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【市況】S&P500 月例レポート ― 4月の雨は5月に不安の花を咲かせる? (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2022年4月
個人的見解:マスクなしのウォール街

 4月の雨は5月の花を咲かせると言われていますが、今年の雨(ロシア・ウクライナ紛争、インフレ、金利、労働力不足の継続、サプライチェーン問題、政治)がこれまでに生み出したのは不安であり、市場の月中の変動率(高値と安値の差)は11.38%となりました(これに対して新型コロナのパンデミック前の月平均は6.86%)。4月のS&P 500指数は3月末の4530.41から4131.93に8.80%下落し、最終営業日の1日の下落率は3.63%と、2020年6月11日(5.89%下落)以降で最大となりました。また、2022年1月3日の今年の取引初日に記録した4796.56の最高値からは13.86%の下落で、2022年3月8日に4170.70を付けた直近の安値を更新し、月末時点で年初来で13.31%下落して調整局面となりました。そうした中、飛行機でのマスク着用義務が解除されましたが、解除されなかったニューヨーク市の地下鉄の方が楽しさに満ち溢れていたのは、ニューヨークで大麻販売店がオープンしたからかもしれませんが、米ドルほど“ハイ”にはなれないでしょう。

 マスクをめぐる議論(そして法廷闘争)は続いていますが、ウォール街は一定だった予想に関してマスクを完全に外したようで、その変化は明白です。(1)0.25%の利上げ観測が浮上し、その後0.50%が確実視され、0.75%という声も出ています(今のところ)。(2)インフレに対する見方は「一過性」から「非合理的」に変わり、ピークの兆候があるとの見方も出ています。(3)経済についてはハードランディング突入による2023年のリセッション入りが取りざたされ、その後、雇用、マネー、資産によりリセッションは回避(または限定)される可能性があるとの見方も浮上しています。

 多くの見方があると、通常、私たちはどれか1つは正しいだろうと考えます(そしてそれをツイートします。あるいは、少なくともそれに関連したポジションを構築します)。しかし、不透明感が極めて高いことを考えると、中長期的な動きに注目する方が容易かもしれません ―― 流動性とキャッシュフローがある限り(自宅の方がはるかに価値は高いかもしれませんが、家を売ってどこへ行くというのでしょう。非課税ポートフォリオも現金勘定ではありません)。

 市場のファンダメンタルズに目を転じると、2022年第1四半期の利益と売上高は予想を上回り、前年同期比でそれぞれ8.5%増、11.9%増となりました(ただし、過去最高を記録した2021年第4四半期からはそれぞれ9.3%減、3.8%減)。しかし、景気が減速し始める中、ガイダンスに関心が集まっています。特に、コスト上昇分の価格転嫁に消費者が疲弊してきた兆候が出ているため、売上高に関してより大きく懸念されます(2022年第1四半期の営業利益率は12.64%と高水準を維持したものの、過去平均は8.21%で、今後の低下が予想されます)。配当は緩やかな増加基調を維持しており、減配はほとんどなく、増配は小幅となっています。

 金利は、米国10年債利回りが引き続き3%をうかがう一方、30年住宅ローンの平均金利の動きは急速で、2021年末の3.06%から5.37%に200bp超上昇しました。このコストは住宅価格の上昇(2月に前年同月比20.2%上昇)による住宅ローン借入増加前のものです。金利上昇の影響で住宅販売は減速していますが、供給が少ないため需要は力強さを維持しています。今後は、住宅価格と金利の上昇が需要減退を通じて安定するとみられます。

 5月に関しては、0.50%の利上げが予想される5月4日の米連邦公開市場委員会(FOMC、米東部時間午後2時発表)が、初旬の変動要因になる可能性があります。市場は既に0.50%の利上げ3回を織り込んでいるため、午後2時30分からの米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見により、6月14日~15日(そして7月26日~27日)のFOMCに対する注目も高まる(そして取引が増える)かもしれません。小売業の利益と売上高から消費者の行動と選択の状況がやや明らかになり(ただし、明確にはなりません)、インフレ統計はインフレがどの程度持続するかの指標になるでしょう(市場ではFRBの利下げ開始時期を予想する動きが出始めています)。

 過去の実績を見ると、4月は64.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.34%、下落した月の平均下落率は3.82%、全体の平均騰落率は1.48%の上昇となっています。2022年4月のS&P500指数は、8.80%の下落となりました。

 5月は58.5%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.13%、下落した月の平均下落率は4.68%、全体の平均騰落率は0.11%の下落となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2022年5月3日~4日、6月14日~15日、7月26日~27日、9月20日~21日、11月1日~2日、12月13日~14日となっています。

 S&P500指数 は4月に8.80%下落して4131.93で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.72%)。3月は4530.41で終え、3.58%の上昇(同プラス3.71%)、2月は4373.94で終え、3.14%の下落(同マイナス2.99%)でした。過去3ヵ月では8.50%下落(同マイナス8.17%)、年初来では13.31%の下落(同マイナス12.92%)、過去1年間では1.18%下落(同プラス0.21%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは22.02%上昇(同プラス26.29%)して月を終えました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は4.91%下落の3万2977.21ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.82%)。3月は3万4678.35ドルで終え、2.32%の上昇(同プラス2.49%)、2月は3万3892.60ドルで終え、3.53%の下落でした(同マイナス3.29%)。過去3ヵ月では6.13%下落(同マイナス5.67%)、年初来では9.25%の下落(同マイナス8.73%)、過去1年間では2.65%下落(同マイナス0.82%)しました。

●主なポイント

 ○企業利益は増加したもののガイダンスが低調だったことや、インフレに注目が集まり、4月はリターンが再びマイナスに転じ(2月は3.14%下落、1月は5.26%下落)、市場は調整局面に逆戻りしました。

  ⇒市場は3月の上昇(3.58%上昇)から再び反転し、2020年3月(12.51%下落)以来の大幅な下落(8.80%下落)となり、4月としては1970年(9.05%下落)以来の大きさとなりました。

  ⇒下落の根底にあったのは、消費者の支出手控え(物価上昇により)への懸念、そしてFRBが(複数回の)0.50%の利上げや場合によっては0.75%の利上げを通じて、以前の予想(0.25%刻みで複数回)より急ピッチで金利を引き上げるとの懸念です。

  ⇒S&P500指数の4月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の平均値は1.81%で、3月の1.70%から上昇しました。2月は1.87%でした(1月は2.06%、2021年は0.97%)。

  ⇒S&P500指数は4月に8.80%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.72%)。3月は3.58%上昇(同プラス3.71%)、2月は3.14%下落(同マイナス2.99%)、1月は5.26%下落(同マイナス5.17%)でした。調整局面入り後のリターンは、過去3ヵ月間では8.50%下落(同マイナス8.17%)、年初来では13.31%下落(同マイナス12.92%)でした。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは22.02%上昇し(同プラス26.29%)、その期間に終値ベースで90回、最高値を更新しました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は22.64%上昇(同プラス25.32%)しました(2021年1月20日のバイデン大統領就任後に69回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では84.68%上昇しています(同プラス90.74%)。

  ⇒同指数は、2022年1月3日に付けた終値での最高値である4796.56から13.86%下落して月を終えました。

 ○2022年第1四半期の決算は再び予想を上回っています。決算発表を終えた264銘柄中209銘柄(79.2%)で営業利益が予想を上回り、45銘柄が予想を下回り、10銘柄は予想通りでした。売上高は261銘柄中187銘柄(71.6%)で予想を上回りました。2022年第1四半期は過去最高となった2021年第4四半期から9.3%減、2021年第1四半期からは8.5%増と予想されています。

※「4月の雨は5月に不安の花を咲かせる? (2)」へ続く

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