【経済】【IR】株式会社高速 赫裕規社長に聞く
"食品軽包装"で国内トップシェアを誇る専門商社、株式会社高速<7504>。
現在の同卸売の市場規模は約1兆6000~2兆円と推定されるが、業界唯一の上場企業である同社でも、市場占有率は約5%で今後の開拓余地は十分にある。事業の鍵を握るのは、同社が強みとする商品調達力、物流力、商品開発力、そして営業提案力(人材)だ。M&Aを加速させ、グループ目標売上高1000億円も目前に迫る同社だが、具体的な事業戦略や今後のビジョンについて、赫裕規社長に聞いた。
企業紹介
株式会社高速<7504> https://www.kohsoku.com/
1966年の創業以来、 食品軽包装資材の専門商社として着実な成長を継続している。1600社以上の仕入れ先と14万点以上の取り扱い点数を誇り、流通のあらゆるシーンで最適なパッケージソリューションを提案する。顧客の多様なニーズに対応するため、グループ内に開発・生産機能を整備し、「無ければ作る」のスローガンのもと、包装資材だけでなく各種販促ツールを制作し、包装に関わる機器を販売するなど、幅広く事業を展開している。
株式会社高速<7504> https://www.kohsoku.com/
1966年の創業以来、 食品軽包装資材の専門商社として着実な成長を継続している。1600社以上の仕入れ先と14万点以上の取り扱い点数を誇り、流通のあらゆるシーンで最適なパッケージソリューションを提案する。顧客の多様なニーズに対応するため、グループ内に開発・生産機能を整備し、「無ければ作る」のスローガンのもと、包装資材だけでなく各種販促ツールを制作し、包装に関わる機器を販売するなど、幅広く事業を展開している。
プロフィール
株式会社高速
代表取締役 社長執行役員
赫 裕規(てらし ゆうき)
1971年、 宮城県生まれ。積水化成品工業勤務の後、2000年、高速に入社。2008年6月、取締役連結事業本部長に就任。その後、富士パッケージ現・高速シーパック)代表取締役社長、そして同社の専務取締役連結事業本部長などを経て、2013年6月、代表取締役副社長に就任。2014年4月、代表取締役社長に就任。2021年6月より代表取締役社長執行役員。
株式会社高速
代表取締役 社長執行役員
赫 裕規(てらし ゆうき)
1971年、 宮城県生まれ。積水化成品工業勤務の後、2000年、高速に入社。2008年6月、取締役連結事業本部長に就任。その後、富士パッケージ現・高速シーパック)代表取締役社長、そして同社の専務取締役連結事業本部長などを経て、2013年6月、代表取締役副社長に就任。2014年4月、代表取締役社長に就任。2021年6月より代表取締役社長執行役員。
決算状況について・・・巣ごもり需要が牽引し増収増益
Q: | 2022年3月期は「増収増益」でした。これは、主要顧客の新型コロナ感染症の「巣ごもり消費」対策に伴い、内食需要が牽引されたことが主な要因とのことですが、この業績について評価と分析をお願いします。 |
A: | まずは経営環境の状況についてですが、2022年3月期の国内経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、停滞する状況が続きました。こうした中、私どもの主要顧客においては、新型コロナウイルス感染症対策の「巣ごもり消費」に伴う内食需要の増加により、堅調に推移した業種がある一方で、まだ多くの業種で新型コロナウイルス感染症拡大のマイナスの影響が残っております。 一方で、市場環境は、現在もテイクアウトおよびデリバリー業態の市場が高い伸長率を記録し、主力マーケットは全体で見ると堅調に推移しています。トップ企業のスケールメリットや人材力を活かしながら戦略的な営業活動を行うことで、今後もさらなる成長余地があります。 こうした中で私どもでは、「包装を通して、すべてのステークホルダーに『高速ファン』を増やし、社会にとって有用な『グッドカンパニー』を目指す」という長期経営ビジョンを掲げています。具体的には、「食の流通を支える」、「食の安全安心に貢献する」さらに「買い物の楽しさや食品のおいしさを演出する」という社会的役割を果たしながら、お客様への商品の安定供給、企画の提案や情報提供を継続してきた結果として、業界におけるトップ企業のポジションを維持できているものと考えています。 |
2022年3月期 業績
※2021年3月期以降の売上高は、「収益認識に関する会計基準」等を適用した後の金額
2022年3月期 貸借対照表(B/S)
2023年3月期の見通し・・・限定的だがコロナ関連グッズの需要も
Q: | では、2023年3月期通期の見通しはどのような状況でしょうか?特に食品容器以外で、伸長する可能性が見込める分野についてお聞かせください。 |
A: | 私どもは、1966年の創業以来、 食品軽包装資材の専門商社として着実な成長を継続しています。1600社以上の仕入れ先と14万点以上の取り扱い点数を誇り、流通のあらゆるシーンで最適なパッケージソリューションを提案しています。また、お客さまの多様なニーズに対応するため、グループ内に開発・生産機能を整備し、「無ければ作る」のスローガンのもと、包装資材だけでなく各種販促ツールの制作、包装に関わる機器を販売するなど、幅広く事業展開しています。私どもの会計上の売上セグメントは「包装資材など製造販売事業」の単一で、売上高構成比率における商品区分別では、トレーや弁当容器、フードパックなど主力の食品容器は38.1%と前期から大きな変化はありません。2023年3月期の見通しをお話しするにあたり、前提条件として言えることは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は一巡したものと捉えています。このところ「お土産パッケージ」が回復しており、2023年3月期の業績に寄与するものと思います。今の経営環境では、原料価格や燃料費高騰のみならず、各業態を超えた競争の激化や人件費などの増加、個人消費の低迷などを受け、厳しい状況が続くことが見込まれますが、売上高950億円(前期比3.5%増)、営業利益38億円(同2.8%増)、経常利益40億円(同2.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益27億円(同1.4%増)を見込んでいます。 新型コロナウイルス感染症拡大の当社グループへの影響については、感染の収束に伴い、影響は軽微なものに留まるものと想定している一方で、原料価格や燃料費高騰によるコスト増加が懸念され、連結業績予想ではその影響を見込んでいます。 |
包装資材業界における優位性・・・マーケット対応能力
Q: | "食品軽包装"で国内トップシェアを誇る貴社ですが、どのような戦略を推進することでNo.1のポジションを確立されたのでしょうか? |
A: | この業界はやや特殊で、 約2千社の事業者が林立し、そのほとんどが中小事業者です。食品軽包装資材卸売の市場規模は、1兆6000~2兆円と推定されますが、業界唯一の上場企業である当社でも 市場占有率は5%程度にすぎず、今後の開拓余地は十分にあります。 業界一の購買量が実現する「商品調達力」、包装に関する豊富な経験と知見による「営業提案力」、全国に広がるネットワークが実現する「物流力」、グループ企業との連携による「商品開発力」が当社の強みと考えています。 |
Q: | 同じ包装資材を取り扱うエフピコ<7947>など、メーカーとのシェア争奪競争が市場成長の妨げになることはないでしょうか? |
A: | もちろんメーカーは包材業界の中でも数多く存在します。当社は「専門商社」の位置付けであるため、マーケット内においては、メーカーは自社製品を製造・販売するのに対し、商社は他社で製造された製品を含め、幅広い商品の中から顧客にベストな商品提案ができるという強みがあります。当然のこと、エフピコ<7947>などのメーカーからも商品を仕入れさせていただいており、一緒に提案を行うことで業界を盛り上げています。 私どもの主要顧客のひとつである食品スーパーなどには、1店舗につき平均で500~600アイテムを納品させていただいています。千差万別のアイテムでお取引させていただくためには、顧客のニーズだけでなく私どもから提案する営業スタイルが重要となります。「メーカー」機能ではなく、「商社」機能を中心としている当社は、より多くの商品を提案できるところがメーカーとの大きな違いになっています。例えば、国内シェアを拡大できた要因である「提案営業」については、1970年代にスーパーの持ち帰り袋(レジ袋)が、紙製からプラスチック製へと需要が移行しつつあった時期に、安価で軽量なプラスチック製を推奨し、お客様に受け入れられ地域を超えた新規開拓が加速した経緯があります。 |
Q: | 成長戦略を考える上で、商圏の拡大は重要な経営課題です。そのための戦略としての新規営業所の開設やM&Aについて、具体的にお話しください。 |
A: | 私が社長に就任する以前の2013年まで、当社は営業所の開設と並行してM&Aを積極的に推進していました。これは、同業他社の事業承継増加のタイミングに合致したことに伴い、M&Aの対象案件が増加したことも背景にあります。同業他社の廃業や統合などの結果、商品包装資材卸売の企業数は、現在約2000社まで減少しています。私が社長就任した2014年以降は、M&Aの実施案件は1件、営業所の新規開設も1ヵ所に留めています。理由は、当時の人材不足にありました。やはりビジネスは「人材の確保・育成」が鍵であり、当時は、営業人員を含めた人手不足が顕著となり従業員の負担が増加していることを看過できませんでした。営業所の新設には、新規に所長などの人員が新たに必要となり、M&Aを実施した場合にも、当社から派遣する人員が必要となります。 おかげさまでこの8年間、当社グループの労働環境の改善・整備とともに「人材」の確保・育成を重視した経営に努めたことで、一層の企業成長に向けた商圏拡大に取り組む準備が整いつつあります。 私どもでは、全国に75の営業拠点(2022年4月現在)を有しています。当社は宮城県で創業したこともあり、営業拠点は東日本を中心としていますが、現在は近畿(4拠点)、中国(2拠点)、九州(3拠点)にも有しています。同業他社でこの規模の拠点数を持つ企業は他にありません。また、M&Aについても、案件があれば積極的に進めていきたいと思っています。 |
中長期の経営戦略について・・・鍵は「人材」の確保と育成
Q: | 貴社では中期経営計画第2フェーズにおいて、2025年度までにグループ売上高1000億円(経常利益40億円)を目指すことを掲げています。この中期経営計画に関して、現状の進捗を含めてお聞かせください。 |
A: | 2021年4月よりスタートした「中期経営計画第2フェーズ」では、 既存ビジネスのさらなる深耕により、売上高1000億円、 経常利益40億円を目標としています。また、プラスαの取り組みとして、せっかくお客さまの不満やニーズを聞ける立場にいるのだから、「市場に無い物は作る」という形でイノベーションを起こす「新製品の開発」と「全国展開へのスピードアップ」を掲げています。高速グループは食品軽包装資材卸売業界のトップ企業ですが、関西以西に拠点の空白エリアが多く存在するなどいまだ成長途上にあり、良好な市場環境を追い風に業容の拡大と収益性の向上に取り組むとともに、 引き続き成長力の源泉である「人材」の確保・育成と活用に力を入れていく方針です。 株主還元については、増配を継続し2026年3月期には22期連続増配を目標としています。さらに、2023年3月期からはカタログギフトやQUOカードを贈呈する新たな株主優待制度を実施予定です。 Plan: 中期経営計画第2フェーズ(2022年3月期~2026年3月期) 高速グループが目指す姿: 「包装」を通して、すべてのステークホルダーに「高速ファン」を増やし、社会にとって有用な「グッドカンパニー」を目指す。 KPI: 売上高:864億円(2021年3月期)→918億円(2022年3月期)→1,000億円+α(2026年3月期目標) 経常利益:35.3億円(2021年3月期)→38.9億円(2022年3月期)→40億円+α(2026年3月期目標) 株主還元:「17期連続増配達成」(2021年3月期)→「増配を継続」&「22期連続増配」(2026年3月期) 目標達成に向けての"3"Actions: 1)既存ビジネスの確実な成長 2)新製品開発、新ビジネスへの挑戦 3)全国展開へのスピードアップ |
SDGs&ESGについて・・・サステナブル経営を推進中
Q: | SDGsの認識が浸透するとともに、ESG項目への対応は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。現在、環境対応として具体的なCO2削減量の目標値を開示されていますが、具体的なアクションについてお話しください。 |
A: | 私ども高速グループでは、SDGsを重視したESG対応戦略により、サステナブル経営の実践と進化に努めています。環境対応(Environment)面においては、LED照明の積極導入や生産活動における再生可能エネルギーの活用など多彩な取り組みを推進しています。また現在、特に環境配慮型製品の開発と提案に取り組み、2022年3月に発売したバイオマス原料を40%配合した「先割れスプーン」は、5ヵ月で月間100万本以上売れる大ヒット商品となっています。今後も廃プラスチック問題の解決や温室効果ガス削減に寄与する新商品を市場に投入し、持続可能な社会の構築に貢献したいと考えています。またCo2削減による気候変動対応策のKPIを、2020年の約1万8700トンから2025年には約2万6800トンへと削減目標を掲げています。社会(Social)関連では、私どものビジネスの鍵は「人材」に他なりません。これを経営の最優先課題のひとつとして、従業員の「多様性」と「人材の確保・育成」を重視した経営を実践しています。 コーポレート・ガバナンス(Governance)における企業統治面においては、株主をはじめとする全てのステークホルダーの皆様に対しての責務を自覚し、透明かつ誠実な経営に留意するとともに、取締役会を中心に「内部統制」「リスク管理」「コンプライアンス」「開示統制」が十分に機能した自律的統治システムを堅持しています。 |
高速の将来像について
Q: | 企業はトップの思い(ポリシー)とかじ取り(経営手腕)いかんで、その成長スピードや企業実態が大きく変化するものです。赫社長は、3年後、5年後、あるいは10年後の高速を、どのような企業にしていきたいとお考えでしょうか? ステークホルダーに対して一言コメントをお願いいたします。 |
A: | これについては、私自身の「希望」と「矜持(きょうじ)」をお話ししたいと思います。高速グループの将来像は、中期経営計画でお示ししている内容を確実に実現することです。何度も繰り返しとなって恐縮ですが、私は高速グループを「業界No.1企業として、より高みを目指せる企業グループ」に成長させたいと考えています。そのためには、「すべてのステークホルダーに高速ファンを増やす」ことです。ここで言うステークホルダーとは、マーケット、得意先、取引先(メーカーなど)、株主、地域社会、従業員とその家族など、対象は広範囲にわたりますが、「高速ファン」になっていただくために、各ステークホルダーに全力で臨みたいと考えています。これが高速グループのTOPである私の役割であり宿命と捉え、明るい将来に向けて邁進していく所存です。 最後に、株主還元として、2022年3月期は18期連続「増配」を実現させていますが、「中期経営計画(第2フェーズ)」最終年度である2026年3月期には、22期連続の「増配」を実現できるよう、高速グループ一丸となって企業成長を目指してまいります。 |
(取材:2022年10月17日)
株探ニュース