【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─なぜ、「CPIショック」が起きなかったのか?
経済評論家 杉村富生
「なぜ、『CPIショック』が起きなかったのか?」
●マーケットは利上げを冷静に受け止め!
欧米各国がインフレの“嵐”に直撃されている。6月のCPI(消費者物価指数)上昇率はスペインが前年同月比10.2%、ベルギーが9.7%、オランダが8.6%だった。13日発表のアメリカの数値は9.1%、1981年11月以来の水準だ。FRB(米連邦準備制度理事会)は7月26~27日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、大幅な利上げに踏み切るだろう。
非常事態である。しかし、マーケットは意外に冷静だ。VIX(恐怖)指数は低下気味だし、10年物国債利回りは2.9%前後で落ち着いている。ハイテク指標のSOX(半導体株)指数はジリ高だ。確かに、NYダウは続落しているが、下げ幅は小幅にとどまっている。これはどうしたことか。
6月10日に、5月のCPI上昇率(8.6%)が発表された局面とは明らかに違う。このときはNYダウが10日に880ドル安、週明けの13日に876ドル安、14日に151ドル安、16日に741ドル安と急落した。16日には2万9927ドルと、3万ドル割れだ。「CPIショック」と称されている。
今回はそれがなかった。なぜか。インフレの数値に慣れ? それはあろう。しかし、それだけではない。各国中央銀行のインフレ制圧に向けての決意を投資家が好意的に受け止めていること、6月はガソリン価格が前月比11.2%上昇しCPIを押し上げたが、原油価格はピークアウトしており、7月のCPIは8.8%前後に低下しそうなこと、などがある。
利上げについては1.00%(100ベーシスポイント)が不可避といわれていたが、超タカ派のウォーラー理事、セントルイス連銀のブラード総裁が「0.75%を支持する」とコメント、マーケットには安心感が広がっている。前回はメジャーSQに向け、売り叩きもあった。こうした状況を背景に、今回は「CPIショック」が起きなかったのだろう。
●やはり、各論(銘柄)勝負が有効だぞッ!
一方、物色面はどうか。個別物色機運は極めておう盛だ。13日の10銘柄に続き、14日も10銘柄のストップ高があった。サカタのタネ <1377> [東証P]、Shinwa Wise Holdings <2437> [東証S]、ジーダット <3841> [東証S]、ワンダープラネット <4199> [東証G]、アイドマ・ホールディングス <7373> [東証G]など。
抜群に強い。短期・順張りはひたすら値動きを追う。これがセオリーである。最近はストップ高が継続する。ストップ高に飛びついて、翌日に利食える確率が高まっている。この戦術は有効だ。これは地合いの好転を意味している。そーせいグループ <4565> [東証G]、サンバイオ <4592> [東証G]は出直り態勢にある。
好業績のブロードメディア <4347> [東証S]、アルトナー <2163> [東証P]、テクノホライゾン <6629> [東証S]、マクセル <6810> [東証P]は動兆しきりだ。夏相場は個別銘柄が活躍する展開となろう。その場合、テーマ解析が重要だ。ここにきて投資顧問グループ、資産家集団が活発に動いている。
なお、全般相場については下値不安は乏しいものの、上値を追うエネルギーは弱い、と判断する。基本的には夏枯れだ。ただ、買い気は強い。したがって、ここは各論(銘柄)勝負だろう。日本は政治の安定が魅力だ。イギリスはジョンソン首相が辞任、イタリアのドラギ政権は崩壊寸前(ドラギ首相は辞意を表明も大統領が拒否)である。
2022年7月15日 記
株探ニュース