【市況】明日の株式相場に向けて=荒波の船出、銀行株の強さ際立つ
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
米金融引き締めを背景とした景気後退懸念や、足もとでのドル安・円高進行が主力輸出株を中心に逆風材料となって下げを助長している。日経平均の下げ幅は一時430円強に達したが、朝方の売りが一巡した後はやや下げ渋った。しかし、朝の寄り付き段階でフシ目の2万6000円大台を何の抵抗もなく下抜けたほか、個別株も全体の86%の銘柄がマイナス圏に沈むなど、傍目よりも投資家心理が冷え込んでいることを示唆している。また、指数取引を絡め戦略的に売りを仕掛けているような気配がない。五月雨的な実需の売りが日経平均を押し下げている格好で、これはある意味タチの悪い崩れ足ともいえる。欧米のリセッション懸念が相場の重荷となっていることは間違いないが、足もと外国為替市場で円が急速に買われたことも警戒されている。一時1ドル=130円を割り込むなどドル売り・円買いの動きが加速した一方、円は対ユーロでも買い戻しが顕著となり、直近2週間ではユーロ円はむしろドル円相場を凌ぐスピードで円高基調に振れている。
これまで日本固有の材料が相場の方向性を決めるというケースは少なかったが今は違う。日銀が大規模金融緩和策を転換するとの思惑が、買いを手控えさせる理由として厳然と横たわっている。昨年12月19~20日に行われた日銀金融政策決定会合で、唐突に長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%から0.5%に広げたことがマーケットの驚きを誘い、政策変更の第一歩とみなされた。黒田日銀総裁は政策変更の要素は全くないと完全否定したが、今年春に任期終了が予定されるなか次期総裁へのバトンタッチに向けた下準備という見方がまことしやかに広がったのは事実だ。
また、これには伏線もあった。市場筋からは「次期日銀総裁候補としてこれまで有力視された雨宮副総裁や中曽前副総裁以外の“第三の男”として山口元副総裁が急浮上していたが、これは政治的な背景がある。欧米経済の現状を他山の石として、国内のインフレを是が非でも防ぎたい岸田首相の思惑が働いていた」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。岸田政権はこの件に先立って、昨年ハト派寄りだった日銀の審議委員2人が任期切れで退任した後に、あえてタカ派色の強い2人を起用した経緯がある。「これが山口推しの岸田首相による外堀を埋める作業でもあった」(同)という指摘である。
円高進行は輸入コスト低減につながりインフレ圧力を緩和する効果がある。したがって今の為替市場の動きは岸田政権の思惑通りではあるのだが、問題は株式市場にとってはマイナス材料として働きやすい点である。特にハイテク系グロース株の復活シナリオには水を差すことになる。一方、円高局面でもきょうは医薬品や食品などディフェンシブ銘柄の下げもきつかった。相場の自律神経が失われており、円高を好感するようなムードもない。
唯一輝きを放ったのが三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>を筆頭とする銀行株。地銀や生保株にも物色の矛先が向いた。しかし、これから参戦するには勇気のいるところだ。このほか物色対象としては、外部環境に左右されにくい材料株の一角に活路を求めるよりないが、当欄で推していた銘柄では原発関連の日本ギア工業<6356>やスマートパチンコ・パチスロ関連のゲームカード・ジョイコホールディングス<6249>などが強さを発揮した。また、ジェイテックコーポレーション<3446>は次世代技術を駆使した半導体研磨装置の受注獲得が今後も見込めそうで、仕切り直しの買いが観測される。新しいところではeスポーツ関連のブロードメディア<4347>で、4ケタ割れの水準は魅力的に映る。
あすのスケジュールでは、12月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、午後には12月の消費動向調査、12月の新車販売台数、12月の財政資金対民間収支などが発表される。また、3カ月物国庫短期証券や10年物国債の入札なども予定されている。海外では12月の財新中国非製造業PMI、12月のADP全米雇用リポート、11月の米貿易収支などが注目される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年01月04日 17時56分