【市況】米国株式市場見通し:相場の底入れ感まだない、FOMCに注目
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■円安進行や米ハイテク株高受けて週間大幅上昇
今週の日経平均は週間で979.89円高(+3.66%)と大幅に3週続伸。終値では13週、26週移動平均線を一気に上回った。
日経平均は前の週末にかけてナスダック総合指数が大幅に3日続伸した流れを引き継いで、週初から587.75円高の27369.43円と大幅に上昇し、27000円台を回復。しかし、その後は27500円を手前に一進一退の展開が続いた。6月1日に再び1ドル=130円台に乗せた為替の円安進行や中国上海市のロックダウン(都市封鎖)解除などを背景とした中国経済の底入れ感が全体の支援要因になった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)高官らのタカ派発言や欧州連合(EU)の対ロ追加制裁によるインフレ懸念の再燃、米長期金利の上昇などが重石となった。それでも、2日の米株市場でナスダック総合指数が大幅反発したことを手掛かりに、週末は米5月雇用統計を前にした買い戻しが進展、日経平均は347.69円高の27761.57円と大幅高となり、27500円を回復した。
■懸念要素を無視した相場上昇に危うさ伴う
来週の東京株式市場は神経質な展開か。週末10日は6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出日に当たり、またその晩には米5月消費者物価指数(CPI)が発表される。メジャーSQと米CPIが近づくにつれ、徐々に警戒感が高まりそうだ。
今週の日経平均は週間で1000円近くも大幅に上昇した。しかし、今週はFRBのウォラー理事が「インフレ率が当局の目標である2%に近づくまでは、0.5ptの利上げは常に選択肢にある」と発言したほか、ブレイナード副議長は9月の利上げ停止について「(現時点では)その可能性は非常に低い」と発言。5月下旬にかけて一部で高まっていたFRBのハト派転換への期待をけん制するかのような発言が相次いでいる。
5月前後をピークに低下基調にあった米10年物の名目利回りと期待インフレ率も足元で再び上昇基調に転じている。特に、米10年債利回りは5月27日に2.74%だったのが、連休明けから大きく上昇し、2.9%台半ばまで上昇してきている。
また、6月2日には石油輸出国機構(OPEC)プラスが原油増産幅の拡大で合意したものの、原油先物価格は続伸している。今週末にはWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、7月物)は1バレル=120ドル台に乗せてきている。EUによりロシア産石油の一部禁輸などの追加制裁が科されるなか、この程度の増産幅では焼け石に水と思われているようだ。
さらに、ドイツとヨーロッパ圏で発表された5月CPIは予想を大幅に上回り、前年比の伸びとして共に過去最高を記録。これを受け、エネルギー生産・輸入状況に違いはあるとはいえ、米国でも本当に3月でインフレはピークアウトしたのかという疑念を抱く投資家が増えている。少なくとも伸び率がピークアウトしても、最高値圏での伸びが維持されれば、FRBの金融引き締めペースの鈍化は期待できない。
このように、今週は株式市場にとってネガティブな材料が多くあったにもかかわらず、相場は大きく上昇した。ただ実際は、短期筋によるプット(売る権利)の売却など、デリバティブ絡みのポジション解消の動きが、薄商いのなかで株価指数の上昇率を実体以上に強く見せているに過ぎない可能性が高い(特に米国市場)。
こうした実体を無視した需給要因主導での上昇は危うさを伴っているといえる。日経平均で言えば、28000円を明確に超える材料があるとは言えず、売り方の買い戻しによる上昇もそろそろ一服する頃合いといえる。そのため、来週末の米5月CPIが近づくタイミングで、相場は再び神経質な展開が想定され、翌週には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えていることを踏まえれば、調整が入る可能性にも留意したい。日経平均のチャートは改善してきているが、足元の動きをもってして過度に楽観的になるのは危ういと思われ、まだまだ警戒感を持って臨むべき局面と考える。
■ハイテク・グロース株は当面手控え
今週末に発表された米5月雇用統計では、平均賃金の伸びが市場予想を小幅に下回った一方、雇用者数の伸びは39万人増と市場予想(31万人増)を大幅に上回った。FRBの金融引き締めが警戒される形で、週末の米株市場ではハイテク・グロース(成長)株を中心に大きく反落した。インフレを沈静化させたいFRBは逆資産効果を狙っているのか、相場を過度に上昇させたくないと考えているようで、相場が急落した際には高官からハト派発言が出る一方、大きく反発して上昇が続くと、再びタカ派発言が出るような展開になっている。当面はこうした緩和と緊張の繰り返しが続くと見られ、安心してハイテク・グロース株を買える局面の到来には時間がかかりそうだ。インフレを巡る議論が長期化する限り、インフレ耐性のある市況関連株などに相対的な買い安心感があるといえよう。
■景気ウォッチャー、中国貿易収支、米CPIなど
来週は6日に米アップルの開発者会議(WWDC)(~6月10日)、7日に4月家計調査、4月毎月勤労統計調査、4月景気動向指数、8日に1-3月期GDP確報値、5月景気ウォッチャー調査、米10年国債入札、9日に中国5月貿易収支、ECB定例理事会、10日にメジャーSQ、5月企業物価指数(PPI)、中国5月PPI、中国5月CPI、米5月CPIなどが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ