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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (29)買った銘柄はスイングトレードでサクッと利益を確定しよう

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆難しい売りのタイミング、テクニカル分析との相性も

 保有している銘柄の含み益が順調に膨らんでいくと、大半の人が「儲かったら旅行にでも行こうかな」と夢を描き、しまいには「自分って天才かも!」と自惚れたりします。ただ、せっかくの含み益も、売り時を逃してしまえば、あっという間に買い値に戻って消えてしまう、もしくは買い値を下回って含み損さえ発生してしまうことがあります。

 株を売る時に第一に考えなければならないことは、上昇している株価がそろそろ下降トレンドに転換する確率が高いのか、もしくはすでに下降トレンドに転換してしまったのか、ということです。

 では、どのような場合に株価が下落する確率が高いのかと言えば、株価が割高、いわゆる買われすぎの状況になった時だと言えるでしょう。そこで、保有株が割高、いわゆる買われすぎであるのかを、どのような流れで確認していけばよいのかを見ていきましょう。

 ここではファーストリテイリング <9983> [東証P]を例に解説していきます。株探の各ページの最上部にある「探検隊」の検索窓に4桁の証券コード「9983」を入力し、「検索」ボタンをクリックしてください。すると、ファーストリテイリングの個別銘柄のページが表示されますので、銘柄欄の下にある「チャート」のタブをクリックして、多機能チャートを表示させます。ここでは一番下のエリアにあるスライドバーを操作して、2022年1月からの日足チャートを表示させました。

 まずはファーストリテイリングの株価が、「割高=買われすぎ」の状態にあるのかを確認していきます。株探の多機能チャートは、デフォルトでは上段のエリアに「ローソク足」と「移動平均線」が、その下のエリアに「出来高」が表示されます。ここで、チャートの上に並ぶ設定項目から「指標エリア2」の中にある「RSI」のラジオボタンにチェックをいれて、出来高に代えてRSIのチャートを表示させましょう。

 RSIのチャートが表示されたら、最初に買いシグナルが出たタイミングを確認しておきます。RSIで「売られすぎ」とされる一般的な水準は30%以下です。チャート内で30%を割り込んだポイントに丸印をつけました。売られすぎの水準としてサインが点灯したのは、6回ほどありました(図1参照)。

 では、念には念を入れて「MACD」も確認してみましょう。MACDでは買いシグナルであるゴールデンクロスが発生しているポイントに丸印をつけました(図2参照)。

図1 ファーストリテイリング <9983>  RCIの買いシグナル
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図2 ファーストリテイリング <9983>  MACDの買いシグナル
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 次に、売りシグナルが出たタイミングを確認します。RSIで「買われすぎ」とされる一般的な水準は70%以上です。RSIが70%を超えたポイントに丸印をつけました(図3)。また、MACDで売りシグナルとなるデッドクロスが発生しているポイントにも丸印をつけていきます(図4)。

図3 ファーストリテイリング <9983>  RCIの売りシグナル
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図3 ファーストリテイリング <9983>  MACDの売りシグナル
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 この数回の買いシグナルが表れたポイントのどこかで買ったと仮定して、いつ売ればよいのかは、やはりテクニカルの売りシグナルに基づいて考えていきます。スイングトレードの場合、大きくホームランを狙うのではなく、コツコツ回転させて利益を積み上げていく取引手法になります。ただし、買い時と売り時がわかりやすいように、RSIでは30%と70%の数字を使いましたが、チャートを見るとわかるようにRSIが反転する前に必ずしも30%を下回る地点まで低下するわけではありませんし、70%を上回る地点まで上昇するわけでもありません。30%割れの買い場を待っていたら30%を割り込まずに反発して買えない場合もあるでしょう。あるいは、70%を上回るのを待っていたら70%に届かぬままに反落してしまい、売り場を逃してしまうこともあるでしょう。このようにあまり数値にこだわりすぎると、タイミングよく売り買いが行えなくなってしまいます。

 そこで、売るタイミングを考える時には、上昇していくRSIが向かう、ちょうど真ん中あたりの50%前後のライン、MACDであればゴールデンクロスした後のゼロラインに注目します。例えば、RSIが50%を超えてくると買われすぎの状態へとどんどん向かっていきますので、50%あたりになってきたら売り時を虎視眈々と狙いましょう。

 ファーストリテイリングのチャートを見ると、3月16日安値で底を打っています。それ以前を下降トレンド、上げ相場が鮮明となる5月10日以降を上昇トレンドに分けて考えると(3月16日~5月10日は「保ち合い」とします)、下降トレンドにある時は買いシグナルが出てもリバウンド上昇はそれほど長くは続かない傾向が見て取れます。反対に、上昇トレンドの場合には、売りサインが出ても過熱感を伴いながら時間をかけて上昇を続けている場合もあります。このように下降トレンドと上昇トレンドでは、その過程で生じる上昇の性質に差がありますので、トレンドの認識が売買の判断ではきわめて重要になります。

 なお、株価が上昇トレンドにあるのか、それとも下降トレンドにあるのかは、移動平均線の動きで確認して判断していけばよいでしょう。移動平均線の使い方については、本シリーズの「 (15)売買戦略は株価のトレンドに合わせて立てる流れ」を参考にしてください。

▼(15)売買戦略は株価のトレンドに合わせて立てる流れ
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202112170527

 もちろん、人間ですから欲に負けたりしてなかなか判断できずに、売り時を逃してしまう場合もあるでしょう。そうした事態を避けるためにも、特に下降トレンドが継続しているような場合には「10%上昇したら売ろう」という風に予め売買ルールを決めておいてもよいでしょう。また、底打ちを待ってから買うのと同じように、天井打ちを確認してから売りに動いてもよいのですが、下げるときのスピードは速いので、できるだけ躊躇せずに売るように心がけた方がよいかもしれません。

 今回はファーストリテイリングのチャートで買い時、売り時を見ましたが、いずれのテクニカル指標でも、買いシグナルが出現した後に綺麗に売りサインが出ていることがわかります。この結果からは、ファーストリテイリングはテクニカル分析との相性がよい銘柄だと考えてもよさそうです。このようにテクニカル分析と相性のよい銘柄と悪い銘柄がありますので、自分の保有株がどちらであるのかも調べてみてもよいかもしれません。

 どんな時でも、コツコツ着実に利益を積み上げられるのがスイングトレードのメリットですが、それは売り時を逃さずに、利益を確定できた場合です。株式投資で絶対儲かるということはありませんので、欲に負けることなく、売り・買いの判断をしっかりと行って、儲けられる時に着実に利益を確定していきましょう。

 


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