【市況】明日の株式相場に向けて=半導体周辺セクターに眠る中小型妙味株
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
日経平均が上値を追うためのプラスアルファが足りないとしたが、足もと株式市場にポジティブに作用する話としては中国政府がゼロコロナ政策における強硬姿勢を若干緩めたこと。また、きょう行われる予定となった米中首脳会談が両国の溝を少しでも埋める契機となるのではないかということ、この2つくらいだ。しかし、市場では「ゼロコロナ緩和とはいっても実際は隔離期間を2日間短縮したというだけで、冷静にみてそれほど喜べるような話ではない」(中堅証券ストラテジスト)という見方もある。また、米中首脳会談について、市場関係者は「初めての対面形式での首脳会談とはいっても、G20絡みで“ついで感”が強く、あまり米中が歩み寄るような雰囲気もない。根本的な対立関係に何も変化は生じないだろう」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘があった。
一方警戒材料としては、為替市場での急激な円高を見ないふりはできない。直近2営業日で7円の急騰は1998年10月以来約24年ぶりという。当時は円キャリートレードが活発化するなか、ヘッジファンド大手のLTCM破綻を受けた強烈なアンワインドが背景にあった。今回の円高は、仮想通貨の暴落と直接的因果関係はないとしてもタイミング的には同じ時間軸で進行しており、リスクオフの潮流を示唆するような嫌な感じは受ける。
もっともきょうの日経平均の下げは、ソフトバンクグループ<9984>の急落による影響が如実に反映されたもので、1銘柄で全体を180円強も押し下げた。10月以降はレーザーテック<6920>とともに全体リスクオン相場の象徴であっただけに、これも潮目の変化を暗示する要素を多分に含む。ソフトバンクGは中間期決算でのビジョン・ファンドの損失拡大を嫌気したというよりは、新たな自社株買い発表への思惑がスルーされたことへの失望感で売られた意味合いが強い。ただ、いずれにせよ直近1カ月半で築き上げてきた上昇トレンドからは想像しにくい崩れ足で、断崖絶壁からバンジージャンプしたようなザラ場1000円近い暴落は投資家泣かせともいえる。同社が出資する仮想通貨交換業大手のFTX破綻も、決算発表の時期とタイミングが合致してしまったのは運に恵まれなかった。
全体を改めて俯瞰してみると、きょうで大方終了する国内企業の決算発表は総じて通期見通しの上方修正が多く、これはファンダメンタルズ面で日本株優位を主張する拠りどころともなっていた。だが、「実際に円安メリットの部分をごっそり持って行かれると、砂上の楼閣である部分も露出してくる」(前出のストラテジスト)とする声も聞かれる。円安基調にピリオドが打たれた場合は、24年3月期の企業業績見通しに保守的な予想が相次ぐことも考えられる。逆業績相場の色が強まるのは来年になってからと思われるが、株式投資をするうえでは、時間が必ずしも味方になってはくれないケースも少なくない。
物色対象として、当面は半導体 関連の周辺に見直し人気が継続しそうだ。レーザーテックが視線を独り占めにしているわけではない。半導体関連の裾野は広く、これから出遅れていた中小型株にリターンリバーサルの流れは着実に波及してくる。最近取り上げた銘柄ではシキノハイテック<6614>が長い滑走路から遂に離陸した。このほか、半導体関連の穴株ではミナトホールディングス<6862>やC&Gシステムズ<6633>などが挙げられる。
あすのスケジュールでは、7~9月のGDP速報値、5年物国債の入札など。また、IPOが2社予定されており、東証グロース市場にベースフード<2936>、POPER<5134>が新規上場する。海外では10月の中国工業生産高、10月の中国小売売上高、10月の中国固定資産投資・不動産開発投資、9月のユーロ圏貿易収支、11月のZEW独景気予測指数、10月の米卸売物価指数(PPI)、11月のNY連銀製造業景況指数、G20首脳会議(~16日)など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年11月14日 18時41分