【市況】明日の株式相場に向けて=FRBと日銀が描き出す未来図
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
とはいえ全般様子見気分が強いというのは確かだ。これはSQ算出前に売り買いを手控えているというのではなく、やはり日銀総裁人事を目前にしてマーケットが疑心暗鬼に陥っているようなフシがある。市場関係者からは「週明け早々に雨宮正佳副総裁に次期総裁ポストの打診があったと報じられたが、それに続く報道が別のメディアから出てこない。雨宮氏の打診は当局側のリークではない印象が強く、まだ本決まりでないという状況のようだ。仮に別の人物が総裁に就いた場合や、副総裁に誰が選出されるかによっても相場の波乱要因となる」(準大手証券ストラテジスト)という声が聞かれた。
今回選ばれる日銀新総裁は就任早々から非常に難しい舵取りを迫られるわけで、火中の栗を拾うような厳しさがあることは否めない。市場筋によると「雨宮氏が次期総裁を受諾する場合には、副総裁に山口広秀元副総裁を希望しているという噂も漏れ聞く」(ネット証券マーケットアナリスト)とし、水面下でさまざまな駆け引きが行われている感が強い。表現を変えれば「揉めている」雰囲気が伝わってくる。あす、10日に発表されるという見方が強かったが、来週にずれ込む可能性もなきにしもあらずだ。もちろん、だからと言ってここで売り仕掛けを入れるような動きも取りにくい。
いずれにしても今の大規模金融緩和を継続すれば、日本もインフレの波に晒される可能性は高く、その一歩手前でクロダノミクスからの決別は避けられない状況にある。だいぶ前から潮の流れに変化が起きていることについては、株式市場も織り込んでいるはずである。しかしその重大性、場合によってはそれほど重大ではないのかもしれないが、どちらにせよ次期日銀総裁Xが株式市場に与える影響の度合いについてはまだつかめていない。
一方、米国でもFRBの金融政策に対する思惑が入り乱れた状態にある。前日のインタビューでパウエルFRB議長の発言がインフレに対しやや楽観的な色を帯びていたことから、NYダウ、ナスダック総合株価指数、S&P500指数は足並みを揃えて上昇したのだが、一夜で雰囲気が変わった。今度はFRBのウォラー理事やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が相次いでタカ派的なコメントを発し、主要3指数は揃って前日に上げた分をほぼ吐き出す格好となった。
前日にも触れたが、パウエル氏のハト派傾斜は見せかけであり、FRBは決してインフレを甘くみていないようだ。市場では「FRB内部では毎月950億ドル規模の量的引き締め(QT)を2025年まで続けるべきという意見も支持されている。ターミナルレートについても6%が妥当というタカ派的論調も存在感を増している」(ネット証券マーケットアナリスト)という声が聞かれる。FRBはコロナバブル形成の反省に立って今後は何はともあれバランスシート圧縮を第一義としているようで、中期的に米国株市場は下降トレンドとは言わないまでも、もみ合い圏の推移が精一杯という可能性がある。また、「米国ではサービス部門のインフレが思った以上に粘着性が高いという認識に変わってきた」(同)という。この場合、あえて失業率が高まるような経済環境を強いる必要性が生じ、短い不況の設計、即ちボルカー時代の再来を危ぶむ声もあるようだ。
あすは株価指数オプション2月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日にあたる。このほか主なスケジュールとしては1月の企業物価指数、3カ月物国庫短期証券入札などが予定されている。海外では1月の中国消費者物価指数(CPI)・卸売物価指数(PPI)、マレーシアの22年10~12月期GDP、1月の米財政収支、2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)など。また、国内主要企業の決算では日揮ホールディングス<1963>、ヤクルト本社<2267>、資生堂<4911>、ホンダ<7267>、オリンパス<7733>、三井不動産<8801>などが発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年02月09日 17時16分