【通貨】為替週間見通し:ドルは上げ渋りか、米利上げペース減速の可能性高まる
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【今週の概況】
■日銀金融緩和策継続で円売り強まる
今週のドル・円は堅調推移。週初に127円23銭まで下落したが、1月17-18日開催の金融政策決定会合で日本銀行は現行の金融緩和策を継続することを決定し、米ドル買い・円売りが急速に拡大した。ドル・円は18日の東京市場で一時131円58銭まで上昇した。しかしながら、18日発表の12月米生産者物価指数(PPI)、12月米小売売上高、12月米鉱工業生産は市場予想を下回り、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げペースをさらに減速するとの見方が強まり、ドル・円は一時127円台半ばまで反落した。ただ、複数の地区連銀総裁が追加利上げの必要性を主張したことや、中国の経済活動拡大、米雇用関連指標の改善を受けて19日の欧米市場でドル買い・円売りが再び優勢となった。
20日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時130円61銭まで買われる場面があった。日本のインフレ加速にもかかわらず日本銀行の黒田総裁は「拡張的な金融政策を継続する」と述べたことから、日米金利差の拡大を想定したドル買い・円売りが観測された。ドル・円は129円59銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:127円23銭-131円58銭。
【来週の見通し】
■ドルは上げ渋りか、米利上げペース減速の可能性高まる
来週のドル・円は上げ渋りか。低調な米経済指標を背景に連邦準備制度理事会(FRB)は利上げペースのさらなる減速を検討しており、金利安・ドル安に振れやすい展開となりそうだ。日本銀行は金融緩和策を段階的に修正するとの思惑は消えていないため、リスク選好的なドル買い・円売りがただちに強まる可能性は低いとみられる。1月31日-2月1日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、利上げ幅を0.25ポイントに縮小するとの見方が増えている。ただ、今後の金融政策をめぐるFRB当局者の見解は分かれており、ドルの方向性は定まらず、どのように集約されるか注目される。
ブレイナードFRB副議長は1月19日の講演で、「インフレ鈍化の兆候は明らかであるが、高止まりのため利上げ継続は必要」と強調した。ただ、景気への配慮から過度な金利上昇は抑制されている。来週発表される米国の10-12月期国内総生産(GDP)速報値は前期比年率+2.9%程度と、7-9月期の+3.2%を下回る見通し。また、個人消費支出(PCEコア価格指数)は前年比+4.4%と、前月の+4.7%から低下する公算であり、市場予想と一致した場合、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小するとみられる。
一方、日銀は緩和的な金融政策を維持する見込みだが、2023年度における新体制発足後に金融緩和策を段階的に修正する可能性がある。そのため、日米金利差の拡大をにらんだドル買い・円売りは弱まるとみられる。
【米・10-12月期国内総生産(GDP)速報値】(26日発表予定)
26日発表の米10-12月期国内総生産(GDP)速報値は前期比年率+2.9%と、7-9月期の+3.2%を下回る見通し。足元の経済指標は製造業を中心に低調な内容となり、GDPは予想よりも弱い内容となる可能性もあろう。
【米・12月個人消費支出(PCEコア価格指数)】(27日発表予定)
27日発表の米12月個人消費支出(PCEコアデフレーター)は前年比+4.4%と、前月の+4.7%から低下する公算。インフレのピークアウトが改めて示されれば金融引き締め長期化への期待は後退し、金利安・ドル安の要因に。
予想レンジ:127円50銭-131円50銭
《FA》
提供:フィスコ