【特集】金相場は高値もみ合い、各国中銀の利上げ長期化を警戒 <コモディティ特集>
MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行も利上げペース減速を決定したが、インフレ抑制のため、利上げを継続するとの見通しを示した。各国中銀のタカ派姿勢から景気後退に対する懸念も高まっており、株安でリスク回避のドル高に振れると、金の上値を抑える要因になるとみられる。当面はクリスマス休暇や年末年始を控えており、手じまい売り主導の調整局面が警戒される。
一方、CMEのフェドウォッチによると、米短期金利先物市場では政策金利を来年3月に4.75~5.00%まで引き上げたのち、9月まで維持し、年末にかけて利下げすることを織り込んでいる。デイリー米サンフランシスコ地区連銀総裁は、来年の利下げを想定している米FRB当局者はいないとの見方を示しているが、市場では景気減速で利下げを余儀なくされるとみられているもよう。今後発表される経済指標でインフレと景気見通しを確認したい。
ただ、日銀の政策変更をきっかけとした円主導のドル安が下支えになった。円主導の動きが一時的なものになるかどうかも当面の焦点である。
●JPX金は円高が上値を抑える要因
JPX金先限は5月以降、7405~8160円のレンジ相場が続いている。現物相場が堅調に推移したが、円相場が1ドル=130円台半ばと4ヵ月半ぶりの円高水準に振れたことで上値を抑えられた。米FRBの利上げ長期化に対する警戒感が残るが、政策金利が4.75~5.25%で利上げ打ち止めとの見方が強く、円が買い戻されやすい。
また、日本政府が日銀との共同声明を改定する方針と伝えられた。2%の物価上昇目標の柔軟化を目指すという。官房長官はこの報道を否定したが、来年4月に就任する次期日銀総裁が金融緩和政策を修正するようなら円高が進みやすくなるとみられる。日銀金融政策決定会合ではイールドカーブ・コントロールを修正し、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.5%に拡大したことをきっかけに円が急伸した。黒田日銀総裁は「利上げではない」と述べたが、市場では金融政策の正常化の始まりと受け止められた。
●中国の金準備高が約3年ぶりに増加
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、12月19日に912.14トン(10月末920.57トン)に減少した。ただ米FRBの利上げペース減速見通しでドル高が一服するなか、12月5日に903.46トンまで減少したのち、投資資金が戻っており、引き続き買われるようなら下支え要因になるとみられる。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは12月13日時点で12万5649枚(前週11万5125枚)となった。9月27日の5万2081枚から買い戻し主導で買い越し幅を拡大しており、弱気見通しは後退している。
金の独自材料では、中国人民銀行が11月に金32トンを購入したことが明らかになった。同中銀の金準備高は約3年ぶりに増加し、1980トンとなった。米FRBの利上げペース減速の見方が強まり、ドル高が一服する時期と重なった。ワールド・ゴールド・カウンシルの「ゴールド・ディマンド・トレンズ2022Q3」では中央銀行の購入が過去最高の399トンとなったことが指摘されており、各国中銀の金買いが続けば下支えになるとみられる。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース