。週末は米8月小売売上高が予想を上回ったほか、中国人民銀行(中央銀行)が今年2度目となる預金準備率の引き下げを発表したことで世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まり、為替の円安も追い風となるなか日経平均はさらに上値を伸ばした。
■FOMCと日銀金融政策決定会合は無難消化か
来週の東京株式市場は神経質な展開か。今週末15日の米株式市場はハイテクを中心に大きく下落。株価指数および個別株の先物・オプション取引の4つの取引の決済日が集中する「クアドラプル・ウィッチング」に伴い、テクニカル要因で変動率が高まった可能性もあるが、米長期金利が大幅に上昇していたこともあり、先行き警戒感が高まる動きといえる。また、半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が製品納入を遅らせるよう取引メーカーに要請したことで半導体株が大幅安となったことは気掛かりだ。指数寄与度の大きいハイテク株を中心に週明けの東京市場はやや荒いスタートとなりそうだ。
来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合が最大の焦点となる。米8月消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除くコア指数の鈍化が続き、約2年ぶりの小幅な伸びとなった。米連邦準備制度理事会(FRB)が19-20日に開催するFOMCでは金利が据え置かれるだろう。一方、今会合では最新の政策金利見通しも公表される予定で注目だ。金利先物市場では年内の追加利上げの織り込みが4割程度にとどまり、来年末時点については0.25ポイントの利下げ3回分の実施を織り込んでいる。政策金利中央値が市場予想より高い場合には相場はネガティブに反応する可能性がある。ただ、「政策判断はデータ次第で会合ごとに決定」とのFRBの従来の方針に大きな変更はないとみられる。利上げサイクル終了期待は根強く残り、株式市場が急落するような事態は避けられるだろう。
他方、9日付の読売新聞が報じた植田日銀総裁へのインタビューを材料に一時マイナス金利解除の思惑が急速に高まった。ただ、週末には総裁発言と市場解釈にギャップがあるとした一部報道が伝わり警戒感は後退した。仮に年内の追加政策修正があったとしてもそれは9月会合以降の話で、来週21-22日の金融政策決定会合では現状維持が決定され、無難に消化されることが予想される。
日米の金融政策イベント前後では、相場は神経質な展開となる可能性をはらんでいるものの、米VIX指数が今年最低水準で推移しているなか投資家心理は悪くないことが窺える。FOMCと日銀金融政策決定会合を無難に消化できれば、日経平均は6月19日のバブル後高値33772.89円を捉えてくる可能性もありそうだ。また、引き続き9月の中間配当の権利取りを狙った買いや原油市況の上昇を背景としたエネルギー関連株の上昇が相場をけん引する可能性があろう。
ほか、海外の投資家や資産運用会社等を集中的に日本に招致し、国際金融センターの実現に向けた日本政府の関連施策や日本の金融資本市場としての魅力等を情報発信する「Japan Weeks(ジャパンウィークス)」が9月25日から10月6日の日程で開催される。過去に大手証券会社などが独自に海外機関投資家を招聘するイベントはあったが、金融庁が主催するのは初の試みだ。このイベント開催を手掛かりに海外投資家の日本株に対する関心がさらに高まる可能性があり、東京株式市場の下値を支えることが期待される。
■自動車や関西、ゲームに注目
物色としては、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待や為替の円安メリットなど好材料が多く存在する自動車関連株の人気が持続する可能性がある。ほか、ユニークで旬の物色テーマとして関西銘柄が挙げられる。14日にはプロ野球・阪神タイガースがリーグ優勝を果たした。今年はパリーグのオリックス・バファローズも優勝マジックを1ケタとしており、日本シリーズは在阪球団同士の対決となる可能性が高い。その場合、優勝記念セールはどちらが勝っても「もう一度、関西で盛り上がる」こととなり、関西経済を刺激する期待があろう。ほか、ゲーム見本市「東京ゲームショウ」が21日から開催されることでゲーム関連に物色が向かう展開も期待できそうだ。
■FOMC、日銀金融政策決定会合、など
来週は19日に米FOMC(-20日)、20日に8月貿易収支、8月訪日外国人客数、パウエルFRB議長会見、21日に日銀金融政策決定会合(-22日)、ゲーム見本市「東京ゲームショウ」(-24日)、英国金融政策委員会、22日に植田日銀総裁会見、8月全国消費者物価指数、米9月S&Pグローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)、などが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ