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【特集】田部井美彦氏【再び急落、試練の5月相場とその後の展望は】(2) <相場観特集>

田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)

―米長期金利上昇でリスク回避、先行き不透明感一段と―

 週明け9日の東京株式市場は日経平均株価が一時700円近い急落で2万6000円台前半まで売り込まれる波乱展開となった。4月の米雇用統計発表を受け改めてインフレ懸念や米長期金利の上昇を警戒するムードが強まっている。「セル・イン・メイ」の格言通り5月はキャッシュポジションを潤沢にしておくべきか、それとも下げに買い向かうべきか。第一線で活躍する市場関係者2人に、ここからの相場展望と物色の方向性について意見を聞いた。

●「米インフレ懸念強くCPIなどの結果注視」

田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)

 株式市場は不安定な相場が続く。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経ていったんNYダウは上昇したが、その後、再び売り直された。6日発表の米4月雇用統計では平均時給は前年同月比で5%超上昇しており、インフレが警戒される内容となった。

 こうしたなか、市場では、11日に発表が予定されている米4月消費者物価指数(CPI)と12日の同卸売物価指数(PPI)の内容に注目している。このCPIあるいはPPIがインフレ懸念のピークアウトを示すような内容となれば、相場も戻りを試す展開が期待できる。もっとも、CPIとPPIが依然として強い結果となれば、米国は0.75%の利上げも意識し調整局面が続きそうだ。

 ただ、本格化している決算発表による日本企業の業績内容は決して悪くはない。このため、インフレ懸念で過度に売られた銘柄は、市場のセンチメントが回復すれば値を戻す展開は期待できると思う。

 今後1ヵ月程度の日経平均株価の下値は2万5000円台半ば程度をみている。3月安値の2万4000円台までの下落はないだろう。一方、相場環境が改善すれば上値は2万8000円台乗せで、戻り高値を更新する展開もあり得るとみている。

 個別銘柄では、任天堂 <7974> [東証P]やソニーグループ <6758> [東証P]、ポンプ大手で半導体製造装置に絡む荏原 <6361> [東証P]などに注目している。業績面での円安メリットが期待できるハイテク株などは、足もとの株価下落で下値を拾うエントリータイミングを迎えつつあるとみている。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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