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【特集】デリバティブを奏でる男たち【25】 ミレニアムのイジー・イングランダー(前編)


◆上位ランキングを維持するミレニアム

今回は、LCHインベストメンツによるヘッジファンド収益ランキングにおいて、2018年に6位、2019年に8位、2020年に2位、そして2021年4位と、このところ常に上位のランキングを維持しているミレニアム・マネジメントのイジー・イングランダーを取り上げます。

 2022年3月現在534億ドルを運用するミレニアムの投資戦略は、第8回で取り上げたケン・グリフィン率いるシタデルに似たマルチ・ストラテジーであるとみられています。ちなみに、シタデルも同ランキングにおいて2018年に4位、2019年に5位、2020年に5位、そして2021年2位と、このところ常に上位のランキングを維持しています。

▼シタデルのケン・グリフィン(前編)―デリバティブを奏でる男たち【8】
https://fu.minkabu.jp/column/1074

▼シタデルのケン・グリフィン(後編)―デリバティブを奏でる男たち【8】
https://fu.minkabu.jp/column/1084

 最近の相場環境においてはマルチ・ストラテジーが非常に稼ぎやすいと言える結果となっていますが、ではマルチ・ストラテジーとは、どのような戦略なのでしょうか。ご承知の通り、ヘッジファンドの投資戦略には様々なスタイルがあります。ヘッジファンドのデータベースを提供するヘッジファンド・リサーチ(HFR)では、それらを以下の通りに分類しているようです。

◆ヘッジファンドの戦略分類
【タイトル】
出所:HFRのホームページ

 HFRによるヘッジファンドの戦略分類は、大きく以下の7つのメイン・カテゴリーに分かれています。

① エクイティ・ヘッジ
主に株式、および株式デリバティブによる売り買い両方のポジションを持つ戦略

② イベント・ドリブン
資本構造調整など、企業の経営に重大な影響を与えるイベントの発生を予測してポジションを維持する戦略

③ マクロ
世界中の国の経済指標などを用いてマクロの視点で分析することで、株式、債券、通貨、商品市場など幅広い市場で取引を行う戦略

④ レラティブ・バリュー(相対価値)
複数の有価証券間の関係における評価の不一致がいずれ修正されていくことを前提とするポジションを組む戦略

⑤ ファンド・オブ・ファンズ
複数のファンドに分散投資する戦略

⑥ リスクパリティ(均衡)
株式、クレジット、債券、商品といった金融商品のウェートを調整して全体のボラティリティ(予測変動率)を一定に保つ戦略

⑦ ブロックチェーン(分散台帳)
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に投資する戦略

 
 これらの各カテゴリーはさらに細かいサブ・カテゴリーに分かれ、都合44のサブ・カテゴリーがあります。その中には幾つかのマルチ・ストラテジーが存在しており、HFRでは各サブ・カテゴリーに戦略を分散させながら、ひとつの戦略の投資ウェートが全体の50%を超えていないものをマルチ・ストラテジーと定義づけしています。
 
 ある意味でマルチ・ストラテジーとは、儲かる戦略ならば何でもやるといったスタイルであり、様々なファンドに投資するファンド・オブ・ファンズと似た戦略とも言えます。ただ、マルチ・ストラテジーはファンド・オブ・ファンズと異なり、別会社のファンドに投資しないので二重に手数料がかからない一方、複数の戦略を一つのファンドで管理することから、オペレーションや法務などのリスクは、ファンド・オブ・ファンズに比べて高いと言えます。


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◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):
証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。



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