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【市況】明日の株式相場に向けて=旧マザーズ・バイオ関連株、一斉蜂起の裏側

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(5日)の東京株式市場は、 日経平均株価が前営業日比51円高の2万7787円と続伸。一方、 TOPIXはマイナス圏で着地した。何とも面妖な相場が続いている。週明けから市場再編に伴い「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に分類し直されたわけだが、投資マネーがどこを目指していいのか迷っている印象を受ける。最上位のプライム市場については、上場基準を厳しく設定して銘柄を篩(ふるい)にかけ玉石混交の玉を残すことにより、海外投資家の資金を呼び込もうというのが狙いだったはず。もちろん、その方向性自体に誤りはなく、今回の市場改革は60年ぶりの英断ではあったが、少なくとも出足の段階では思惑通りには進んでいないムードが強い。

 主力銘柄への投資も目先は様子見を決め込む投資家が多いようで、日経平均株価とTOPIXの足並みも揃わず、ちぐはぐな値動きが目立つ。これまでは、ハイテク株優位の地合いであれば日経平均がやや下駄を履いて上昇する形となり、またメガバンクなど時価総額の大きい金融株が買われるようなバリュー株優位の場合は、TOPIXの方に浮揚力が働きやすいというのが暗黙のセオリーであった。だが、今はグロースやバリューといった区分があまり意識されず、思惑のぶつかり合う場所がないままに全体指数が彷徨している。

 流通時価総額が100億円に満たないモラトリアム銘柄は、今年10月に再評価され、ここでも100億円に満たない場合はTOPIX構成銘柄としてのウエートの逓減が始まる。更に23年10月に最終評価を行い、やはり100億円に届かなければ、25年1月末にかけてウエートをゼロにする、つまりこの時点で完全に除外されることになる。TOPIXの実態は、ゆっくりとカメレオンのように色を変えていく。

 そして、この流れを逆算した際にひとつの思惑が生じる。旧東証1部銘柄で、流通時価総額100億円のボーダーラインに達していない銘柄は、TOPIXという台地から徐々に滑落していく格好となり、いわゆる「パッシブ売り」に晒されるリスクが高い。こう考えると、直近まで東証1部に上場し、前提条件なく自動的にTOPIXに採用されていた小型株セクターは地雷原という見方もできる。他方、ここにきてマザーズ指数の底入れ反騰色が目立っているが、パッシブ売りの呪縛がないことで消去法的な優位性が意識されている。中小型株であれば、東証1部を避けた方が投資戦略的には理に適っている。例えば直近バイオ関連 が軒並み動意しているが、目には見えにくい新たな潮流で浮揚力が働いている。加えて、旧マザーズに在籍していたバイオ関連や一部ゲーム関連株などは、貸株調達などによる空売りが溜まっている銘柄が多いこともポイントだ。

 市場関係者によれば「マザーズ銘柄の貸株はネット証券からヘッジファンドなどに渡るケースが多いが、その際の貸株料が馬鹿にならない。買い残の多い銘柄などをターゲットに空売り目的で当該株式を調達するわけだが、思惑を外した場合はなるべく早く買い戻す必要性に迫られる」(国内証券ストラテジスト)という。貸借銘柄ではなくても貸株調達の反動で“踏み上げ相場”に似た状態が生じるわけだが、新たに3市場が立ち上がったこのタイミングで生じた潮の流れが、買い戻しを誘発した可能性は高い。

 バイオ関連は創薬ベンチャー多く、当然ながら開発コストが先行するため、足もとの業績は悪い(赤字となっている)銘柄が多い。金融機関からの融資も確保しにくいことで、どうしても新株発行を絡めた資金調達に頼りがちで潜在株式が多くなるが、これも空売りのターゲットとなりやすい理由だ。しかし、何らかの理由で買い戻しに火が付いた場合、純粋に値上がりを期待した実需買いなども追い打ちとなり、想定外の上値を形成することがある。株はファンダメンタルズだけでは語れない。「需給はあらゆる材料に優先する」という黄金格言あるが、バイオ関連セクターはその象徴になっている。

 あすのスケジュールでは、3月の輸入車販売台数及び21年度の輸入車販売台数が発表される。海外では3月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)、2月のユーロ圏小売売上高、ポーランド中銀の政策金利発表が行われるほか、米国では3月15~16日開催分のFOMC議事要旨が開示される。なお、タイ市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年04月05日 17時13分

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