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【特集】中古車「ビッグモーター」問題で地殻変動、絶好の買い場銘柄リスト <株探トップ特集>

ビッグモーター問題を巡る報道が本格化した7月。中古車オークションの市場に大きな変調の兆しはみられなかった。中古車関連企業のなかには輸出事業が好調で業績予想を引き上げたところもある。

―トップ企業の不正とロシア輸出規制強化のダブルパンチ、関連株の出遅れ感強まる―

 中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区)の不正問題がメディアを賑わせている。政府によるロシアへの輸出規制強化も重なり、 中古車市場の先行きを懸念する声は多いものの、新車の納車期間が長期化するなかで生活やビジネスの足として中古車を求めるニーズに根強いものがあるのも確かだ。業界の地殻変動で追い風が吹く企業はどこか。ロング(買い持ち)候補となり得る銘柄をピックアップしていく。

●ビッグモーターで車両検索すると...

 帝国データバンクによると、2022年度の中古車販売市場の規模は過去最高の3兆9073億円で、ビッグモーターは市場シェアの15%を占める。そのトップ企業が事故車の修理に関し、わざとクルマに傷をつけたり、架空の作業を計上したりするなどの不正行為に手を染めていた。

 同社への批判が強まるなか、日本政府は8月9日に経済制裁強化を目的に、排気量1900ccを超えるガソリン車や電気自動車(EV)などについて、ロシアへの輸出を禁止する措置に踏み切った。22年の同国への中古車輸出台数は約20万台で、今回の措置により約半数が規制の対象となるようだ。

 「ダブルパンチ」に見舞われた中古車業界だが、悲観一辺倒というわけではない。国内の自動車オークション市場でおよそ4割のシェアを占めるユー・エス・エス <4732> [東証P]のデータによると、7月の中古車の成約単価は前年同月比で8%低下した。しかし、そもそも前年の7月は半導体不足を背景に新車供給が滞り、中古車相場が歴史的な上昇をみせた期間に当たる。今年7月の成約単価も過去との比較では高水準にあるという。

 USSの7月のオークションでの出品台数は約25万台に上る。ビッグモーターの在庫台数の規模はどうか。同社のホームページで、年式や走行距離などの条件を指定せずに、車両を検索すると、約2万9000台がヒットする(8月10日時点)。これら以外に在庫はないとの前提で、ロシアへの輸出規制対象を約10万台として足し合わせると約13万台で、USSの7月の出品台数のおよそ半月分に相当する。同社以外のオークションの存在も踏まえると「中古車の需給悪化と価格下落への懸念はやや行き過ぎの印象もある」(中古車販売業界関係者)との声がある。

●円安の追い風は中古車業界にも

 ロシアへの輸出規制強化が及ぼす影響そのものに関しても、現状では悲観と楽観が交錯した状況だ。1ドル=140円を上回る水準まで進んだ円安は、海外からみて日本の中古車の価格競争力を高める方向に作用する。ロシア向けの約10万台分の一部が他の地域に振り向けられることを期待する向きもある。

 中古車買い取り専門店「アップル」を展開するアップルインターナショナル <2788> [東証S]は8月2日、23年12月期の最終利益の見通しをこれまでの4億3700万円から11億5200万円(前期比13.4%減)に上方修正した。海外中古車輸出事業で、タイやマレーシア向けの出荷台数が想定以上に伸びた。「円安が進んだことで、欧州の高級車を欧州からではなく日本から輸入しようという動きも広がっている」(管理本部)という。

 国内の販売状況に関しては、日本自動車販売協会連合会(自販連)が8月10日に発表した7月の中古車登録台数は前年同月比2.6%増の29万1805台となった。8月以降もプラスを続ければ、中古車市場を巡る不透明感を一段と後退させる材料となるかもしれない。

●想定されるシナリオ

 クルマは地域によって生活やビジネスをするうえでの必需品である。しかし、自動車メーカー各社の新型車の納車状況を確認すると、注文から出荷まで半年以上の時間を要するモデルは珍しくはなく、受注を一時的に停止した車種も存在する。

 物価高を受けて消費者の節約志向も強まっている状況下では、中古車の購入層が一気に新車購入に向かうというストーリーを描くのは難しい。こうした点を考慮すると、ビッグモーターの顧客の一部が他の中古車販売業者にシフトするというストーリーこそが、現時点で想定できる有力なものの一つとなるに違いない。

 また、本来であれば車検のタイミングでクルマを下取りに出して買い替えを行うところを、ひとまず必要なメンテナンスを行って車検を通し、今あるクルマに乗り続けようとするユーザーが、一定の規模で現れる可能性もある。その場合は、自動車整備や補修部品関連企業の業績にプラスの影響をもたらしそうだ。

 中古車業界に対する消費者の憂慮が時間とともに収まれば、売り込まれた周辺銘柄のうち、成長力が高いものに対しては見直し買いが入る余地が出てくる。こういった観点をもとに、ロング候補となり得る銘柄を選んでみる。

●ネクステージやイエロハットなどに投資妙味

 中古車販売大手のネクステージ <3186> [東証P]の23年11月期第2四半期累計(22年12月~23年5月)の連結決算は、経常利益が前年同期比12.7%減の77億9100万円と減益だったが、直近3カ月間の23年3~5月期では大幅増益で四半期での過去最高益を更新。業績の底入れが鮮明で7月3日の決算発表後、株価はマドを開けて上伸した。既存店の小売販売台数や車検台数が増加するなか、競合大手からの顧客シフトは業績上振れへのドライバーとなる公算が大きい。信用倍率は足もとで0.18倍と売り長の状況。ショートカバー誘発時には上昇指向を強めそうだ。

 中古車の買い取り・販売事業も展開する前述のアップルは、新たな通期計画を保守的に設定した模様。メーカーによる新型車の納車状況が改善に向かえば下取り車種が増え、同社にとって中古車不足のリスクが後退する。株価はやや買い疲れ感もみられるが、25日移動平均線に沿った株高基調の継続に期待が膨らむ。

 自動車用品販売ではイエローハット <9882> [東証P]がプライム銘柄ながらPBR(株価純資産倍率)が0.79倍にとどまっている。23年4~6月期の営業利益は前年同期比3.8%減の32億6800万円と、業績のモメンタムはやや力強さを欠き、株価の出遅れ感も意識される。だが減益の主因は、POSシステムの設備投資に伴う減価償却負担で、オイルなど消耗品の好調な販売と車検工賃収入の増加を受けて4~6月期として売上高は過去最高を更新した。成長軌道は不変とみて中期目線で手掛けたい。

●最高益見通しのプロトも要マーク

 中古車サイト「グーネット」を運営するプロトコーポレーション <4298> [東証P]は、7月31日の決算発表後に年初来高値を更新し、21年につけた上場来高値と22年の安値の半値戻しの水準を回復した。23年4~6月期は経常利益が前年同期比31.2%増の27億5500万円。通期では前期に続き過去最高益を狙う。為替リスク回避目的の通貨オプション取引で含み益が発生したことが利益を押し上げたが、メディア事業の成長は継続し、ディーラー向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)プロダクトも堅調な伸びを示す。中期的には車載式故障診断装置(OBD)を活用したサービスの成長も期待されている。

 自動車の補修・車検部品を扱うSPK <7466> [東証P]の24年3月期の売上高と各利益は前期に続き過去最高となる見通しだ。23年4~6月期の最終利益は通期計画に対し進捗率は32%に上るなど順調な滑り出しとなっている。海外向けが好調で新値街道をまい進するプライム銘柄ながらPBRは1倍を下回っている。株式の流動性は高くはないが、割安な成長株としての評価の余地は大きい。

 中古車オートクレジットや修理保証事業を展開するプレミアグループ <7199> [東証P]は、26年3月期に営業収益440億円(24年3月期見通しは305億円)、税引き前利益102億円(同60億円)とする中期経営計画を掲げる。23年4~6月期は2ケタの増収増益。クレジット取扱高は前年同期比33.3%増の742億円と順調に積み上がっている。ビッグモーターとの取引量は「非常に僅少」としており、業績への影響はほとんどないというものの、株価は200日移動平均線を下回る水準で推移する。中古車市場の先行きを巡る投資家の懸念が和らげば、反騰機運を強めそうだ。

 このほか、中古車関連には「ガリバー」のIDOM <7599> [東証P]やケーユーホールディングス <9856> [東証S]、カーチスホールディングス <7602> [東証S]、オートバックスセブン <9832> [東証P]、オプティマスグループ <9268> [東証S]、オートウェーブ <2666> [東証S]などがあり、今後の業績推移が注目される。

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