【市況】【植木靖男の相場展望】 ─割安な国際優良株に活路
株式評論家 植木靖男
「割安な国際優良株に活路」
●いまが最も厳しい局面か
日経平均株価は再び調整色を強めている。これまでの足取りを振り返ると、6月安値から戻り相場に入ったが、8月19日に米国で半導体関連株が急落したことをきっかけに調整入りし、上昇基調の中での調整としては予想外の日柄を要した。戻り売りの強さを意識せざるを得なかったが、9月に入ってようやく下げ止まり、急反発に転じた。しかし、それもわずか4日で終了。8月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことから、NYダウが今年最大の下げ幅となったことで、再び下げに転じた。
足もとでは、9月20日からのFOMC(米連邦公開市場委員会)で決まる利上げ幅が最大の材料として注目を集めている。だが、ここまで調整をみせると、FOMCでの利上げで素直に悪材料出尽くしとなるかどうか。
ただ、チャートでみればこれまでの予測にまったく変わりはない。つまり、6月安値を一番底として、いまは短期的に二番底を模索しているという見方だ。
さて、目下、株価を左右する根本要因は、「いつ高インフレが収束するのか」にかかっている。これまで市場はこの点に関して甘く見ていたことは疑う余地はない。いうまでもなく、インフレの最大の要因は、おカネの刷りすぎである。FRB(米連邦準備制度理事会)はQT(量的金融引き締め)を9月から本格化しているが、進捗は遅れているという。9月のFOMCではQTを積極化するとされている。この効果は大きい。年が明ければ高インフレは収束に向かうはずだ。サプライチェーンの混乱も正常化しつつあるともいう。
これを見越して、米国株価はほどなくして二番底入れから反転上昇に移行するのではないか。いまが最も厳しい局面にあるといえよう。
米国株が年末に向け再上昇に転じれば、日本株は米国株以上に反発力を強めることになる。そこで注目されるのは、わが国の景気の先行きである。目下、円安が進み、政府・日銀はさらなる円安進行を抑制しようとしている。これは愚策である。実際、円安を止める有効な策はない。それに円安こそ日本経済が復活する好機といえるからだ。
9月13日付の日本経済新聞は大阪学院大学の本多教授の説を紹介している。要は、円安は時間差を伴って景気へのプラス効果が拡大するという、いわゆる「Jカーブ効果」である。円安は貿易収支を悪化させるが、やがて反転し景気を改善させるとしている。期待したい。
●二番天井を取りに行く戻り相場にチャンス
こうしたことを踏まえて、では年内の物色対象はどうみればよいのだろうか。繰り返すが、年内に本格的な資金回収があれば景気悪化という点で市場に逆風となるものの、いまはインフレを抑えることが先決。つまり、年明けからインフレが収束段階に入るとすれば、株価は先行性を発揮して年内に上昇に転じよう。これを前提に物色対象を考えたい。
今年に入って米国株価はグロース株中心に第1波の下げをみせたが、第1波の下げが一巡すれば、第2波の下げが到来するまでの猶予期間がある。それが年内10?11月とみられる。この間は大天井に対する二番天井を取りに行く戻り相場となるはず。となれば、物色対象はグロース株が中心となろう。ただし、大天井に向かって大きく上昇したIT系の銘柄はしこり玉が多い。同じグロース株でも出遅れ銘柄が中心になる。つまり、昔風にいう国際優良株に活路があるのかもしれない。
そこで今回は、出遅れ優良株から京セラ <6971> [東証P]に注目したい。今期連結営業利益は前期比16.8%増と2ケタ増益予想であり、しかも20円増配の意向。にもかかわらずPBRは0.94倍と1倍割れの水準だ。
次に三井物産 <8031> [東証P]。PER6.5倍、PBR0.9倍、利回りは3.6%で、今期は15円増配の見通し。
出遅れといえば、脱印刷を加速する凸版印刷 <7911> [東証P]もじっくり投資には適している。PER10.8倍、PBR0.55倍と割安な優良株だ。
2022年9月16日 記
株探ニュース