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【特集】藤代宏一氏【乱高下続く東京市場、下期相場の先行きを読む】(2) <相場観特集>

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

―インフレ懸念払拭できず再びの米株安で、強弱観対立―

 週明け17日の東京株式市場は日経平均株価が反落した。前週末は先物を絡めた買い戻しが加速し850円強の上昇をみせたのだが、その後の米株市場の反落で流れをつかむことができないでいる。今月から下期相場入りとなり、これから国内企業の決算発表も徐々に本格化してくるが、株式市場は年末に向けどういう軌道を描こうとしているのか。第一線で活躍する市場関係者2人に見通しを聞いた。

●「米国は逆業績相場を警戒、日経平均は相対的な底堅さ発揮も」

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

 米国のインフレ上昇には家賃の寄与が大きいが、先行指標であるケース・シラー住宅価格指数は下落基調にある。また、賃金の上昇でインフレが広がるリスクはあるものの、企業業績に悪化懸念が台頭するなか、この先、賃金にも下落圧力はかかってくるだろう。こうしたなか、半年ほど先をみればインフレは鈍化していくとみている。

 とはいえ実際にインフレ鈍化が数字となって表れるにはタイムラグがある。このため当面、米国の利上げは続くだろう。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%利上げの可能性は高いと思う。市場の関心が集まる12月は利上げ幅が0.5%にとどまる可能性もあるとみているが、0.75%の利上げとなってもおかしくはない。FFレートは4.75%、あるいは5.0%に達する可能性があるとみている。時期は来年2~3月頃だろう。

 ただ、米国の株価をみるうえでは金利上昇の先行きが見えても、次は業績悪化に伴う1株当たり利益(EPS)低下が懸念される。米株式市場は、金利上昇に伴う「逆金融相場」から業績悪化による「逆業績相場」に移ることになる。こうしたなか、米国のS&P500種株価指数は3500(14日終値3583)を明確に下回る水準に下落することを想定している。

 一方、日経平均株価は米国に比べて相対的な底堅さが発揮できそうだ。足もとの円安が寄与するほか、経済はコロナ禍から戻り切っておらず、回復の余地がある。また、インフレに伴う混乱も欧米に比べ小さく、これから自動車の挽回生産も期待できるだろう。内需は国内個人消費が支え、外需は円安が寄与する格好で日本株は意外に持ちこたえるのではないか。日経平均株価は、欧米市場に比べて相対的に底堅く、2万7000円から2万8000円を中心とする一進一退を想定している。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。

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