【市況】明日の株式相場に向けて=「Dr.コッパー」の視線の先に見える株
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
12月の米CPIについては前年比年率で6.5%上昇がコンセンサスとなっており、エネルギーと食品を除いたコア指数の方は同5.7%上昇が予想ライン。この水準だけをみるとインフレは収まったとは言い切れないものの、11月は総合で7.1%、コアで6.0%であったから、12月が想定通りなら投資家サイドはかなり沈静化したという印象を持つかもしれない。前日のパウエルFRB議長の講演でもタカ派的な発言がみられず、「足もとでは売り方が疑心暗鬼に陥りやすい状況」(中堅証券ストラテジスト)という。
1月31日~2月1日の日程で行われるFOMCでは今回のCPIが予想を大きく上振れするようなことがなければ、利上げ幅は0.25%にとどまる可能性が高まっている。これがターミナルレートの低下に直結するものではなく、だからこそパウエル議長もマーケットが誤解しないようにあらかじめ釘を刺しているわけだが、それもおそらく本心ではないというムードが市場に蔓延している。0.5%ではなく0.25%の通常モードに戻すという動き自体、FRBがインフレに対する警戒を緩めているということにほかならないからだ。しかし、こうしている間にもFRBによる量的引き締め(QT)は粛々と行われているわけで、過剰流動性は着実に縮小傾向をたどっている。企業業績の悪化が顕在化してくれば逆業績相場の洗礼を受けることになりそうだが、今はまだそこに至らず、金融相場の余韻に浸っている状況といえる。
日本国内をみると直近発表された12月の東京都区部のCPIが前年同月比で4%の上昇を示した。「全国CPIに先立って発表される都区部CPIは、全国ベースより低い数値が出やすく、それも考慮したうえで、(今回の都区部CPIの結果は)かなり衝撃的だった」(生保系エコノミスト)とする。日本だけはデフレ大国でインフレの波が襲ってこない、というのは幻想にすぎない。2月は食品の値上げラッシュなども想定されるなか、時間差でインフレ・ビッグウェーブが襲来する気配もある。黒田日銀総裁が何と言おうと日銀の金融政策修正は避けられないという印象である。次期日銀総裁は火中の栗を拾う形となりかねず、雨宮副総裁や中曽前副総裁がバトンを引き継ぐことに難色を示しているという噂もあるが、思わず首肯してしまうところだ。
さて、全体相場はジリジリと水準を切り上げているが、個別株物色の勢いも衰える気配がない。過剰流動性相場の色はひと頃と比べてだいぶ褪せてきたものの、それでも物色意欲の強さは随所に感じられる。大きく買われた銘柄は反動安に見舞われるケースも多いが、そこから引いた資金がまた他の銘柄に矛先を向けるというパターンが繰り返されている。テーマ買いの動きも活発だが、直近はゼロコロナ解除による中国経済の回復期待が底流している。新型コロナウイルス感染者数が爆発的に増えたものの、既に峠を越えたという認識だ。中国政府による経済対策期待も根強い。これが正しいかどうかは別として、「ドクターコッパー」とも称される銅市況をはじめ非鉄市況の上昇がこの思惑に符合する動きとなっている。
この流れに沿う銘柄としては非鉄株あるいは鉄鋼株ということになるが、時価総額2兆3000億円の日本製鉄<5401>の値動きの軽さが何かを語っている。実践的には中小型株狙いで、個別にアサカ理研<5724>や黒谷<3168>の動きをマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、12月の景気ウォッチャー調査、12月のオフィス空室率が注目されるほか、朝方取引開始前に11月の国際収支、12月の対外・対内証券売買契約、12月の貸出・預金動向などが発表される。1月の日銀地域経済報告(さくらリポート)も開示される。海外では12月の米CPIに対するマーケットの関心が高いほか、12月の米財政収支が発表される。12月の中国消費者物価指数(CPI)、中国卸売物価指数(PPI)、11月の豪貿易収支なども予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS