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【市況】明日の株式相場に向けて=再びの「200日移動平均線物語」

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 週明け6日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比154円高の2万7915円と続伸。朝方は大方の予想通り安く始まったが、寄り付き直後から急速な巻き戻しが入り、前場後半にプラス圏に浮上、後場は一段高に買われる展開となった。

 前週末3日に日経平均は350円弱の上昇で着地し、週間ベースでは1000円近い上昇をみせた。できすぎ感のある戻り足を披露したわけだが、前週末は欧州時間に入ると各国市場は尻すぼみで決して強い展開ではなかった。欧州では、西側諸国、つまりドイツやフランスなど主要国の株式市場が総じて軟調に推移した。更に米国株市場では朝方からリスクオフの地合いとなり、結局NYダウナスダック総合株価指数ともに大幅安、特にハイテク株に売りがかさんだことでナスダック市場の崩れが顕著だった。

 この流れに準じれば、週明けの東京市場は前週末の反動安となって当然と思われたが、そうはならないところが相場の奥深さであり難しさだ。理由はどうあれ、今の日本株は特筆に値する強さを発揮していることは間違いない。気がつけば、長期波動の分水嶺である200日移動平均線(2万7940円)にほぼ到達した。2万8000円ラインの突破は200日線越えを同時に達成することで、テクニカル的にも大きな意味がある。強い相場の背景は何か。まず、日銀によって鉄壁の超金融緩和策が担保されていることが欧米との決定的な違いだ。その副産物が為替の円安進行で、これもポジティブ要因。ドル・円相場は足もとで1ドル=131円台目前まで円安が進む場面があり、また、対ユーロでも円安が加速して1ユーロ=140円台に入っている。対ユーロでは7年ぶりの円安水準である。

 エネルギー価格や原料価格が高騰するなか、輸入コストを一段と増幅させるという点で「悪い円安」とさんざん言われ続けてきたが、株式市場の本音は「やはり円安は心地よい」ということになる。現時点で国内はまだインフレが深刻でないという点が一つ、そしてもう一つは、アベノミクス相場時代の「円安・株高」のシンクロナイズがマーケットの脳裏に深く刻まれている、ということが挙げられる。そして、外国人観光客の入国規制緩和や、GoToトラベル再開観測などに伴うリオープンの追い風も強力だ。くしくも中国・上海市のロックダウン解除と同じ時期に重なったことが、投資家心理を強気に傾斜させている。

 ただし、これで中長期トレンドが下値切り上げ波動に切り替わったと判断するのは、時期尚早であると思われる。3月中旬から下旬にかけての強烈な戻り相場では、200日移動平均線を若干上回ったところが目先天井となった。今回も作ったように、200日移動平均線にほぼツラ合わせとなる水準まで戻ってきたが、明確に上抜いたわけではない。スケジュール的には今週は鬼門となる。週後半の木曜日にECB理事会とラガルド総裁の記者会見が予定される。そして、週末10日金曜日は5月の米CPIが発表される。この2つのビッグイベントが相場の撹乱要因となる公算は小さくない。

 国内では今週末がメジャーSQ算出日にあたる。2万8000円という水準が強く意識されているのはこのSQと無縁ではない。「うがった見方をすれば日本株優位説は、このSQに絡む2万8000円攻防で、買い方に回っているヘッジファンドが設置した舞台装置である可能性もある」(中堅証券マーケットアナリスト)とする声もある。来週から相場の景色が変わる可能性も念頭に置いておく必要がある。

 個別では、目先GoToトラベル関連で、以前にも取り上げた京都ホテル<9723>が強い動き。また、穴株としては駅探<3646>などもマークしておく価値がありそうだ。また、もう一つの「インベスト・イン・キシダ」で急浮上している防衛関連では三菱重工業<7011>が本命であることに変わりはないが、5月下旬に当欄で紹介したカーリットホールディングス<4275>の上げ足が鮮烈。押し目があれば買いで対処するのも一法だ。

 あすのスケジュールでは、4月の毎月勤労統計、4月の家計調査、5月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示される。午後には4月の景気動向指数(速報値)が発表される。また、前場取引時間中に30年物国債の入札がある。海外では豪中銀の政策金利発表が行われるほか、4月の米貿易収支、4月の米消費者信用残高が発表される。米国では3年物国債の入札も予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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