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【特集】IT業界の脱炭素化急げ、「グリーンデータセンター」関連株が本格浮上 <株探トップ特集>

DXの加速とともにデータを処理するデータセンターの消費電力も増大の一途をたどっている。世界的に脱炭素が求められるなか、データセンターの省エネ化に貢献する銘柄にも注目だ。

―データ通信量増大でデータセンターの消費電力も上昇、省エネ化は喫緊の課題へ―

 「カーボンニュートラル」に向けた取り組みが世界的に加速するなか、株式市場では太陽光発電風力発電バイオマス発電など再生可能エネルギーが投資テーマとして注目されている。ただ、カーボンニュートラルへの対応は、もはやこうした再生可能エネ関連企業や省エネ関連だけではなく、あらゆる業種でいかにして持続可能な成長と両立させるかというフェーズに入っており、さまざまな産業・企業で取り組みが迫られている。

 IT産業も同じで、特に近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により大型化の進む データセンターには省エネ化が求められている。こうした施設は「グリーンデータセンター」と呼ばれ、今後成長が期待できそうだ。

●グリーン戦略で省エネ化の目標を設定

 グリーンデータセンターは、環境への影響を最小限に抑えながら最適なエネルギー効率を実現したデータセンターのこと。近年のDXの進展により、世界のデータ通信量は2030年までに年平均3割増という驚異的なペースで拡大するとされており、それに伴いデータセンターは大型化の動きが顕著となっている。データセンターの消費電力は増大の一途をたどっており、 脱炭素社会へ向けた課題の一つになっていることから、グリーンデータセンター化が求められている。

 経済産業省が21年6月に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(グリーン成長戦略)では、成長が期待される14分野の産業を挙げ、それぞれについて カーボンニュートラル実現のための高い目標を設定したが、なかに「半導体・情報通信産業」も含まれている。特にデータセンターに関しては、グリーンなデータセンターの国内立地の推進などが盛り込まれており、30年までに全ての新設データセンターの30%以上の省エネ化、国内データセンターの使用電力の一部の脱炭素化を目指すとしている。

●ベンチマーク制度の対象に追加で省エネ化加速へ

 これを受けて、経産省は今年4月からデータセンターに省エネ目標を設定した。特定の業種・分野について、事業者の省エネ状況を業種内で比較できる指標(ベンチマーク指標)を設定する「ベンチマーク制度」にデータセンターを対象業種として追加したもので、業種の追加は19年以来となる。ベンチマーク制度は、大企業の場合は省エネ設備の導入支援の補助金を受ける要件となっており、関連する企業にとっての指標の一つとなる。

 前述のグリーン成長戦略でも「データセンターの省エネ化に向けて、サーバーを構成する要素デバイス(CPU、アクセラレーター、メモリーなど)の高性能化・省エネ化技術に、光配線技術といった光エレクトロニクス技術を融合(光電融合)したシステムの開発・実証や、データセンターを制御するソフトウェアによる性能・消費電力の最適化技術を開発、省エネ半導体の製造拡大のための設備投資支援を行う」とあり、国の後押しも期待できることから、今後こうした技術開発を含めて、グリーンデータセンターに関する動きは活発化しそうだ。

●データセンターの省エネに取り組む銘柄

 関連銘柄は、まずはデータセンターの省エネ化に取り組む企業だ。

 NEC <6701> [東証P]は、サーバーラックの背面に装着することで、電力レスでの排熱を可能とするラック用冷却ユニット「相変化冷却ユニット」を用いることで、データセンターの省電力化を実現した。また20年8月には、NTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)と共同で、データセンター内の通信機械設備の空調におけるノンフロンの新冷媒を用いた冷却システムを開発し、空調消費電力の低減を図っている。

 富士通 <6702> [東証P]は、AI(人工知能)空調制御による冷却エネルギーの効率化に取り組んでいる。また、サーバーを丸ごと液体に浸して冷やす「液浸冷却システム」を開発。空冷機器に必要な冷却ファンやエアコンも不要になるため、空冷システムに比べて冷却設備を含めたサーバーシステム全体の消費電力を約4割削減できるとして注目されている。

 データセンターのなかには、外気を取り入れて消費電力を抑制する取り組みも進むが、さくらインターネット <3778> [東証P]は、寒冷地の北海道石狩市にデータセンターを設置している。冷たい外気を取り込むことで、都市型データセンターに比べて消費電力を約4割抑えている。また、15年8月には近隣に太陽光発電所を建設し、再生可能エネの活用にも取り組んでいる。

●省エネ化技術を開発する銘柄にも注目

 グリーン成長戦略にあった省エネ化技術の開発にも注目したい。日本電信電話 <9432> [東証P]は30年までに「光電融合技術」の商用化を目指している。昨年4月には富士通と業務提携し、低消費電力型・高性能コンピューティングの実現に向けた共同研究開発などを進めると発表した。

 また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」の「次世代グリーンデータセンター技術開発」プロジェクトの実施予定先で、「要素デバイス省力化、光配線技術、ディスアグリゲーション技術の開発」をテーマとする富士通、NEC、京セラ <6971> [東証P]や、「光に適合したチップ等の高性能化・省エネ化:不揮発メモリ開発」をテーマとする日本ゼオン <4205> [東証P]にも注目したい。

 更に、シリコンLSI技術に光機能を融合させ、大容量伝送・低消費電力化を実現することでデータセンターの消費電力低減に貢献するシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤)向けに量子ドットレーザーを提供するQDレーザ <6613> [東証G]や、シリコンフォトニクスを使用した光モジュールを開発したI-PEX <6640> [東証P]なども関連銘柄として注目されそうだ。

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